Sさん(University of Cambridge, Economics / Fettes college出身)
大学に入学し、新しい環境に飛び込んだ一年でしたが、不思議と、全く未知の場所からの出発だったとは感じませんでした。それは、大学生活のさまざまな場面で、高校時代、初めての海外生活の中で試行錯誤しながら身につけた英語力や、一から人間関係を築いた経験に支えられていたからだと思います。
ずっと憧れていた大学での勉強は全てが面白く、同じく経済好きの友達とレクチャー帰りに色々議論できた時間はとりわけ刺激になりました。中でも同世代の学生たちが、Supervisionで当たり前のように思考の過程を即座に言葉にしていく姿には、何度も圧倒されました。その裏には、毎日経済と市場の情報を追い、自分の言葉で語れるまで理解を深めていく、という地道な努力を続けていることを知り、自分ももっと学びを深めたいと感じました。
1年目の2学期で、特に苦戦したのが政治・社会経済学でした。Supervisionでは私に質問が集中し、Supervisorが納得するまで、同じ問いに何度も答え直さなければならないこともありました。Supervisorは金融業界に長く携わってきた方で、実務経験を通じて、経済理論が現実世界でどこまで通用し、どこに限界があるかについて、豊富な知見を持っていました。かなり厳しい指導でしたが、知識と経験の引き出しから自由自在に事例を取り出し、自らの議論に厚みを持たせていく姿には、いつも圧倒され、私もいつかこのように自分の考えをより説得的に語れる人になりたいとも思いました。また、指摘されているのは、あくまで、その時点での学術的な理解や回答なのだと、一歩引いて受け止めるようにしていました。
経済史の勉強は一番楽しむことができたと思います。課題文献を読み込むにはかなりの時間がかかりましたが、エッセイの問いに対して、それぞれの文献が自分の議論の中でどのような役割を果たすのかを考える過程には面白さがありました。付箋に一つひとつの事象を書き出し、それらを線で結びながら因果関係を探すという方法を試し、試行錯誤を重ねる中で、徐々に自分の学び方や文章の組み立て方を確立できたことは良かったです。Supervisorから毎回エッセイの構造を褒めていただけることも、次の課題へ取り組む励みになりました。
大学生活が2年目に入る今、将来のキャリアパスについてより具体的に向き合う時期に来たと感じています。英国で過ごした3年間、渡英前には想像もできなかったような環境と機会を与えていただきました。経済学が好きで、以前はその延長線上にある学術研究に漠然と関心を持っていましたが、現在は、研究から得られる知見をどのように社会に実装できるのかにも強く惹かれています。この夏は、地経学とエネルギー経済分野のシンクタンクのプログラムに参加しました。そこで出会った研究者は、学術・公共・民間という異なる領域を行き来しながら、個々の問題をミクロな視点で捉えると同時に、社会全体をマクロに俯瞰する力を持っていました。その姿を見て、私も異なるステークホルダーの立場を理解し、複数の視点をつなぎながら、より良い意思決定に貢献できる人になりたいと考えるようになりました。
これまで自分が大切にしてきた関心や姿勢を、どのようにつなぎ、一つのキャリアとして形にしていくのか。大学生活の残り二年間では、経済学への理解をさらに深めると同時に、自分なりの答えを探していきたいです。そして、目の前の一つひとつの学びに真摯に向き合っていきたいと思います。