お知らせ

Uさん(University of Edinburgh , Architecture / Fettes college出身)

スコットランドにも夏がやってきました。関東やロンドンなどに比べると夏とも呼べない気候なのにもかかわらず、天気の良い日にMeadowsにいけば芝生を覆いつくすほどの人の量に圧倒されます。こういった光景を見ていると暗くて寒い冬を耐え抜いた甲斐があったなと気づきます。

今住んでいるフラットはMeadowsの真横にあり、Arthur’s Seatからも走って5分程度なので天気の良い日には外に出て緑に囲まれながら本を読んでいます。友達と外でBBQをしたり、屋外コートでバスケットボールをしたり。Pentland Hillsへハイキングに行ったり、友達とランニングをしたのちピクニックをしたり。外の空間をいわゆる“Third Space”として扱える街の形態に東京との違いを感じながらエディンバラの建物を見ていると、大学もこの街にしてよかったなと心から感じます。

大学に来て2年たちましたが、この街に住み始めてからはすでに4年が経ちました。Tazakiの中でも高校と大学が同じ街にあるのは僕だけだという何の意味があるかもわからない自慢を心に持ちながら少し大学環境について綴りたいと思います。
Fettesに在籍中でまだ大学選びにパソコンとにらめっこしている時を考えるとすごく昔のように感じます。エディンバラを選択肢の一つに選んだのは、住みやすさや人の好さ、歴史の深さなどのこともありましたが、大学のコースの特徴が一番大きかったと思います。僕の大学の建築学科はとてもバランスの良い学校で、どちらかといえばオールドスクールなアプローチをするコースになっています。芸術カレッジに属していることもありアートとのつながりが濃く、工学的な建築を学んでいる気分はほぼしないです。手書きの絵や手作りの模型の方がCADの図面やデジタル模型よりも評判がいいことはこの特徴を物語っている例の一つだと思います。教授も面白い方がたくさんおり、エディンバラ内で働いている建築士の方々がチューター陣にたくさんいたり、コースの取りまとめの教授はヨーロッパや北南米からきた建築士だったりとスコットランドの内側だけでなく世界全体を感じさせる教員陣の元のびのびと制作活動をしています。(もちろん学期中はのびのびと形容できるほど睡眠も運動も食事も十分に摂れるスケジュールではありませんが)

先日、縁があってロンドンにあるRoyal College of Artの夏の大学院生向けの短期講習にお招きがあり一週間ほど勉強に行きました。当プログラムでは世界中からそしていろいろな分野からの参加者とネットワークすることができました。ミュンヘン工科大でインテリアデザインを修了した人、コペンハーゲンでステージデザインの仕事をしている人、アジア・アフリカを飛び回った挙句ロンドンで文化保存建築士として働いている人、台湾でプロダクトデザインをしている人など色とりどりな人と話している中で気づいたのはいかに自分の大学が変わっているかでした。

僕のコースはどんな感じかと何度も何度も聞かれる中で最終的に簡潔に伝えるために言っていたのは“伝統を気にするアート系のデザインをするコース”でした。ほかの人のデザインまたは建築のコースの話を尋ねるとパソコンばっかり使っていて手を動かすことがほぼなかったと聞きました。そういったデジタルベースの工科大学出身の人が多かったということもありますし、そのアプローチを非難するつもりは全くありませんが、自分がその“アート系”のデザインコースに入れたことが本当によかったなと感じます。就職や有名建築事務所向きなコースではないことは確かですが、建築というそのものへの態度を考えさせてくる‘手作業’の重要性を教育してくれるところがエディンバラのコースの一番の強みです。材料を実際にテストしてどのような感触・見た目の作品ができるかを考えたり、実際に現地まで出向いて環境調査をしたり、いろいろな画材を用いて建築のコンセプトデザインを可視化させた作品を作ったりなど、などただ単に流行に乗ったかっこいいデザインを考えるだけでなく建築とはどうあるべきかや人がどう感じるかを考えさせられるコースの仕組みに僕はあっていたと思います。

もう一つ大学そしてRCAでの経験から感じたのは人生そしてキャリアは人の数だけ存在するということです。有名大学を出て大企業に就職し6桁収入をもらうというルートに洗脳されて生きてきました。この歳になってやっと自分の情熱や興味を追いかけて生きている人やキャリア<趣味で生きている人などと出会うことが多くなりました。
生き急いできた自分を含めた自分の環境を俯瞰すると、これだけ強くやりたいことがあるということは収入よりも名声よりも自分にとってとても価値があることだなと思います。東京の競争社会、イギリスの階級社会に揉まれて生きてきたからこそエディンバラまたはアートカレッジの直感的なキャリアの捉え方に心を救われることがあります。
ここ一年ほどパートタイムとしてですが、オンラインのパブリックスピーキングをサポートする仕事をしています。まだスタートアップな企業なために仕事の発展チームに組み込まれることになり、やりがいを感じているところです。イギリス中の大学や企業からの参加者にスピーキングの講座を開きそのコーディネイターとして働いているのですが、ここでもまた仕事の多様性を目の当たりにしました。CEOの方も今の仕事をするなんて学生の頃は考えてもみなかったとおっしゃっているのですが、そういう言葉を聞くと自分が将来どのような生活をしているのかが楽しみになります。

いまでもいろいろなことに手を伸ばした挙句に自分の睡眠が危ぶまれるという自業自得な得意技をかましていますが、あと2年というリミットのある大学生活をこれからも充実させていきたいと思います。