渡英してから三年が経ちました。ちょうどいい気温の夏を過ごすも、じっとりした日本の夏らしい夏がすこし懐かしく感じる不思議な感覚と日々過ごしています。大学の一年目が終わり、もうすこしで二年目が始まろうとしています。夏が終わり、これからまた長い冬に突入していくと思うとうんざりするところもあるのですが、空気が澄んで霧がかかったエディンバラの冬の朝を思うとそこまで悪くないかなと思う楽観的な自分もいます。
大学の二学期目(僕の大学は二学期制です)はとても忙しいタームでした。コースの内容等は一学期とそこまで変わりはしませんでしたが、建築デザインのモジュールは少し違いました。今学期はいかにデザインを毎週毎週より良いものにできるかという風な進め方でした。しかしながら建築デザインとしてしっかりと建物をデザインしたのはこれが初めてだったのでとても楽しかったです。建物を考えるときに、なぜ建物が必要なのか、なぜその形にしたいのか、なぜその材料をつかうのかなど“なぜ”が無限大に発生します。そこを一つ一つArgumentを立てながらああだこうだとスケッチに起こしてデザインを決めていきます。この作業はとても体力がいるもので、新しく思いついたアイデアがあればそれで製図し、それ以前のものはほぼ無価値となってしまったりなどということが毎週のようにありました。しかしその度に後ろを見てばかりはいられないのでどんどん進めていくしかなく、毎週チューターにプレゼンをして時には厳しい言葉をもらい、という日本での部活さながらの精神+体力ゲームでした。そのためか学部をやめた人も何人かいたり、もはや放棄してこなくなった子がいたりなどいろいろなハプニングがありましたが、スタジオの仲間とはその分とても仲良くなり、お互いにアドバイスしたりなど高めあえることができるようになり嬉しく感じています。建築史のモジュールは現代建築についてだったのですが、先学期に続いて本当に興味深い学びでした。建築というアートを見ていくのもそうなのですが、地政や文化、宗教やテクノロジーなど様々な社会的側面を反映し、逆に影響していくという建物や都市が担う価値に日々圧倒され続けました。そのためOptional Readingも苦もなく進めることができ、この分野において知識と理解を深めることに満悦していました。ここで培った考え方をもとに旅行先などで建物や都市構造がなぜそのような形態なのかと考える癖がつき、日常生活に新たな花が咲いたような気分を味わえています。
生活面で苦労していたことは“すべての両立”一択です。大学ではほぼすべてが個人レベルになるということに準備が追い付かなかったように思います。そしてすべてをこなそうとすると忙しくなり自分を振り返る時間に欠けるような気がします。座って勉強する教科に加え、デザインの教科がありスタジオに入り浸らないと間に合わない状況で、体も健康に保とうとし週に3回ジムと2回ランニング、食事はすべて自炊で栄養バランスを考えたものを作り、そのうえで将来のためにお金を貯めようとバイトをし、ソサエティに参加し、友達の輪も保つためにたまに遊びに行ったりなどをしていると趣味の時間などほぼありませんでした。なんとか勉学は疎かにならず良い成績は取れたものの、さらに忙しくなる二年目からはバランスをもっと考えなければいけないなとひしひしと感じています。僕は要領が悪いうえになんでも手を伸ばしてしまうタイプなので、これからはしっかりと寝れるよう効率を考えていこうと思います。
大学に入り、仕事をしたり、旅行をしたりして、いろいろな人にあったりなどとしているとこれまで以上に人生の多様さを思い知らされます。それによりいい成績を修めていい会社に入らねばなどと心のどこかで考えている自分がだんだん小さくなってきたように感じます。もちろん成績は常に上を目指していますし、将来もいいところへと行きたい意気込みはまだ健全ですが、それ以外にも自分の人生を豊かにすることは何かということを考えるようにしたいなと思わされた一年間でした。これに気づかされた理由には家族から離れ実質一人暮らしをするようになったからだと思います。Fettesのころとは違い、もう先生に世話されることもなければご飯を作ってくれる人もいない状況です。イギリスの大学だと出身地は違えど同じような状況の人がほとんどです。皆が金銭感覚を自分で養い、料理の仕方を学び(中には毎食テイクアウトをしたり、シリアルを夕食に食べる人などもいましたが、、)交友関係を主体的に保ち、将来を考えてなどと生活に必要なスキルを沢山身に着けていきます。そのためか大学という環境は、この国において、“人生は自分の好きな通りに進める”という自覚を芽生えさせる機会なのだなと感じます。僕はこの生活が始まってから家族と親の偉大さを痛いほど感じますが、それと同時に将来のプランを自身で構築するという羽の開き方に快感を感じています。もちろんこのような気付きに至ることができたのもこのような留学の機会を叶えてくださった財団のおかげ以外の何物でもありません。僕の留学生活はここでちょうど中間地点です。これからも怒涛な日々となると思いますが、後悔のない学生生活になるよう頑張ります。