私はCambridge大学のPembroke Collegeで、Natural Sciencesを専攻している。今年度は数学、物理、化学、材料科学の4科目を履修している。
勉強面で一番驚いたのは、講義において数学的な厳密さよりも応用や直観的理解に重きが置かれていたことだった。私は、大学の講義では科学は非常に数学的、そして数学は基礎から厳密に教わるものだと思っていた。しかし、物理や化学の講義では数式よりも言葉や図を使って教えられることが多かった。また、たとえば数学のモジュールはMathematical Methods(数学的手法)と名付けられていた。このことからも、数学がそれ一つの学問というよりも他の科学を研究するための手段として位置付けられていることが読み取れた。その名の通り、数学の講義では時折物理の題材が扱われるなど、他の理系科目との接続が意識されているように感じた。
この厳密さよりも応用という大学の姿勢を象徴する科目が材料科学だと感じている。今学期に扱った内容はいわゆる物性物理学に分類される内容だった。具体的には、液晶やX線回折など、日本の大学の物理学科では2年から3年時に習う内容をかいつまんで教わった。数学的厳密さにこだわらない教え方に戸惑うときもあったが、その分早く最先端に近い内容を勉強できる面白さを感じた。
生活面では、やはりカレッジ内の絆の強さを感じることが多かった。特に、同じ専攻の生徒たちとは行動を共にする場面が多く、自然と仲が深まった。単に講義に一緒に向かうだけでなく、勉強会を開いたり、みんなで花火大会に参加したりと、充実した時間を過ごすことができた。
私は現在、カレッジのボート部と理系ソサエティに所属している。Cambridgeの運動部は全学の部活とカレッジ毎の部活に分かれている。このことにより、競技レベルの人から勉強の息抜きが目的の人まで、幅広い層の人々がスポーツに親しめるようになっている。無論私は後者である。ボート部には交換留学生や大学院生なども所属しており、普段会う機会の少ない人との交流の場にもなっている。理系ソサエティの主な活動は週一回の講演会や他のカレッジの理系ソサエティとの交流である。ソサエティで知り合った上級生から専攻科目についてのアドバイスを受けるなど、カレッジ内の縦のつながりのありがたみを実感している。
最後に、英国での留学という貴重な機会を下さった田崎理事長をはじめとするTazaki財団の方々に感謝を申し上げる。