お知らせ

Uさん(University of Cambridge , Natural Science / Kingswood School出身 出身)

2021年9月から始まった英国での留学生活も、学士課程修了という一つの節目を迎え、ともに日本を発った仲間の何人かは卒業の日を迎えました。私自身は同じ大学で修士課程へ進むため、Tazaki財団の皆様との直接的なご縁はもう1年続きます。それでも、渡英当初には終わりを想像することすらなかった留学生活が少しずつ終わりに近づいていることを思うと、非常に感慨深いものがあります。

私にとってこの1年は、それまで当然のように思い描いてきた「物理学者になる」という将来を、改めて問い直す1年でもありました。学部生活を終えれば修士課程、そして博士課程へと進み、いよいよ本格的に学問の道を歩んでいくことになります。その一方で、入学当初は同じように物理学者を志していた友人たちが就職活動に励み、大学で身につけた知識や経験を社会の中で生かそうと準備する姿も目にするようになりました。
また、学年が上がるにつれて学ぶ内容が急速に難しくなったことに加え、博士課程の学生たちが研究や将来について悩みながら努力する姿を間近に見る中で、自分がこれまで疑うことなく信じてきた進路について、改めて考えるようになりました。大学3年目を終えた時点でも、この迷いが完全に解消されたわけではありません。しかし、日本にいる家族や友人と改めて話をする中で、将来を今の段階で決めつけるのではなく、自分が納得できるところまでアカデミアの道に挑戦してみようと思えるようになりました。最終的にどのような道を選ぶことになったとしても、次の1年は心ゆくまで学問に打ち込み、自分自身がどこまで物理を追究したいのかを確かめる1年にしたいと考えています。

少し内面的な話が長くなりましたが、ここからは具体的に大学3年目の学業について振り返りたいと思います。3年目ともなると英国での大学生活そのものにはすっかり慣れ、日々の大部分を授業と勉強に費やす、ある意味では変化の少ない1年間でした。しかし、学問の内容はこれまで以上に専門的になり、物理学を学んできた実感を強く得られる1年でもありました。
中でも特に印象に残っているのが、一般相対性理論と宇宙物理学です。これまで名前や概念だけは知っていた相対性理論を、数学を用いて一から厳密に記述していく過程には、「物理の勉強もついにここまで来たのか」と感じさせられる大きな達成感がありました。また、その具体的な応用先の一つである宇宙物理学では、実際の天文観測と一般相対性理論をはじめとする理論計算とが相互に補い合いながら、宇宙で起こる現象を明らかにしていきます。ブラックホールや宇宙の歴史など、以前から興味を持っていた題材について、その背後にある物理を自分自身の手で計算しながら理解できたことは、大きな喜びでした。学問を続けることへの迷いを抱えた1年ではありましたが、こうした瞬間には、やはり物理を学ぶことそのものが好きなのだと改めて実感しました。

この留学生活は、渡英前の自分には想像することすらできなかった景色を見せてくれただけでなく、それまで当たり前のように享受していた日本での生活や価値観について、外から見つめ直す機会も与えてくれました。学問面ではもちろんのこと、異なる文化や考え方を持つ人々と生活し、自分自身の将来について何度も考え直した経験は、今後どのような道を進むとしても、私にとって大きな財産になると思います。
こうした貴重な経験を重ねることができたのも、田崎財団の皆様から長年にわたり温かいご支援をいただいてきたからこそです。改めまして、心より御礼申し上げます。残された最後の1年も、Tazaki財団生としていただいた機会への感謝を忘れず、自分のできる限り学問に向き合い、充実した留学生活を送りたいと思います。