お知らせ

Mさん(University College London , Social sciences with data science / Fettes college 出身)

気づけばイギリスに渡って4年。長いと思っていた留学生活も、残りあと1年となりました。この間、思いもよらない出会いや出来事に恵まれ、物事の見方や価値観が大きく変わりました。そしてその度に、自分がどれほど恵まれた機会をいただいているのかを実感しています。
ここでは大学2年生の1年間を振り返り、就職活動、夏の思い出、大学生活の3つに分けて記していきます。

就職活動
ロンドンの大学(イングランド全般・修士併設除く)は3年制のため、日本より1年早く就活が始まります。私の通うUCLでは日本人学生会のキャリア活動が盛んで、入学直後から日本の就活エージェントや企業が訪れ、海外大生向けの情報を提供してくれました。私は1年生11月から2年生終了までキャリア担当を務め、エージェントや企業の方々と打ち合わせやイベント運営を重ね、社会やキャリアを考える機会を多々頂きました。
特に印象深いのは、1年生の夏(2024年8〜9月)にGAFAMの1社でインターンを経験したことです。大学のキャリア活動で知り合った先輩から紹介を受け、挑戦し、Data and AI Specialistとして日本支社で2か月間働きました。専攻のデータサイエンスの学びを応用し、「データやAIをどう社会に活かすか」に取り組む実践の場でした。
例えば教育企業向けに、考える力を育む海外教育の紹介や、AIを活用した学習アプリを提案しました。このアプリは学習データをもとに個人に合ったヒントを提示し、子どもたちが自ら考える力を育めるよう設計しました。当初は1人で立ち上げた企画でしたが、他のインターン生や社員の方々、お客様を巻き込み、取り組むことができました。共に作り上げる過程は非常に楽しく、「提案する」というより「共創する」感覚がありました。
一方で、最初は不安の連続でした。周囲は大学院生や年上の学生ばかりで、私は大学1年。知識も経験も乏しく、残りの出勤日を指折り数えるほどでした。それでも「何もせずに終わりたくない」と思い、毎日多くの社員に1対1で話を伺い、会社の仕組みや自分の役割を探しました。幸いにも協力的な方々に恵まれ、教育や働き方など興味のあるテーマに出会い、最終的には4つのプロジェクトをゼロから企画し、実行までやり切ることができました。留学初期の慣れない環境で居場所を模索し続けた日々があったからこそ、こういった困難にも立ち向かえたのだと思います。
この経験を通じて、人と協力しながら成果を生み出す楽しさと、渡英で身についた周囲を巻き込む力を実感しました。以前は「一番になること」にこだわりがちでしたが、渡英してからは多様性を受け入れ、周囲と比べすぎずに自分らしさを認められるようになりました。また、立場や年齢に関係なく素直に助けを求められるようになり、その結果、仲間と共に、一人では成し得なかった成果を残すことができたのだと思います。
インターンで得た学びと成長は、自分にとって大きな財産となりました。結果的にこの会社からリターンオファーを頂き、7月から働かせていただくことになりましたが、今後も尊敬できる人と共に挑戦し続けられる環境に身を置くためにも、常に新しいことに挑み、自分のできる最大限を尽くしていきたいです。

ボランティアと交流
今年の夏には、思いがけず、心に残る経験をしました。桜修館時代の友人に誘われ、京都大学のサークルが主催する「美山万博」で通訳ボランティアをしたのです。誘われたのは、イベントの2日前にたまたまその友人に会った時でしたが、「今しかできない」と思い切り、1人京都へ向かいました。
京大生や京大の留学生とともに美山を訪れると、自然豊かな環境と温かい人々に出迎えられました。地元の小中学生30人ほどが集まり、留学生が英語で自国を紹介し、私が通訳を担当。その後は各国の料理を一緒に作って食べ、川遊びやフィリピンのバンブーダンスなどの遊びを楽しみました。子どもたちの素直な好奇心や日本の美しい自然に触れ、私自身も心から癒されました。美山には森の教育プロジェクトというものがあり、僻地の子供たちに地理的ハンデをなくす取り組みが盛んにおこなわれております。地元の方々の子供たちへの思いや、私たちの訪問を心から感謝してくださる暖かい雰囲気に心が打たれました。
また、通訳を通して、留学生と地元の人々や子どもたちをつなげられたことは、自分にとって大きな喜びでした。「あなたのおかげで交流が深まった」と感謝された時は本当に嬉しく、自分が楽しい時間を過ごしながら周りの楽しさにも貢献できたことに大きな幸せを感じました。
この経験から、渡英前はあまり見えていなかった日本の魅力や美しさに気付けるようになったと改めて実感しました。イギリスに渡ってから、日本らしい沢山の良さに、どんなに小さなものでも、目を向けられるようになり、日常がより豊かになったと感じています。今後、社会人として働くようになっても、人々や自然との関わりを大切にし続けたいです。
また、そこで出会った留学生とのつながりは今も続いています。このような国境を越えた友情が生まれ続けていることは、自分の人生をさらに広げてくれる大切な財産であり、渡英経験があってこそ叶ったことだと感じています。

大学生活
まず学業面についてです。自身のコースでは、社会問題をデータというレンズで捉えることでより深く理解し、見えない課題を可視化して目に見える形にする点に魅力を感じています。経済、教育、格差といった多様なテーマに関心がある私にとって、数字を通して現実の課題を読み解き、解決の糸口を探る作業はとても新鮮で楽しいです。
学業の合間には、ロンドンならではの暮らしも満喫しています。友人とリージェンツ・パークやハイド・パークを散歩したり、街角のカフェでゆったりと時間を過ごしたりと、大都市でありながら緑と静けさに包まれるこの街は、私にとって心を整える大切な居場所です。サークル活動では日本人団体に加えてジャズサークルに所属し、今年は「ジブリ・ジャズ」をテーマにしたコンサートで演奏しました。サックスのソロを任されたり、ジブリ作品の知識を活かして舞台演出のアイデアを出したりと、音楽を通じて仲間と一体感を生み出せた経験は、この1年で最も心に残る瞬間の1つです。
さらに今年はフランス、デンマーク、ポルトガル(ポルトとリスボン)、ハンガリー、クロアチア、モンテネグロを訪れました。ヨーロッパ各国へ気軽に飛べる環境にいることを心から幸運に思います。特に印象に残っているのはポルトガルのポルト、モンテネグロのコトル、そしてハンガリーのブダペストです。どれも訪れるまで具体的なイメージが湧かなかった場所で、実際に足を踏み入れたときの新鮮さと高揚感は言葉にしがたいものでした。来年も、最後のイギリス学生生活、思う存分多くの場所に足を運び、沢山の新しいものに出会いたいです。

まとめ
私はイギリス留学を始める前から、自分の経験を社会や世界に還元できる人になりたいという思いを抱いていました。この4年間で、その思いは少しずつ現実味を帯びてきたように感じます。インターンではAIやデータ技術を実際の社会課題に応用し、ボランティアでは人と人をつなぐ役割を果たし、大学生活では学問や文化、人との出会いを通して大きく成長することができたと思います。
5年後、10年後、そしてその先に具体的にどんな道を歩むのかは、まだはっきりとは分かりませんが、どんな状況にあっても渡英したからこそ得られた「挑戦を恐れない心」「多様性を受け入れる姿勢」「試練を乗り越える力」は、これからの人生を支える大切な糧となると思います。
これからも、自分なりの方法で人や社会に貢献し続け、周りにポジティブな影響を与えられる存在になりたいです。大学最終学年も、自分のすべてを出し切って全力で楽しみます。
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