お知らせ

Eさん(University of Cambridge , Mathematics / Chirist's Hospital出身)

私はこの夏、ケンブリッジ大学数学科を無事卒業し、5年間のイギリス生活を終えました。多くのことを体験し学び、成長して来ましたが、渡英した日は昨日のことのように覚えています。

 Tazaki財団留学奨学生として最後のレポートを書くに当たって、留学前のレポートから全て改めて振り返ってみました。案外、学部を数学に決めた経緯について書いていなかったので、財団初のMathmo (CambridgeのMathematicianという意味のスラング)として大学生活も含めて書いてみようと思います。

 私はもともとEngineeringに進もうと考えていました。それは留学当初念頭にあった、「宇宙関係の仕事に従事する」に分かりやすく近づけると思っていたからです。しかし、A-levelで物理を勉強するうちに、4年ないしは3年間大学で工学を勉強するのは自分には向いていないと感じるようになり、進路について一から考え直すことになりました。個人的に、A-level物理というのは日本の高校物理と比べるとより実用的というか応用的だと思っていて、それはA-levelの良さでもあるのですが、「結果を知ってその使い方を学ぶ」ことに重きが置かれるであろう工学という分野は、「なるべく正確に物事を学びたい」という自分には向いていないと考えたのです。

 それから数学科への出願を決めるには紆余曲折ありましたが、検討し始めたきっかけはホストファミリーからの助言でした。ホストファミリーに「数学科を出たらなんでもできるよ」と言われ、数学科出身のご友人と何度か話す機会をいただき、数学オリンピックに出るような人ではなくても数学科へ進んでいいんだ、という気づきを得ました。そして、数学科に決めたのはYear 12の夏休みに参加したTOPSでした。A-level Maths, Further Mathsでは新しいことを知ることはあっても、発見がなく、退屈だと感じていたのですが、TOPSで普段と違う先生から全く新しい分野であるGroup Theoryを教わった時に、数学を勉強することの楽しさを突然思い出しました。物事を机上で扱えるようにする人類の努力と、数学全体の構造的な美しさに魅了されていた記憶が蘇り、数学ならぜひ3年でも4年でも学びたいと思ったのです。

 実際に大学で3年間数学を学んでみて、あの時の選択は間違ってなかったと思いました。授業内容が理解しきれなかったり、問題が解けずに苦しんだことは何度もありましたが、投げ出したいと思ったことがないからです。Director of Studies(学習面の面倒を見てくれる担任の教授)や、Supervisorにサポートしてもらった事も大きいとは思いますが、やはりそれなりに数学が好きだからこそ続けられたのだと思います。

 ところで、財団の最終面接で、面接官の方に「貴女本当はもう少し数学できるでしょ」と、数Aに4のついた成績表を見ながら言われ、「いや、普通にできなかっただけなんだけどな」だと思いながらも「はい!」と元気よく答えたのですが、あれは半分合っていて半分間違っていたと今になって思います。Cambridge Mathsに合格するには十分できたものの、A-levelとは比べ物にならないスピードで展開される授業についていき良い成績で卒業するには不十分だったからです。

 今後は日系メーカーの技術職として機械学習に関する研究を行っていくことにしました。明確な目標がない分、就活には非常に苦労しましたが、自分で何かを発見したり作り出してみたいという思いと、数学をダイレクトに活用しながら未知の分野に挑戦できるという観点から、この仕事を選択しました。初志貫徹、とはなかなかいかない人間ですので、一先ずの目標を立ててから気の向くままに生きていくことになるでしょう。思い立った時にやりたいことができるように、一つのことに拘らず視野を広く持っていこうと思います。

 最後になりますが、改めて5年間にわたる多大なご支援を賜り、ありがとうございました。英国留学は文字通り私の人生を変える経験となりました。この経験を社会に還元していけるよう、邁進していきます。