
私は今、羽田行きの飛行機の搭乗案内を待っています。初めてこの地に降り立った6年前、コロナの影響で閑散としていたヒースロー空港のターミナル5で、「日本から持ってきたカードは使えるかな」とドキドキしながらPretでホットチョコレートを頼み、エディンバラ行きの乗り継ぎ便を待っていたことを覚えています。同期でFettesの北山くんとは、ビザが届く時期がずれてしまった影響で渡英の日程が別になってしまった上に、エディンバラに到着してからはロストバゲージに遭うところから始まった留学生活でした。今では、そんなヒースロー空港も再び世界各国へ向かう人々で溢れ、私はホットチョコレートではなく、IPA(イギリス発祥のビール)のパイントグラスを片手に持っています。(イギリスの何が恋しくなると思うかと聞かれると、私はいつも「パブとフットボールの文化」と答えます。)最後になる本レポートでは、大学4年目のこと、そしてこれから東京で就職するにあたって漠然と感じていることをお伝えできればと思います。
修士課程に当たる最後の1年間は、レクチャーと試験が中心だった最初の3年間とは異なり、多くの時間を修士のプロジェクトに費やしました。ここでは詳しく触れませんが、研究内容はSupergravity(超重力理論)についてで、実験やコンピューティングではなく、ひたすら新しい概念や理論を学び、紙とペン(と言うとかっこいいですが、正確には、間違えてもすぐに筆跡を残さず消せるiPadとApple Pencil)で計算をする、完全に理論寄りのプロジェクトでした。同じ研究室にいた仲間との何気ない会話が、自分のプロジェクトに対する理解につながったり、自分で何度調べても分からなかったことが、教授への一つの質問で解決したりすることが多くありました。前回のレポートでも書かせていただきましたが、このプロジェクトを通じて、改めて環境選びの大切さを痛感しました。
留学生活を振り返って、真っ先に思い浮かぶのは、共に時間を過ごした人々です。月並みな表現ですが、この6年間で築いた人間関係は、これからの人生において大変大きな財産になると思います。自分のコンフォートゾーンから抜けて、新しい世界に飛び込んでいけばいくほど、世界の狭さを目の当たりにすることが多くありました。英国の地でばったり旧友と再会したり、想像もしないところで友人同士が知り合いだったりと、人との縁は広がるほど、不思議な形でつながっていることを実感しました。そこに生きづらさを感じることもあるかもしれません。しかし逆に、自分の好きなことや、やりたいことに真摯に向き合い、それぞれの環境で一生懸命に生きていれば、卒業後すぐは進む道が違っていたとしても、予想もできない形で再会する日がこれから先きっとあると、私は信じています。
これからもライフステージが進むにつれて、様々なチャレンジがあると思いますが、イギリスでの留学生活は常に壁を乗り越えるヒントと勇気をくれると思います。改めまして、6年前の私にこのような貴重な機会をくださり、留学生活を支えてくださった理事長をはじめ、財団の皆様に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。これまでの人生を通して与えていただいたもの、そしてこれから与えていただくものを、ゆっくりと、しかし着実に社会へ還元できる人間になれるよう、これからも精進してまいります。