渡英から五年、そして大学入学から三年が経過しました。今年度も新たな挑戦と経験に恵まれた一年となりました。学習面と生活面の二つの観点から報告したいと思います。
まず、学習面についてですが、一学期は前年に比べて学習内容の専門性が高まりました。二年生の時は必修科目が多かったのに対し、三年生ではすべてのモジュールが選択制となり、興味のある分野に集中して学ぶことができました。また、選択制のモジュールは生徒数が少なく、教授との距離が近いと感じました。授業中に一人一人が発言する機会が多く、常に能動的に学ぶことができました。課題や実験も前年よりも専門的な内容となり、大きなやりがいを感じました。一学期には「Disease Ecology and Epidemiology (DEE)」および「Mechanisms of Gene Expression (MGE)」の二つのモジュールを履修しました。DEEではコロナウイルスなどによるパンデミックの広がりを数学的に分析し、生態系がパンデミックに与える影響や対策についても学びました。MGEでは、遺伝子の発現メカニズムについて詳細に学び、遺伝子の突然変異がワーデンブルグ症候群やハンチントン病などの遺伝性疾患を引き起こすメカニズムについても理解を深めました。医学的観点から生物学を学ぶことが好きな僕にとって、非常に興味深い学習経験となりました。このモジュールでは、線虫に遺伝子組み換えを行う実験があり、実際の生物を扱う経験は前年よりも専門的であると実感しました。生活面では、昨年度に引き続きヒップホップダンスのサークルに所属していました。オーディションや大会用の振り付け作りで忙しい日々が続きましたが、自分が作った振り付けをチームメイトやオーディション参加者が踊る姿を見て、大きな達成感を得ました。
二学期は、一学期に比べて学習面と生活面の両方で忙しい時期となりました。学習面では、バイオインフォマティクスという情報科学を用いた生物学データの解析をする学問について学びました。PythonやRなどのソフトウェアの使用は得意な方ではないので苦労しましたが、近年需要が高まっている分野であるため選択しました。異なるアプローチから生物学を学ぶことで、徐々に楽しさを見出しました。課題を通じてデータ分析の機会が増え、情報処理能力や分析力の向上を実感しました。また、医療関係のプレゼンテーションの課題では自由にテーマを選べるため、自分の興味を深める良い機会となりました。バイオインフォマティクスのモジュールが終了すると、Final year project(日本で言う卒業論文)の準備が始まりました。プロジェクトは二部構成で、今学期はその前半部分である「サイエンスコミュニケーション」を履修しました。BBCの職員やフリーランスのデザイナーを講師として招いた講義やワークショップがあり、プロの視点から学ぶ貴重な機会となりました。課題として短い記事やポスター作成を行い、記事作成では実験レポートや論文とは異なる表現方法に苦労しました。ポスター作成では、限られたスペースに情報を効果的に配置する難しさを実感しました。ポスターのテーマは遺伝子組み換えによってヒトの生体機能を模倣する豚を作り、人間への臓器移植を行うというもので、以前から興味があった研究内容であったため、非常に楽しく取り組むことができました。生活面では、三月中旬にノッティンガムで行われたヒップホップダンス大会で準優勝し、その翌週には「Move It」という世界最大級のダンスイベントにチームで参加しました。Move Itのステージに立つ機会を得るとは思っていなかったため、パフォーマンス後は夢を見ているような気分でした。その翌日には、イギリス国内のヒップホップダンスチャンピオンシップに出場し、振り付けや曲の構成に関する厳しいルールに対応しながらも、満足のいくパフォーマンスができました。結果として準優勝し、アメリカでの世界選手権出場権を獲得しました。チームメイトの多くが選手権の時期に忙しかったため出場は辞退しましたが、出場権を得たこと自体が貴重な経験となりました。
三学期には、Final year project の後半部分である「Research Proposal(研究計画書)」の作成を行いました。形式は実際の研究計画書に準じており、非常に役立ちました。トキソプラズマという寄生虫の体内にあるヒストンというタンパク質の化学的な修飾が遺伝子発現に及ぼす影響についての研究計画書を作成しました。トキソプラズマについての予備知識が全くなかったため、限られた時間で計画的に作成するのは困難でした。簡潔かつ関心を引く内容にすることが重要で、担当教授からの指摘を受けながらも、最終的には良い評価を得ることができ、満足感を得ました。数日後に本番のプレゼンテーションと口述試験を無事に終え、今年度の大学生活を締めくくりました。生活面では、レストランでのアルバイトを始めました。英国でのアルバイト経験がなかったため、開始時には不安がありましたが、実際には非常に楽しく、やりがいを感じています。注文を紙で取るため、メニューや値段を全て暗記する必要があり、最初は苦労しましたが、仕事を覚えるにつれてレストランの一員として働いている実感が湧いてきました。ロンドンには多国籍の人々が住んでおり、接客を通じて新たな経験をすることが多いです。例えば、イスラム教徒のお客様にはハラールミートの使用について尋ねられることがあり、その存在を知らなかった自分の無知さを認識しました。ディナータイムは非常に忙しいですが、新たな経験ができるため、今後も続けていきたいと考えています。
来年度はビジネススクールでビジネスと経営について学ぶ予定であり、これまでとは異なる環境に対する不安もありますが、非常に楽しみにしています。今後も学習面と生活面の両方で成長を目指し、精進してまいります。