Tazaki財団の奨学生として5年間の英国留学を終了するにあたり、学部3年目の生活のまとめと、留学生活全体を振り返りをもって、ご報告とさせていただきます。
もともと、経済学の研究に興味のあった私は、学部3年目の頭にBSc EconomicsからBSc Econometrics and Mathematical Economicsというコースへの変更を行いました。通常、経済学部では卒業論文がありませんが、変更したコースでは、卒業論文の執筆が必須です。経済学部の教授が指導教員を担当し、学部生の研究にアドバイスをくれるという、ある意味贅沢な内容ですが、テーマ選び・データ探し・分析・執筆を一人で行わなければいけないので、その分負担も大きくなりました。私は、韓国の教育政策が塾などの教育投資に与える影響を定量的に分析しました。この研究プロジェクトを通し、特定の分野の理解を深めることができただけでなく、経済学研究の基礎的な手法や新たなスキルを習得でき、大変実りの多い経験になったと思っています。その他にも開発、労働、計量経済学を履修し、それぞれのより専門的な学習を進めました。卒論とその他の教科の勉強とでバランスを取るのは容易でありませんでしたが、違う分野の知識を合わせて研究に活かしていくこともでき、とても興味深かったです。
3年目は学業以外でも活動範囲を広げることもできました。LSEのオーケストラはもともと所属していましたが、ロンドン大学の合同オーケストラに参加し、ティンパニを演奏することとなりました。そのつながりでUCLのオーケストラにエキストラとして参加することなどもあり、一年で合計9回の演奏会に乗るなど、忙しいながらも楽しい生活を送っていました。また、開発経済学を担当する教授陣が学部生からリサーチ・アシスタント(RA)を募集しており、応募したところ採用され、研究作業を手伝うバイトもこなしつつ勉強、それ以外の活動を行うといった様に、色々なことに手を伸ばして取り組んだ一年でもありました。
その一方で、自分の進路に関しては悩みが尽きない一年でした。就職も考えましたが、やはり研究の道を進もうと思い、年度前半は修士プログラムの出願準備に奔走しました。幸いオファーをもらうことはできましたが、急速な円安とインフレで奨学金を利用しても学費さえ賄うことが難しいことが判明し、進路に関する不安で悶々としていた時期もありました。そんな中、前述のRAバイトの上司である教授が、フルタイムのRAを募集しているという話があり、試験や面接を経て今年9月からの採用が決定しました。このポジションは、1から2年の研究経験を積んだのち、教授からの推薦状を携えてPhDプログラムに応募することを主目的にするもので、アカデミアの道を進もうとする私には、まさに渡しに舟のチャンスでした。この仕事が決まったのは5月の試験期間中でしたが、それまでは進路に関する不安もあり、ストレスが多い時間が長かったと思います。しかし最終的には進路も定まり、納得のいく成績を修めて卒業することができました。
といった、わりかし激動(?)の留学生活最後の一年でしたが、5年前に右も左もわからず渡英したばかりの時を思い返してみると、その頃は曖昧だった「将来やりたいこと」がより解像度の上がった形で近づいてきていることを実感します。自分の成長というのは、短期間では認識するのが難しいですが、5年前の自分では想像してもいなかったことができるようになったという発見は感慨深いものがあります。その成長に欠かせなかった要素の一つは、人との繋がりです。言語スキルの習得や経済学の勉強などはどこにいてもできますが、この留学生活を経て得られた友人関係、優れた研究者とのつながりは、他のもので代替することはできません。私はそのネットワークに時に支えられ、時に引っ張られて今いる場所にたどり着くことができました。まだ道半ばではありますが、これからも今までの人間関係と新しい出会いを大切にし、少しずつ周囲を支える役割を担いながら、自分の道を進めたらと考えています。
最後になりますが、今まで多大なるご支援をして下さったTazaki財団の皆様に心より感謝申し上げます。留学中、いろいろ不安なこともありましたが、温かいご支援は心の支えともなり、修学に専念することができました。今まで大変お世話になり、本当にありがとうございました。