お知らせ

Mさん(London School of Economics, Economics / Fettes college出身)

渡英して早くも4年が経過し、大学生活そして留学生活の最後の一年が始まろうとしています。2020年から続いたCOVID-19も落ち着き、パンデミック前に近い形で過ごすことのできた大学2年目を振り返ってみたいと思います。

学業面
二年生になってから大学の授業はより発展した内容になり、難易度はかなり上がったように感じました。大きく変わったのは履修しなければいけないmoduleの数で、二年次は4つのmoduleを1年間やり続けるという、一年時の学期ごとに履修する科目が変わる形態とは大きく異なり、カバーされる範囲も内容も盛りだくさんで別の種類の難しさがありました。4つのmoduleのうち3つは必修のミクロ、マクロ、計量経済学で、残りの一つの選択科目は統計学を選びました。
ミクロ経済学では基礎的な理論を広範に学び、それらを複合的に現実の問題に当てはめて分析をしていくという流れで、経済モデルのどの部分が家計や企業の行動を象徴しているのかを中心に、経済学の道具の使い方と思考力を養える興味深い内容でした。

マクロ経済学は、経済成長論で長期の経済成長に関する概観を形成し、後半はビジネスサイクルのより中期・短期の波を補足するマクロモデルに触れました。特に面白かったのは、女性の社会的役割や性的マイノリティなどの社会的包括が経済成長にどういった影響を与えるかという研究や、伝統的に家計や企業など経済主体の同質性を仮定してきたマクロモデルで異質性を考慮することで、どうインプリケーションが変化するかということです。また、グループで行うコースワークの中では、役割分担を行ったうえで私は定量分析を担うこととなり、マクロの時系列データを用いてPython上で回帰分析や要因分解分析、グラフの作成などを行い、残りの定性分析もチームメートと協力して仕上げました。チームで作業することの難しさはありましたが、技術的なスキルもソフトスキルも向上させることのできたいい経験でした。

計量経済では上二つとは打って変わって、前期は最小二乗法などの基礎理論を叩き込まれ(ほぼ統計学です)、後期は統計的因果推論の手法と実践を学ぶというものでした。二学期目は実際にデータを用いて既存の研究の再現を行い、さらに分析手法を発展させて結果をまとめるというコースワークがあり、StataやLaTeXと格闘しながらどうにか完成させました。

統計学はもとから苦手意識があり、それを克服するつもりで履修を決めましたが、実際にやってみると案外面白く思えるようになりました。計量経済学との関りも多く、計量経済の授業では説明されない理論の証明などを扱い、統計学では触れない実証サイドに重きを置く計量経済は互いを補完し合う関係となり、かなり良い選択ができたのではないかと今更思っています。

生活面
学業以外では、ロンドンでの生活にもだいぶ慣れ、様々な文化的活動を楽しんでいます。大学のオーケストラでは二年目にもなると繋がりも増え、練習以外の機会でもアンサンブルをやったり、遊びに行ったりしています。毎学期末のコンサートでは近くの教会を会場にかなりの人数のお客さんを前にみんなで演奏します。今年は2回あったコンサートのどちらもソリストを招いて協奏曲の演奏をするという大変貴重な経験ができました。演奏するだけでなく、ロンドンではオーケストラのコンサートは学生券が廉価で、かなり多くのコンサートに足を運びました。コロナという言葉もあまり聞かなくなり、大学の友人たちと旅行を楽しんだりするようにもなりました。スコットランドはFettesにいた時は(コロナもあり)あまり巡ることができませんでしたが、昨年の12月にグレンコーなどの名所を回り、いい思い出になりました。

最後に
大学学部生最後の一年を前に進路にまだ迷っている私ですが、最近になって経済学の分野でFamily Economicsというのがあることを知りました。これは家庭にかかわる意思決定や行動(夫婦間の子供の数、教育投資など)を経済学の手法を用いて分析するものですが、先進国で進む少子化や子供の貧困の問題と大きく関わっています。そもそも経済学を志した理由は教育格差に問題意識を抱いていたからだったこと、そして今学んでいることはそうした問題に取り組むための枠組みや手法を提供してくれることを思い出す、いいきっかけになりました。しかもその分野の第一人者とされる教授が去年からLSEに移ってきていたことを知り、改めて自分のいる環境がいかに恵まれているかを再認識しました。今まで支援をいただいてきたTazaki財団の方々に改めてお礼申し上げます。最後の一年も初心を忘れず、様々なことを吸収できるように一所懸命頑張ります。