お知らせ

Kさん(University College London, Economics / Kingswood School出身)
留学報告書を書くのも、今回で7回目になる。振り返ると、自分の変化の大きさに驚かされる。 初めて渡英した際は、英語漬けの毎日を送ることで、環境に適応しようとがむしゃらにもがいていた。今、多文化が交わるロンドンで生活するうちに、「日本人」としての自分をより強く自覚するようになった。自分の中の日本をなくすのではなく、むしろ、自分の好きな日本をより多くの人に知ってもらいたい、という想いが強くなった。今回は、UCL Japan Societyの代表となることで得た学びに焦点を当てて報告したい。

UCL Japan Society は本会員数350人のイギリス最大規模の日本関連コミュニティで、会員の約7割を日本に興味を持つ外国人が占めている。Societyは日本語の授業とsocial/cultural イベントを毎週行っているほか、日本人留学生に向けた就活情報の共有などを行っている。First year committee として運営に関わり感じたのは、日本人同士で盛り上がりたい日本人学生、日本について学びたい外国人学生双方にとって良いイベントを企画することの難しさだ。一方で、日本食ブームや、コロナ明けと円安による海外旅行先としての需要の高まりから、日本に興味を持つ人の数が増えている実感があった。UCL Japan Societyの代表となり、運営の舵取りをすることで日本の魅力を学生に拡め、広い意味で日本の発展に寄与したいと考え、代表選に立候補した。

代表に就任してからは、日本の魅力を発信するという大きな目標に対して具体的なアクションをとり始めた。15人ほどの運営チームを取りまとめる中で、目的意識を持ち続けることの大切さと、メンバーを信頼し、任せることの大切さを学んだ。
イベントやSNSを通じた発信だけでなく、日本人と外国人が関わる場の提供も、Societyの重要な役割だ。単に文化を発信するだけでは日本人会員を惹きつけることはできない。日本人、外国人双方にとって魅力的かつ交流ができるような施策を考えた。目標の実現のために何が必要かを考えることで、具体的な行動に落とし込むことができる。インスタグラムでの広報を例にとっても、単に情報を発信するための投稿と、日本人、外国人双方に興味を持ってもらい、イベントの参加者をあげようという意識を持った投稿では、デザイン、キャプション、タイミングなど全てが変わってくる。
一方で、イベント企画、授業の構成作り、広報、他大学との連携、スポンサー企業との契約、それぞれに担当チームがつき、日々動くうちに目的意識に基づいた行動が難しくなることがわかった。原因として、それぞれが異なる業務を担当することで全体としての目標に自分の行動がもたらす効果を想像しにくくなっていること、ほぼ全ての業務に私が関わっていたことがある。特に、代表就任直後はかなり自分の手を動かし、方向性を決めたうえで細かな業務の実行を任せる形で進めてしまっていたため、それぞれの考える機会を奪ってしまっていた。運営メンバーは皆、選挙で選ばれており、バックグラウンドも様々だ。やる気があり、私とは違う視点を持ったメンバーを信頼し、任せることで、1人では思いつかなかったようなことを実現できるようになる。全員で目的意識を共有し、その上で各々に任せることを意識していきたいと感じた。
留学前、文化祭実行委員や合唱コンクール指揮者などを努めた際は、仲間を頼ることを是とせず、全て1人で仕上げようとしてしまっていた。財団応募書類に書いた『一人の力で出来る事は限られている。全員が自分事として参加できる環境づくりが最も大切だと気づいた。ナポレオンは「リーダーとは希望を配る人だ。」と言ったという。皆を巻き込み希望を配る人となることが今後の課題だ。』という文章の本当の意味を、4年越しに、今になって実感している。1人でできることは限られている。だからこそ、希望を配り、目的を共有し、メンバーを励ますことで1人では絶対にできないことを成し遂げることができる。代表としての活動を通じて、4年前の私が目指していた「希望を配る人」となれるよう、今後も精進したい。

最後になったが、悩んだ時に相談にのってくださった先輩、同期、刺激をくれる後輩、そしてサポートしてくださる財団の皆さんに改めて感謝したい。