お知らせ

Iさん(University of Edinburgh, Architecture / Kingswood School出身)

ロンドンを発ち四時間半、エディンバラ・ウェイバリー駅の構内アナウンスが聞こえると、そのアクセントにいつの間にか懐かしさと安心感を抱くようになったことに気づき、そしてまた新しい一年への心の高鳴りを感じます。今回は一年生の二学期を振り返って、学業と生活について思い出に残っていることについて書こうと思います。
二学期で最も力を入れたのは建築史の授業のエッセイです。一学期は古代から18世紀まで、二学期は19世紀から現代までの建築の歴史を授業で学び、それぞれの学期に一つずつ自分で好きなトピックを選んでエッセイを書く課題がありました。一学期は、宗教、美学、技術発展の観点からなぜ中世のゴシック建築の様式が発展したのか、二学期はアール・ヌーヴォー建築が19世紀と20世紀の建築の転換点としてどのような意味があったのか、というテーマを選んでエッセイを書きました。どちらのテーマも、今まで表面的に美しいなとしか見ていなかったものが、その形を取るに至るまでに様々な要因が絡み合っていることが文献を読めば読むほど感じられ、毎度書きすぎて文字数を削るのに非常に苦労するくらい面白く、学べる喜びを感じられました。また私は美術が好きで、例えば19世紀イギリスのラファエル前派やジョン・ラスキン、ウィリアム・モリス、また大陸ヨーロッパの象徴主義、ベルエポックなどに興味があったのですが、建築史を学ぶとこの時代のアイデアの影響と交流がファインアートの世界にとどまらず建築にも深い関係があり、さらにそこには幅広い技術や社会の急激な変化などの影響が目に見えるように記録されていることが感じられてとてもわくわくします。古いもの新しいもの含めて、街を歩き建物を眺めるときに考えることも大学に入る前と大きく変わりました。また夏休みには友人とフランス、ベルギー、オランダを訪れ、実際にエッセイのために調べた建物などを見ることができ感無量でした。
日々の生活では、学生料金を最大限利用して舞台やオーケストラコンサートにたくさん行きました。エディンバラはとてもコンパクトな街でありながら、スコットランドの首都なので美術館や博物館、劇場などが徒歩圏内にたくさんあり大学の帰りなどにとても気軽に行くことができます。特に金曜日に一日授業があった後に、Usher Hallという大きなホールで行われる交響楽団の演奏を聞くのは格別でした。コンサートは6ポンド、バレエや演劇は10-11ポンドで観られてしまうのは本当にありがたく、若い人も芸術に触れやすくなっているのはさすがだなと感じます。
最後に、長い間迷い続けていたのですが、今年度から専攻を変えて建築学部の建築の専攻から建築史の専攻に変えることにしました。理由としては、1年間の勉強を通して自分が最も興味があるのは建築の設計よりも歴史であることが前以上にわかったからです。建築コースだと、最終的に資格取得を目指せる代わりに途中編入はできないため昨年そちらで始めてみたのですが、どうしても設計の授業が最も重要となり(そちらも面白いのですが)、思うようにFurther readingなどに時間が割けないように感じました。特に3年目以降、近代建築や関連する近代美術史の授業をとって一番興味のあることに集中したいし、せっかくヨーロッパの世界遺産都市で、Undergraduateのコースとしては世界に二つしかないという建築史コースをとれるまたとないチャンスがあるならそれを選ぶのが私にとって最良の選択だと、チューターと話したりするなかで感じるに至りました。とはいえ、私は一年目で建築学のコースをやったからこそより自分の興味がわかったため、昨年の決断を間違いだったとは全く思っていませんし、大学受験の結果でエディンバラ大学に来ることとなったところから、こうなるべくしてなったように感じている今日この頃です。今年はソサエティーのコミッティーの仕事があったり、夕方にフランス語の授業をとっていたり、また忙しくなりそうですが新しい1年がとても楽しみです。