お知らせ

Sさん(Queen Mary University London , Medicine / Kingswood school 出身)

早くも大学での3年間が終わり、時の流れの早さには驚かされます。今年は、医学部が半分終了したことを祝うために、ハーフウェイボールというパーティーが開催されました。今思うと3年前の自分は、異国の地で医学を学ぶ難しさゆえに、1年生から2年生へさえ、進級できるのかという不安がありました。仲間と頑張ってここまでこられた3年間への達成感と共に、卒業後の進路を考え始めなくてはならない時期という実感も湧いてきました。今回の報告書では、3年生から始まった病院実習と、私が今年の9月から1年間行うことになる、インターカレーションという制度について中心に書きたいと思います。

病院実習
私の大学では、3年次から本格的な病院実習が始まります。1年の間に3つの病院をロテーションし、各8週間を過ごします。実習先の病院は、希望を出せるのですが、必ずしも希望通りに行くわけではありません。ロンドン市内の病院(インファーム)とロンドン市外の病院(アウトファーム)から選ぶことができます。アウトファームは、住んでいるところから遠く通うことが困難なため、寮が無償で提供されます。私は、アウトファームを1つ、インファームを2つ希望しましたが、インファームを3つ回る(ロンドン市内で過ごす)という結果になりました。

実習先の診療科は、自分で選べる訳ではなく、割り当てられた科をまわります。病院によっては、8週間同じ科で過ごすこともあれば、2、3週間ずつロテーションすることもあります。私は、8週間のうちに循環器科、一般外科、内科を回ったり、泌尿器科、内分泌科をそれぞれ8週間ずつ回ったりしました。実習中は、回診に参加をして見学をするだけではなく、問診、身体検査、採血や導尿カテーテルなどといった手技も、患者さんを相手に実習がありました。手技、問診、身体検査の練習をする度に医師からフィードバックや、サインオフ(完了したことを示す署名のようなもの)ももらいます。ひとつの実習につき、8個ずつもらわなくてはいけないため、ただただ見学するだけではなく、目的を持って実習に取り組むことができます。しかし、面倒を見てくれる医師たちももちろん、自身の仕事で忙しいため、積極的に「〜やりたい」や「〜見たい」など言わないと何も学びは得られません。自分の学びは自分に責任があることを改めて実感しました。

実習中に特に記憶に残っていることは、夜間勤務です。夜の8時から夜中の1時までの5時間だけでしたが、夕方に入院してきた新しい患者さんの問診と身体診察をして、担当の医師にまとめた結果を報告しました。やっていることは昼間と同じですが、照明が少し落とされて暗く、しかも働いている医師や看護師なども少ない中では、不思議な緊張感がありました。実際の夜勤の半分にも満たない時間でしたが、医学部生の早いうちから経験することができて良かったです。

インターカレーション
イギリスの医学部では、iBSc (intercalated BSc)といって1年間医師免許取得に向けた勉強から離れて、理学士号(BSc: Bachelor of Science)を取得するシステムがあります。私の大学では、iBScは希望制であり、2、3、4年修了時から1年間取得可能です。他の医学部のiBScコースや、少ないですがMSc(修士課程)を履修する医学部生もいます。出願は、12月頃から準備を始め、志望理由や将来の展望などをかいたPersonal Statementを書いたり、大学の先生に推薦状などを書いてもらったりします。

私は、自分が通っている大学のMaster of Public Healthと、London School of Hygiene and Tropical Medicine(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院)のMaster of Public Health、Imperial College LondonのiBSc in Business for Healthcareの3つを受けました。公衆衛生は、医学部入学時から興味がある分野ではあったのですが、昨年の夏に、スイスのジュネーブでWHOや国連の本部などの国際機関に行き、活躍されている日本人の方々とお話しする機会があり、よりこの分野で働きたい気持ちが強くなりました。Imperial College Londonのビジネスのコースは、マネジメントやアントレプレナーシップなど、医学とは違う新しいことを勉強できるという点でとても惹かれました。このコースはグループワークが多いことも特徴で、授業の一環で生み出したビジネスアイディアをもとに起業する人もいます。

面接などの結果、嬉しいことに出願した全てのコースに合格することができました。他の大学でインターカレーションをする場合は、自大学の許可が必要であり、毎年15〜20人程しかできないと聞いていました。これまでの成績や面接の結果が見られるとのことだったので、その枠に入れたことがわかった時は、今までの頑張りが認められた気がしました。どのコースにもとても魅力を感じていたので、ビジネスのコースにするか、公衆衛生の修士にするか最後までとても悩みました。それぞれの分野で活躍している方々など色々な人にアドバイスをもらい、このタイミングで修士号を取れる、将来のキャリアにも繋げやすい、LSHTMのMaster of Public Healthに決定しました。このコースは、臨床医として何年か働いてから、キャリア転換やさらなる知識の習得などを理由に履修する人もいて、また、世界各国から集まる大学院でもあるため、様々なバックグラウンドを持つ人と出会うことができると思い、興奮しています。公衆衛生についての学びを深めつつ、将来どういう道に進みたいのかをしっかりと考える1年間にしたいと思います。

大学3年の1年間は、病院実習やiBScの出願のほか、大学のバドミントンチームでの練習やアカデミック系のソサエティーでの活動、日本食レストランでのアルバイトなど、盛りだくさんでした。やりたいことと、やらなければいけないことがたくさんある中で、いかにバランスを保ち、自分の軸を持ち行動し続けることができるかが試されました。9月からの1年間は、新しい環境でのスタートとなりますが、初心を忘れず、これまで以上に精一杯勉学に励みたいと思います。