2学年の試験の結果もそろい、無事に3年生に進級できることになりました。基礎医学の勉強が終わり、9月からは、いよいよ病院実習が始まります。様々なことに挑戦し、あっという間だったこの1年間を振り返りたいと思います。
まずは、Societyについてです。今年は、Societyを運営する側の立場に就きました。日本人や日本に関心のある人々からなる、Japan Societyでは、Vice PresidentとCareer officierを勤めました。和太鼓体験や寿司づくり、日本語オンリーナイトなどを企画し、日本文化をより多くの人に知ってもらうだけでなく、メンバー同士の良い交流の場になりました。他にもFoMSF(Friends of Médecins Sans Frontières)で国境なき医師団で活躍する医療従事者を招き自身の経験を話してもらうイベントを企画したり、グローバルヘルスに関心のある世界中の医学部生からなるグループでは、Researchを担当し、ケニアのマラリアについてのケーススタディを元にした論文を出したりしました。今年は、バドミントン部にも属し、毎週のトレーニングと他大学との練習試合を通し、中学高校と続けたバドミントンの楽しさを思い出しました。このように、勉強以外のことにも活動の幅を広げたことで、勉強ばかりの日常ではなく、バランスが保たれた生活を送れたと思います。
その他には、St John First Aiderにもなりました。St John Ambulanceとは、1887年に英国で設立された非営利団体で、一般市民のボランティアからなり、ファーストエイドの活動をしています。特にFirst Aiderは、フットボールやコンサートなどの大きなイベントで急病人やケガ人の救護活動を行い、必要に応じて医師の意見を仰ぎます。面接の後、4日間からなる様々なシナリオを想定した研修を受けた後、ユニフォームをもらい、いくつかのイベントに参加しました。中でも一番大きかったのは、ロンドンマラソンです。当日は、大雨で冷え切っていて最悪のコンディションの中、約6万人のランナーがロンドン市内を走りました。私は、中間地点のテントで救護活動をしていたのですが、雨でぐちょぐちょになった靴で靴擦れを起こしたり、寒くて凍傷になってしまったりしている人が多かったです。既に体力的に限界なのに、この日のためにたくさん準備を重ねてきたランナーたちの、簡単に諦めず前に進み続ける姿に勇気づけられました。また、チャリティーランナーも多く、個性的な衣装を身にまとって走っていて、エンターテイメント性もありました。
カリキュラムの一部に、SSCs (Student Selected Components)という基礎医学で学ぶこと以外の自分の好きなことを学べる期間が、2週間、年に2回あります。1つ目は胸部の解剖、2つ目はメディカルアートを選びました。医学と美術の融合に興味があり、メディカルイラストレーションを自分で学び始めていたので、この2週間はとても楽しいものになりました。ロンドン市内の様々な美術館に行って、中世の像などを描いたり、Barts(自大学)やKing’s College Londonの病理博物館で標本を描いたりしました。一番印象に残っているのは、Life drawingのセッションがあったことです。裸のモデルを皆で囲み、彼がとったポーズを30秒〜45分という異なるタイムフレームで描きます。30秒しかないとなると、焦って自分のスケッチブックを見ることに集中してしまいますが、見たままに描くという先生のアドバイスのもと、モデルに視線を集中させるとうまくいきました。また、似たような趣味を持つアーティスティックな人々と交流したのも刺激的で、今まで会ったことのなかった人と友達になれました。
医師になるには直接必要ないかもしれませんが、アートは医学に対してもたくさんの可能性を持っています。必要な情報をわかりやすく伝える媒体としても、メンタルヘルスの向上にも美術・芸術が担う役割は大きいと思います。
英国の医学部のカリキュラムには、医学の勉強だけではなく、他のことにも挑戦できる環境が整っていると感じます。周りの友達にも、写真を撮ることを趣味にしていたり、作曲をしていたり、医学を学ぶ傍ら好きなことも全力でやっている人が多いです。他分野のことを学ぶことで身につく、トランスファラブルスキルは、将来医師として働く際にも思いがけないところで役に立ってくると思うので、私も語学や美術などにも力を入れたいです。
9月からは、3年生になり、臨床実習が始まります。8週間の病院実習が年に3回あり、今までとは全く違った生活が待っています。実際に患者と接するからこそ得られるものがあると思うので、今までよりも貪欲に、積極的に学んでいきたいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。