お知らせ

Iさん(University of Cambridge, Engineering / Kingswoodschool 出身)

どうにかこうにか生きのびた、そんな実感です。
2024年6月に大学院を卒業し、計6年間の留学生活も終わりを迎えました。
大学4年次を中心に、留学生活について少し書いてみようと思います。

3年次に引き続き、情報工学(Information engineering)を専攻しました。純粋な興味関心からは もちろんですが、産業分野として年齢層が若く、その分将来の進路として様々な可能性に満ちて いるのではないかという計算もありました。おおまかな肌感で、同じ科目を受講している生徒の割 合は男性女性ほぼ半々でした。しばしば日本のニュースで見かけるほぼ男性で占められた情報 工学系アカデミアの環境とは異なる空気感かと思います。

今までのような授業科目の試験勉強に加えて、4年次は修士(MEng)の研究を並行して進めなけ ればなりませんでした。私はリモートセンシングと機械学習を用いた研究を行いました。この研究 は、衛星画像から建物単位のデータを処理し機械学習で地震に対するリスクを予測できるかとい うもので、国連ハビタット(UN Habitat Lebanon、以下UNHL)の協力のもとに進められました。ここ で扱われたレバノンの一地域は、地震や建物のリスクに関するデータが乏しいゆえに従来の調 査ではない方法での地震対策を講じる必要がありました。そこで行ったのがリモートセンシングと 機械学習ですが、何せテーマ決めから実験計画、最終レポートを書き上げるまで9か月と急ピッ チなこと。担当教授とは週に1回supervisionで、研究の方針などを話し合うわけですが、中でも重 要視して話し合ったのはpracticalityについてでした。結局実験の結果が、技術面においてではな く、End userにとって何を意味するのか。機械学習の精度や結果そのものの理解、そして解釈が どれだけできるか。先端技術の応用の成果が、社会の先端にとどまり一部に独占されることな く、それを社会のどこまで届けられるか、という大きな主題について考える良い機会にもなりまし た。

留学に関する感想で、視野が広がった価値観が変わったなどは聞き飽きたフレーズでしょう。し かし、私の場合も結局そこに行きついてしまいます。また、大学初期の自分のレポートを読み返 してみると、当初よりフェミニズムを意識し始めたことに気が付きました。これはfemale collegeに 在籍していたこと、women in STEMが叫ばれる工学部に身を置いていたことなど、大学4年間の この環境のゆえでしょう。大学2,3年目はそれについて書くことこそありませんでしたが、なんだ かんだピボタルな価値観の変化でした。

今年の秋からは東京で社会人として働く予定です。
Tazaki財団と出会い、16歳の頃には予想だにしなかった青春の日々を過ごしました。その期間に 得た財産を今後の人生に存分に活かしていくと共に、その財産を分け与えられるような人生を送 れるように今後も精進してまいります。