お知らせ

Wさん(Oxford University , Economics and Management / Kingswood School 出身)

大学2年目が終わり、大学生活そして留学生活は、残すところあと1年となりました。この1年を振り返ると、刻々と変わるロックダウンの規制や大学の方針に振り回されながらも、できることを見つけては我を忘れて打ち込み、あっという間に時間が過ぎていったように感じます。今回は、2020年秋から2021年夏までの、大学2年生として過ごした1年間について報告したいと思います。

学期中、毎日の生活は学部の勉強を中心に回っていました。私が所属している経済経営学部では、講義とチュートリアルで構成される授業はほぼ全面オンラインで実施されました。ロックダウンの規制が段階的に緩和された3学期後半(2021年5月中旬)になるまで、対面授業は一切無く、対面での実施が可能になった規制緩和後も、多くの授業がオンラインのままで実施されました。総じて、オンライン授業は自分に合っており、少なくとも学業への悪影響は感じられず、むしろ学習の習熟度は上がったように思います。

具体的には、まず、講義が録画形式になったことが一因であると考えられます。対面での講義ができなくなった代わりに、教授が事前に講義を録画して配信するオンデマンド形式や、ライブ授業+録画のアーカイブ配信といった形がとられました。教授によって、毎週3時間ほどの動画が1本ある場合もあれば、15分ほどの動画が10本以上の場合もありました。私は各学期2つの単元を履修しており(以下履修科目参照)、週を前後半に分けて、それぞれの単元を交互に勉強していたため、自分のスケジュールに合わせて好きな時に講義を観られるのは効率が良く、とても有難かったです。

[今年度の履修科目]
1学期:Microeconomics & Technology and Operations Management
2学期:Macroeconomics & Accounting
3学期:Quantitative Economics & Finance


加えて、チュートリアルでは、オンライン形式に徐々に慣れていったこともあり、学習の質の変化はほぼなかったように感じます。ただ、オンラインに切り替わって、チュートリアルの開始・終了時間の区切りがより明確になったことで、いつもは前後の空き時間に教授や友人としていた世間話(small talk)が少なくなったように思います。

そして、何よりも、課題にかけられる時間が大幅に増えたことが、学問に対する姿勢をより前向きにさせる助けになりました。ロックダウンと授業のオンライン化によって日々の予定から消えた、通学やチームスポーツなどの課外活動、友人と会う時間の多くは、課題を進める時間に回しました。週によっては、教授から課される長い参考文献リストを全て読み切る余裕もありました。依然として常に締め切りに追われる感覚はなくならなかったものの、好奇心の赴くままに文献を読み進めた時間はとても貴重なものでした。また、気持ちが暗くなりがちな環境に置かれても「楽しい」「面白い」という極めて純粋な感情が湧き起こる勉強の仕方ができることの大切さ、豊かさを改めて実感しました。

寮生活では、周りの人の変化に敏感になるという自分の役割を見つけました。新年度が始まる前、学期中の住まいに関する規定(Residency Requirements)が免除されるという発表が大学からありました。これは、通常、学期中には、オックスフォードの街の中心にあるカーファックスタワーを中心とした半径6マイルの圏内に住まなければいけない、という学部生が対象の規定です。この規定が免除されたことに加えて、感染状況が悪化している時には、勉強に支障が出るような特段の理由がない限り実家と寮の行き来をカレッジに禁止されていたこともあり、結果的に私は寮に住む数少ない学生のうちの一人となりました。

ロックダウン中は友人と外で会って遊ぶことも違法になり、私は同居人である2人の友人としか直接交流ができない生活が続きました。勉強や試験による極度のプレッシャー、連日の曇り空で滅入る気持ち、終わりの見えないロックダウンなど、精神衛生上好ましくない要素はいくらでもありました。そんな中、同居人達の変化に敏感になり声をかけ励まし合うことが、閉ざされた空間での共同生活に必要不可欠で、かつ自分がやるべきことであると考え、日々の行動指針としました。流れるように過ぎゆく毎日の中で、立ち止まる勇気と余裕をもち、気づきを先延ばしにしないこと。自分のことで一杯一杯になることなく、この考えを常に意識の隅に置いておいたことが、ロックダウンを乗り越える一助になっていたと今は思います。

この1年間は、大学の日英会(Oxford University Japan Society)での活動にも力を入れました。日英会は、メンバーの大多数が日本に興味のある外国人で、学部生のみならず、大学院生、研究者、地域の方等、普段は交われないような人とも会うことができる場になっています。私は会長として、ロックダウンや渡航制限によって社会との繋がりが断絶され、イギリス国内外で孤独を感じている人のために何かできることはないか、他の幹部とともに模索しました。これまでは対面のみだった活動を全面オンラインに切り替え、数多くのイベントを企画運営しました。
特に好評だったのは、京都のお寺と中継した禅セッション、落語家の方を招いた英語での寄席、漫画家の方との描画レッスンでした。ケンブリッジ大学の日英会や、ロンドンやスコットランド、日本にある大学の学生と声を掛け合って共同でイベントを開催したこともありました。そういった周りの人のおかげで、当初の活動の動機だった人々の孤独感を和らげるということに留まらず、垣根を越えた人と人との繋がりを生み出すこともできました。学業と両立させながら新たな挑戦ができた日英会での活動は、強くやりがいを感じることができるものでした。


このように、大学2年の1年間は、いかに様々な制約の中で自分がやるべきこと・できることを探して実行に移せるかを試された時間でした。あっという間の1年間を振り返ると、パブリックスクールを卒業して大学に進学するときに立てた「多様性の豊かなコミュニティーにおいて自分の役割を見つけ、人と人とを繋げられるようなバランス感覚を持った人になる」という目標に少しずつ近付けているのではないかと感じます。そして、残された留学生活の時間を大切にして、これまで以上に一生懸命過ごしていきたいです。このような環境で学べることに感謝し、今後も精一杯勉学に励みたいと思います。