10月から大学2年生になり、留学生活も4年目に入りました。2020年はコロナウイルスの影響で想定外の年になりましたが、同時に多くのことを学び、そしてイギリスについてより深く知ることができたと思います。特に、感染が急拡大し1回目のロックダウンが実施された3?4月は、突然世の中が変化し、戸惑いながらも非日常的な日常に適応していった時期でした。今回は、その時期について報告したいと思います。
オックスフォード大学のほとんどの学生は冬学期が3月中旬に終わったと同時に帰省するよう大学から要請されたため、寮にはほぼ誰もいませんでした。例年、冬学期の後のイースター休暇は、夏学期の試験に備えて帰省せずに寮に残る学生が多いのですが、今年は寮にいる約300人のうち15人ほどしか残っていませんでした。そして、ロックダウンが始まると、カレッジ内でも厳しいルールが設けられるようになりました。例えば、カレッジ内にいる友達であっても交流してはいけなかったり、庭やチャペルなどが立入禁止になったり、カレッジから出入りした時間を門番さんに記録されるようになったりしました。これらのルールは、所属するカレッジによって細かな違いはあるものの、寮という特殊な環境において感染拡大を防止するための策として、法律で定められた規制に加えてより厳しく定められていました。
イースター休暇前後には4月下旬から始まる夏学期に関する発表もされました。授業はオンラインに移行することが発表され、全学部の1年目の終わりにある進級試験は中止が決定されました。
街の様子も大きく変化しました。当時の写真とともに紹介したいと思います。
買い占めと流通システムの混乱によって品切れが続いたスーパーマーケット。(2020年3月18日撮影)
小麦粉が手に入らず、少し遠くのスーパーに行った際の入場待ちの列。2mのソーシャルディスタンスを取っていないように見えると周りの人に注意されるという、イギリス的な個人主義の一面が見られました。(2020年3月26日撮影)
街中の至る所に掲げられている‘Thank you NHS workers ’のメッセージ。Key workersやessential workersにも感謝のメッセージが掲げられています。(2020年4月5日撮影)
イタリア料理のチェーンレストランにて。ロックダウンのため休業することを伝える貼り紙にもユーモアと気遣いがたっぷり。(2020年3月24日撮影)
メガネ屋さんにて。同じくロックダウンによる休業を伝えながらも‘we are here if you need a chat’ というお話好きな地元のメガネ屋さんの地域の人への気遣いが見られます。(2020年3月24日撮影)
観光客に人気の街を巡る「ゴーストツアー」も中止に。‘stay safe and be well’ といったフレーズは今でも様々な場面で(教授からのメールでも!)目にします。(2020年3月24日撮影)
このような環境で生活している中で特に気になった点がいくつかあります。
寮内で生活していると、人によって衛生意識が大きく違うことがしばしば感じられます。私自身、小学校で正しい手洗いの仕方を教わり、「手洗いうがい」はセットで無意識のうちに日常生活の一部になっていました。しかし、そのような意識の土台が無い人々には、多くの人が「外から戻ってきたら石鹸で十分に手を洗う」という意識づけから始めなければならなかったように思います。実際、ジョンソン首相は2020年2月に「国民ができる最も効果的な感染拡大予防策は、温かい水と石鹸で手を洗うことだ」と発言しています。ただ、未だにうがいの概念はほぼ無く、文化の違いなのか、科学的な解釈の違いなのか、その他なのかは一概には言えなさそうです。
そして、ジョンソン首相の端的な国民へのメッセージもとても印象的です。ロックダウンが始まる時などに、ジョンソン首相は国民に向けて短い動画を発信しました。‘You must stay at home’ ‘Protect the NHS’ といった、簡潔で記憶に残る、かつ、なぜロックダウンという規制を敷かなければならないのか、国民の役割は何なのかがわかるメッセージだったように思います。このような、事前にいつそのメッセージが発信されるのかを公表し国民は耳を傾けるという形式を見て、私はクリスマスにエリザベス女王から国民に対して発表されるメッセージを思い出しました。留学1・2年目の冬、ホストファミリーの家にいた際、クリスマスの日の午後3時になると皆でテレビを見るのが定番になっていました。
個人的にも、多くのことを学んだロックダウン期間でした。先行きが不透明な中、常時ニュースをチェックしては感染者数などのデータに振り回されるときもあり、ここまで情報リテラシーの重要さを感じたことは今まで無かったように思います。今でも歴史的な出来事の最中にいる実感はなかなか湧きません。授業がオンラインに移行したため、普段一緒に生活しているルームメイトだけでなく、掃除スタッフ、カレッジ内の工事現場の作業員、受付にいるポーターとも今まで以上に話すようになりました。互いを気遣って、心身のバランスを大切にしながら過ごすための心の余裕は常に持っていたいと強く思うようになりました
このように、様々な出来事があったイギリスでのコロナの経験は忘れられないものになったと思います。友人の家族がコロナで長期間体調を崩していたり、身近なところに神経をすり減らしながら働いている人がいたりする中、「いい経験だった」という一言でまとめてしまうのには抵抗がありますが、この経験をいつかどこかで活かしたいと思っています。これからも初心を忘れず、掲げた目標を達成するために過ごしていきます。
このような環境で学べることに感謝し、今後も精一杯勉学に励みたいと思います。