お知らせ

Nさん(University College London , Linguistics(International Programme) / Kingswood School出身)

この1年間、私はロンドンのUCLからErasmusの制度を使いイタリアのCa’Foscari大学に交換留学を行いました。その間の経験について、①学校生活 ②授業内容 ③日常生活 の観点からご報告させていただきます。

①学校生活

Ca’Foscari 大学はイタリアのヴェネツィアにあり、島内にキャンパスが点在している形になっています。私の場合はLinguisticsの学部があるキャンパスに通っていました。学校のシステムはイギリスと全く異なり、授業出席は基本的に義務ではありません。出席確認はなく、学期終わりのテストにさえ登録して合格点を取ればその授業の単位は取得できます。そのため、遠方に住んで授業には全く参加せず自宅で勉強し、テストだけ受けにくるという生徒もいました。また、テストが不合格だった場合やより良いスコアをとりたいという生徒は、3?4回テストを受け直すことも可能です。例えば、1学期のテストで不合格でも2学期や夏に再チャレンジすることができます。そのため、UCLよりもテストにリラックスして臨んでいる生徒が多い印象を受けました。また、コロナの影響もあり今年は対面とオンラインどちらでも授業の受講が可能でした。全ての授業が録画されており、テスト前にはそれらを確認することができた点が非常に良かったです。

また、Erasmusで留学中のInternational students向けのイベントが非常に多くありました。ヴェネツィアをめぐるツアーや近くの街への日帰り旅行、ビーチパーティー等多くの集まりがあり、International students同士が出会う機会が豊富です。普段の授業では周りの生徒が基本的にイタリア人しかいなかったため、こうしたイベントにて多くの留学生と交流し、友達を作ることができました。

②授業内容

この一年はこれまで同様のLinguisticsに加え、英文学、北アメリカの文化歴史、アメリカ文学、イタリア語の授業も履修しました。英文学の授業では、シェイクスピアのリア王やハムレット、ヴェニスの商人を取り扱い、初めてシェイクスピアの作品に詳しく触れることができました。特にリア王に関しては、作品と環境破壊、自然と人間の関係性、Toxic Masculinity (有害な男性性)、ロシアのウクライナ侵攻など現代社会における様々な課題との関係性という観点から分析を行い、単純な古典文学の学習では無く、シェイクスピア文学そして人間の抱える課題の普遍性について考えさせられる非常に面白い授業でした。また、北アメリカの文化歴史では主にOld Westと呼ばれる西部開拓の時代とその後に製作された西部劇映画を取り扱いました。19世紀には白人のカウボーイたちがアメリカのヒーローとして扱われ、Native Americanや黒人は言葉を持たない悪役として描かれる典型的な西部劇が主流でしたが、その後のRevisionist westernの流れは世間の潮流に沿うと同時に人々のNative Americanに対する認識を改めてさせ、その歴史を振り返り、西部開拓とは実際にはCivilizationではなくColonization であったことをアメリカ国内で人々が自覚することにつながりました。これまで世界史等はあまり学習したことがありませんでしたが、今回アメリカにおけるこれらの歴史と文化(映画、小説、広告、絵画等)の関係性とその遍歴を学び、新たな知識と観点を得ることができたと感じています。
Linguisticsの授業では主にPhoneticsを取り扱いました。UCLとは異なりエッセイの提出はほぼかったため自分で本を読んで考える機会はあまりありませんでしたが、UCLにて学んだ知識の復習やその演習等行うことができました。

③日常生活

イタリアには以前のレポートでも書いたようにアペリティーボの文化があり、夕食の前に軽い軽食とお酒を飲むことが一般的です。特に、ヴェネツィアはスピリッツというお酒とチケッティと呼ばれる軽食が有名な地であったため、お昼頃から外の席でお酒を飲んでいる現地の方や観光客の方が非常に多かったです。観光地であるためレストランでの外食の価格が比較的高いこともあり、友人同士で会うときにはアペリティーボをする事がとても多かったです。他の都市に行った際は、ヴェネツィアでよく見られるバカロと呼ばれるバーはあまりなく、チケッティもほぼ見つけることができなかったので、ヴェネツィア特有の食文化であることを実感しました。また、イタリアではエスプレッソ文化の存在も非常に大きいです。イタリアではコーヒーといえば基本的にエスプレッソを指し、カフェではエスプレッソを頼んで立ったまま飲んですぐに出るという使い方をする人が目立ちました。そのため、席が一つも用意されていないカフェも多く、カウンターに立ってコーヒーを飲んだりケーキを食べることが一般的でした。また、それらのカフェのほとんどは個人経営で、チェーンのカフェは日本やロンドンと比べると非常に少ないです。例えばスターバックスはイタリア国内に一件のみでした。

休日の過ごし方としては、イタリア国内の別の都市に出かけたり、夏にはピクニックやビーチに行くことが多かったです。ロンドンと異なり真冬以外は晴れることが多く天気が非常に良かったため、外に出かけて太陽を楽しむことができました。国内で特に印象に残った都市はナポリとトリエステです。ナポリはイタリア人の友人皆に勧められ、ナポリのピザが本物のピザだと良く言われていました。実際に、ナポリではピザが1枚5?ほどにもかかわらず生地が他とは全く異なりふわふわで美味しかったです。また、イタリア南部は治安が悪くマフィアでも有名です。特に危険な事はありませんでしたが、車の運転が非常に荒く街の雰囲気も北部とは全く異なり雑然とした印象を受けました。トリエステという街はイタリアに来るまであまり知らなかったのですが、観光客が比較的少ない北部の港町で、クロアチアやスロベニアが隣接しています。海が綺麗で海鮮も有名で、街並みや広場、お城などイタリアの他の地域とはまた異なる美しさがありました。

9月からはUCLに戻り最終学年が始まり、この1年とは全く異なる勉強のスタイルや生活環境が待っています。イタリアでの経験を糧に、また新たな気持ちで最終学年を迎えたいと思います。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。