私は2024年3月に東京都立国際高等学校国際バカロレアコースを卒業し、9月からUniversity of
Manchester のBSc Biochemistryに進学します。
同大学のBiochemistryコースは、生き物が生き物であるためには何が起こっているのかという、
化学を用いて生物的働きを読みとく(chemistry behind biological processes)ことを目標としてい
ます。また、Manchesterという街は産業革命の中心地の一つでもあったように、研究機関たる大
学と企業が強く結びついています。特に、同大学では学生が在学中に”Industrial and
Professional Experience”を体験できるプログラムを一部のコースに設置しており、アストラゼネ
カやファイザーといった企業の一員として活動できるそうです。
まだ大学は実際に始まってはいないので大学案内やウェブページ、ウェビナーから見ただけの
感想なのですが、9月から大学が始まるのがとても楽しみです。
ちなみにですが、本来日本の高等学校から英国の大学に進学する場合、Foundation yearと呼
ばれる1年の準備期間を経てからではないと受験できません。しかし、私はInternational
Baccalaureate (国際バカロレア、通称IB) のディプロマを2023年11月に取得したため、直接大学
の学部へと進学することを認められました。
Tazaki財団を通じて得た気づき、学びは色々とあるのですが、今回はその中でも「環境」について
話させていただければと思います。
私は2014年4月から2021年3月まで英国に滞在し現地校に通っていました。それまで日本のどこ
にでもあるような普通の公立小学校に通っていた私は、いきなり英語オンリーの環境に放り込ま
れ、とても困惑しました。
最初は他の子達の輪に入れず辛い日々を過ごしましたが、バイオリンの取り出し授業を始めた
日から全てが変わりました。
日本で通っていた小学校では、まだ低学年だったこともあり音楽に関するスキルが活かされるこ
とはなかったのですが、私が転入した小学校では、所謂”invitation only”、選抜された人のみ所属
できる特別なオーケストラに参加することを認められるほど評価されたのです。そのような集団に
所属するとなるとやはり周りの見る目が変わり、置かれていた環境が少し過ごしやすいものに変
わりました。
その後も、バイオリンのおかげで別の現地校で奨学生として選ばれたり、王立音楽大学のジュニ
ア部門に選抜されることに繋がりました。
当時の自分を振り返れば、私は己の強みに気付いたことで、より自分が輝ける環境を見つけるこ
とができたのだなと感じます。
日本に帰国した際、今度は逆に日本の高校という環境にカルチャーギャップを覚えました。帰国
子女が回りに多い環境ではあったのですが、それでも何かお互い「カチッ」とはまる感覚がない、
と感じていました。
高校という環境に寂しさを感じる中でTazaki財団の選考を受け、第6期語学研修生として選抜さ
れました。
今まで育ってきた環境、今通っている学校、そして言語レベルの全てが十人十色でしたが、ブリ
ティッシュ・カウンシルでのレッスンに通う度、ユニークな仲間と会えることが楽しみの一つとなっ
ていきました。
何と言っても同じ目標を持った仲間と切磋琢磨する日々は非常に楽しく、特にIELTSの合宿が終
わった最終日に、皆で飯田橋駅にあるGODIVAでチョコレートドリンクを飲んだことが今でも忘れ
られません。あの日は豪雨で気温も冷え込んでいて、しかも夜遅くまで合宿をやっていたこともあ
り全員疲労困憊でした。それでも、ドリンクを片手にくだらない話で笑い合ったことは、今でも鮮明
に思い出せます。
Tazaki財団を通して出会った皆は、選考が終わった後、渡英してしまった後も、連絡を取り合い
悩み事があれば時差を超えて相談をし合うことができるほどの貴重な友人です。
もちろん人が成長するのに必要なのは環境だけではありません。しかし、Tazaki財団で出会えた
刺激的な友人たちのおかげで、それまではぼんやりとしていた将来の夢を見つけ出し、そのため
に必要な英国大学進学という目標を達成することができました。
最近よく話題に上がる話ではありますが、円安が加速する中、留学に必要な資金は年々増して
います。そのような中で、今回金銭面での支援をいただいたTazaki財団の皆様にお礼申し上げ
ます。同時に、普通に高校生活を送っていたら出会えなかっただろう最高の友人たちと出会う機
会をいただけたことに、心より感謝申し上げます。
3年ぶりに戻る英国という環境がどのように変わっているかはまだ未知数ですが、将来的にこの
学びを日本社会に活かすため、躊躇せず、あらゆる挑戦に挑んで行きたいと思います。