私は日本の高校を卒業後にイギリス・キングスカレッジロンドンのファンデーションコースに入学し、国際関係学と政治学を中心に勉強しました。そして、今年秋から同大学にて歴史学と政治経済学を専攻しています。
Tazaki財団奨学生への出願前から国際問題や海外の文化に興味を持ち、「日本の外に出てみたい」という漠然とした気持ちばかりが高まっていた私にとって、財団の語学研修生としてのご支援は英国留学が私に何をもたらすことができるのかについてもう一度深く考えるきっかけとなりました。三年間の高校生活の中で、模擬国連に参加したり、興味分野のひとつであった開発とジェンダーの問題について自主研究を進めたりしました。これらの活動で大量の文献を読み込み、自分なりの考察をたてたことにより、TOPSを通じて知った、英国大の文系の生徒がリーディングに多くの時間をかけるということの意義を学びました。国際問題をどのように解決できるのか深く考えたことにより、様々な立場や価値観の違いの複雑さを実感し、英国の多様性や英国大の国際的な環境での学習が、将来そのような問題の解決に貢献したいと考えている私にとって有益であると確信しました。また、学校での英字新聞作成の経験を通じて、英語で発信するということは世界の人々に発信できるという現状があることから、高度な英語の取得は重要であることを改めて痛感しました。
私はまだ約1年間しか英国で勉強していません。しかし現地での生活や学習環境は、先に申し上げた以上に既に私の視野や考え方に大きく変化をもたらしたと感じています。私が在籍したファンデーションコースでは大学の寮で学部生と同様に生活します。また、授業も大学の構内で行われます。寮での生活や授業のセミナーで様々な「違い」に直面したことによって、自分の「当たり前」を見直すきっかけとなり、自分の育った環境では知ることができなかった問題や他の人の「当たり前」に気づきました。そして、そのような社会問題は、普段同じ社会的グループにいる人々としか交流がないために問題に苦しんでいる人への共感が生まれず、構造的に問題が再生産されるのではないかと考えました。そのため、この社会構造ができてしまう原因を探るべく大学では“歴史と政治経済”のコースに進路を決めました。
さて、私は昨年から日英学生会議に参加しています。この会議は、日英の学生が隔年で日本と英国で開催し、議論・交流を行うことを目的として設立されました。昨夏は日本の広島で開催し、戦争と平和、核兵器問題について、今夏は残念ながらオンラインでの開催となりましたが気候変動について、様々な角度から共に学び議論を深めました。なお、来年の夏はロンドンでの開催が予定されています。こういった大学外の活動にも参加することで交流を広げつつこれからも広い視野で世界の問題を考え、発信していこうと考えています。
日本の高校から英国大・海外大に進学することは決して簡単なことではありません。まだ情報が少なく、金銭的なハードルも非常に高いです。実際に、私の大学の留学生は世界でも富裕層出身の生徒が多く、大学の「多様性」の実態に疑問点を感じることもありました。それでも、英国に留学することを許してくれた私の環境や奨学金を得る機会にはとても感謝しています。私はこの恵まれた機会を無駄にすることの無いよう、これからの学部生としての三年間、「読んで」「考えて」「発信して」充実した学びの生活を送る決意です。