
Tazaki財団に応募することを考えてから、約10か月。このレポートを書いている今、駆け抜けるように早かったと感じる。
僕は幼稚園の年長から小学3年生の2学期まで、インドで過ごした。異なる国籍の友人たちと日々を共にしていたはずだが、その記憶は今ではおぼろげで、多くを忘れてしまっている。帰国後、中学に進学してからは、好きなことにだけ没頭する反面、それ以外は何となくこなすだけの、どこか生ぬるさを感じる日々を送っていた。今思えば、それは自分の中に「軸」と呼べるものがまだ何もなかったからだと思う。それでも中学時代から、いつか海外に出るのだろうという予感だけは、何の根拠もなく持っていた。大学に進学し学ぶべきものを決めてから行くのだろう、そんな風に、ぼんやりと未来を思い描いていた。
その予感は、思いがけない形で早く実現することになる。高校の途中で学校を辞め、イギリスに渡る。自分自身、今でも驚くほどの決断だった。将来について真剣に考えるようになり、興味あることを深く学びたいと思い始めてからは、大変でありながらも心躍る日々が続いた。もし応募を迷っている人がいれば、説明会の前でも後でもかまわないので、まず志望理由書を書いてみることを勧めたい。学校の授業や先生方の影響で、気づけば「イギリスに行く」と決めていた自分だったが、「なぜイギリスなのか」を深く考えたことは、実はなかった。
理由を掘り下げていくと、中学3年生のときに課題として書いた探究論文に、自分の核があることに気づいた。そこから今日までの時間は、とても早く、そしてかけがえのないものだった。興味の赴くままにある程度は行動してきたつもりだったが、その過程を丁寧に考えることを自分はしてこなかった。志望理由書を作成するという作業は、自らを深く考え、未来へ一歩踏み出す後押しとなった。
振り返れば、通っていた学校では考えや行動、受験勉強を押し付けられることは一度もなかった。どの科目の先生も、自分の学問を心から好きだということが伝わる授業をしてくれた。先生の好きな学問と自分の好きな学問が、必ずしも一致するわけではない。それでも、好きなものを情熱をもって語ってくれる環境に身を置いていたからこそ、自分も何かを深く学びたいと思えるようになったのだと思う。イギリスでは早い段階から専門的な学びが始まる。自分には確固たる軸がなかったが、中学時代から日本で積み重ねてきた学びがあったからこそ、「ここをもっと深めたい」という気づきを得ることができた。それが、自分にとってまさにこのタイミングだったのだと思う。そして面接で言われた「もっと尖りなさい」という言葉は、自分にとって大切な指針となった。
僕は本場のイギリスで国際政治の政策立案に関する事や経済を学びたいと考えている。どの角度からそこを深めるかはこれから現地での学びを通して考えていく予定だ。筆者の考えの理解などのインプットは狭い一方で、発表やスピーチなどのアウトプットは個人の自由であり、大方が同一民族である日本の中では、インプットが狭く集団が得意であるゆえに、アウトプットの方向性が外れることは少ない。
しかし、文化や「当たり前」の違う多種多様な民族が共に生きる世界では、逆にインプットの段階から個が限りなく尊重される。その環境では、多様なアウトプットをまとめて調整する能力と、大元の学びが重要になってくるのではないかと考えている。コミュニケーションは相手と完全に分かり合えることではなく、共有部分を広げていく過程だと考えているからだ。
こうして振り返りながら書いていると後悔もある。インドから帰国した後、英語の学習をやめ、当時楽しいと感じていた受験勉強に専念してしまった時期がある。他にも、たわいのないことに時間を費やしてしまったこともあった。今思えば、自分が流れに身を任せていた時間は、人生における「休み」のようなもので、チャンスを取り逃がしていた可能性もあると感じる。だからこそ、今回頂いたこの機会だけは、逃さないと決めている。自分の軸をしっかりと持ち、ある意味「尖って」いきたい。
出会った10期生の仲間は、尊敬できる人ばかりだ。友人、先生、そして財団で出会った仲間、自分のまわりには、尊敬できる人がたくさんいる。そうした人たちから影響を受けるのは自然なことだ。しかし、影響を受けてただ染まってしまえば、財団が輩出しようとしている(そして自分自身もそうありたいと願う)「真のグローバルリーダー」には、決してなれない。そう感じている。
これから数か月おきに提出するレポートの中で、自分が確かに成長していると信じられるよう、Tazaki財団の皆様、支えてくださった事務局の方々、授業をしてくださった多くの先生方、いつも笑い合える友人たち、どんなときも味方でいてくれた両親、皆さんへの感謝を忘れず、貪欲に学び続けたい。
これからもよろしくお願いいたします。
---
最後に、選考について少し触れておきたい。
英語力について、説明会でIELTSスコアに関する質問が出ることがあるかもしれない。高校1年生まできちんと英語の授業を受けていれば、それほど気にする必要はない。書類選考と一次面接を通過して語学研修生に選ばれれば、最終面接までの間、毎週授業を受講できる機会に加え、毎日の集中特訓を受ける機会も与えられる(もっと自習しておけばよかったとは思うが。。。)
説明会の参加人数はホームページに記載されているので、そちらを参考にしてほしい(説明会に参加できなくても応募は可能で、実際にそうした先輩もいる)。書類選考と面接を経て約30名の語学研修生が決まり、そこから奨学候補生に選ばれるまでの約5か月間に、授業とIELTS試験、そして2回の面接がある。面接では、志望理由をあらためて確認し、ありのままの思いを伝えることが大切だと感じている。学業成績は、学ぶ力の証明として求められているように感じた。