
“Life for me, ain’t been no crystal stair. Well, life, for none of us, has been a crystal stair, but we must keep moving, we must keep going!”
—Martin Luther King Jr.
1967年10月26日、キング牧師はフィラデルフィアの中学生たちを前に、“What Is Your Life’s Blueprint?(あなたの人生設計図は何か?)”という問いを投げかけました。冒頭の言葉は、これから人生を歩んでいく若者たちに向けて、「人生の設計図(Life’s Blueprint)」を持つことの大切さを説いたそのスピーチの一節です。
このスピーチと出会った去年の冬、ちょうど文理選択やTazaki財団の応募期限が迫っていて、この問いに対する答えが自分の中で見つからず、焦りを感じたのを覚えています。ただ、改めてこのスピーチを聞いてみて、キング牧師が若者たちに求めていた「設計図」は、将来の職業を今すぐ一つに決めることではないと気づきました。
彼は、自分自身の価値を信じること、そして自分が進む道を見つけたなら、その分野で卓越することを目指すことの大切さを語っています。さらに、若者たちの前には「機会の扉」が開いていること、そしてその扉をくぐれるよう準備しておかなければならないことを呼びかけています。
このスピーチを聞いて、将来の夢がまだ決まっていないからといって、立ち止まっていてはいけないと思うようになりました。むしろ、本当にやりたいことが見つかってから動き始めるのでは遅く、その前に一歩踏み出しておこうと考え、Tazaki財団に応募することを決めました。
一次面接後からは、研修を通して、自分よりはるかに明確な目標を持ち、それに向かって努力している仲間にたくさん出会いました。そこで自分の夢が漠然としていることや周囲の志の高さを痛感しました。
一番心に残っているのは、毎週土曜日の語学研修の帰り道です。家の近い友達たちと電車の中で、大学のこと、将来やりたいこと、社会にどう関わりたいかなどをたくさん話しました。1人になった後は、自分の夢について考え直し、スマホのメモに色々書き残していたことも思い出です。そうした時間を重ねる中で、僕の中でも少しずつ、「自分は何をしたいのか」ということを言葉にできるようになってきました。
僕の将来の夢は、人々がAIを正しく使って、平和に暮らせる社会を創ることです。
近年、生成AIをはじめとする技術は急速に進化し、医療や教育などで大きな恩恵をもたらす一方、偽情報や著作権、AIの兵器利用などの深刻な問題も多く生んでいます。実際に、各国政府や国際機関がAIのルールづくりを急いでいることからも、急速な技術の進歩に社会制度の整備が追いついていない面があると感じます。だからこそ、AIを開発できるだけでなく、その使い方や、AIとより良く共存できる社会につながる政策を考え、それを社会に伝えられる人となりたいと思っています。そのためにイギリスでは、物理や数学などの理系科目だけでなく、倫理や哲学についてもたくさん学んでいきたいです。
言葉も文化も違う環境で生活していくこれからの5年間では、きっとたくさんの壁にぶつかると思います。キング牧師がこの言葉を語った背景には、当時のアメリカ社会における人種差別や大きな社会的困難があり、僕がこれから経験することとはその性質も重さも異なります。それでも、僕にとっては、自分の力で乗り越えなければいけないかつてない困難なはずです。逃げずにひとつひとつに向き合い、時には悩み、考えながら成長していきたいです。
そして、このような素晴らしい機会は、決して自分一人の力で得られたものではありません。特に、Tazaki財団への応募をきっかけに多くの仲間や考え方に出会えたからこそ、今の自分の夢を見つけることができたのだと思っています。常に僕の「やりたい」を全力で応援してくれた家族、惜しみながらも笑顔で送り出してくれた友人や聖光学院の先生方、そして日々手厚く支えてくださっている田崎さんをはじめとするTazaki財団の皆様に、心から感謝しています。
最後に、冒頭に掲げたスピーチの続きを、これから留学する自分への出発前メッセージとしておきたいと思います。
“If you can’t fly, run.
If you can’t run, walk.
If you can’t walk, crawl,
but by all means, keep moving!”