お知らせ

Tさん(女生徒) 区立九段中等教育学校出身

スコットランドで約一ヶ月を過ごしたのち南に戻り、ここは日本かと疑うような灼熱地獄に日々苦しめられています。St Andrewsの海の、目が覚めるような冷たさがすでに恋しいです。

サマータームは試験や数多のイベントに追われ、あっという間に過ぎ去りました。Termの終わりから八月にかけ、財団からのご支援もあり学びの機会に恵まれ忙しくしていたので、遂にホストファミリーの家に戻った現在、foot pathを一日中歩き回る自由な生活を謳歌しています。

今タームの初めは、冬から練習に参加していたTen tors 45mile challengeに参加しました。私はウォーキング中にチームの一員として振る舞うのが苦手で、練習では無意識にスピードを上げてチームメンバーを引き離してしまい、メンバーを待つよう先生に注意されることが多々ありました。チームの一員として歩くのに向いていない自覚があった私を、「他のどのメンバーよりも速く長く歩き続けられる」と評価してメンバーに選んでくださったことには本当に感謝しています。メンバー選考後に行われた2度の現地練習の目的は、本番に向けてチームに慣れるというものだったこともあり、メンバーと積極的にコミュニケーションをとるように努めました。皆泥だらけで疲弊し、息を切らしつつも英国王室や政権について数時間にわたる白熱した議論を交わしたことは、Ten Tors本番よりも印象に残る思い出となっています。また、大英帝国時代の植民地化や、それに関する歴史教育の内容、人種差別などについて、学校生活では聞く機会のなかった踏み込んだ質問を通学生に投げかけ、率直な意見を聞くことができたことは、自分自身の理解を深める(好奇心を満たす、といった方が近いかもしれません)貴重な機会となりました。とにかく、一連の会話で一番はっきりと分かったのは、彼らは「Our Great Britain!」といった感じで母国に対して強い誇りと愛着を持っていることです。

一年前、刺激的で新しい世界へ行きたいと日本を飛び出してから、Kingswoodの中だけでない英国を知る、ということを個人的なテーマとしてきました。英国の私立高校は、日本の学校に比べれば人種や文化の多様性は見られる一方、「一般的な」英国社会からは隔絶された、閉じられたコミュニティであることは紛れもない事実です。Prestigiousなボーディングスクールで寮生活を送り、A-levelの勉強をして過ごすことは、もちろん私の留学生活において最も重要なものであることに違いはありませんが、それは英国のほんの一面を見ているに過ぎません。私の場合、この一年間で自身の思考をより広げるきっかけとなったのは、北から南、また子育て世代から祖母と同年代の方まで9家庭でのホームステイと課外活動によって得た、人との関わりであったように感じます。難民支援団体で関わった亡命希望者やその問題に立ち向かう人との対話。頻繁に再生を一時停止しホストファミリーと意見交換をしながら見た、階級社会や国民の価値観をよく反映しているドキュメンタリー番組。ホームステイ先で友達になった隣の家の子と毎日サイクリングに出かけ、暗くなるまで話したこと。また、くだらないことですが、小さな村でお年寄りが集まるビンゴ大会に参加し、住民同士の噂があっという間に広まり、世間体を気にしながら暮らす田舎特有の日常を垣間見たことなども、こんなところにも日本と似た英国が存在するのだと少し面白く感じ、妙に印象に残っています。

Kingswoodと既存のコミュニティに閉じこもるだけでは得ることのできなかった出会いや経験は、私がこの国の全体像をほんの少しずつでも理解するための非常に貴重な手掛かりになっているように感じます。留学とは外国に一定期間住むことではなく、その国をどこまで一つのイメージで理解することをやめられるか、ということなのかもしれません。

この一年を通して得た、日本にいた頃には想像もできなかった刺激的な経験や学び、そしてバッググラウンドを共有しない人々との出会いは、田崎理事長をはじめとする財団の皆様のご支援があって実現したものです。このような貴重な機会をいただけたことに、改めて感謝申し上げます。

後三週間ほどで秋タームが始まり、Kingswoodでの最後の一年が始まります。現在イングランドを覆うこの暑さを、少しでも暗く長い冬のために取っておきたい、という思いが募りますが、気持ちを新たに、自分が恵まれた環境にいるということを常に心に留めて精進したいと考えます。