
夜の9時過ぎだというのに、外はまだぼんやりと明るく不思議な感覚に包まれます。約半年にわたる冬が終わり、イギリスにも春がやってきました。私は霧が幻想的なイギリスの冬も好きですが、夕方でも散歩に行けるこの季節がお気に入りになりました。
今タームのハイライトはイースター休暇中に行った、難民支援団体での職場体験でしょうか。均質化された都心の学校で学び、英国トップレベルに裕福な街であるBathの私立学校に転校した私にとって、難民問題というのはこれまで全く縁のないものでした。故に、A-level地理でGlobal Migrationを学んでからは、自分を包む排他的な’bubble’を破り、教科書だけでなく直接自分の目で現実を知りたいと強く感じるようになりました。
私の職場体験先は、Essex州Colchesterの、南アフリカ出身の女性が経営されている職業訓練を目的としたチャリティーです。ColchesterはCity of Sanctuaryに登録されており、ウクライナ避難民を含めアフリカ、中東、アジアなど世界中からやってきた難民申請者(Asylum seeker)を保護しています。彼女のチャリティーでは、政府の審査を経て難民(Refugee)であると認定された人々の雇用のための木工やパン作りといった職業訓練に加え、難民の子供達に向けた料理教室といった居場所づくりを行なっています。初日には、「Women‘s Baking Course」の初回セッションである小さな農場とパン工場への見学へついて行きました。イラク、スリランカ、シリア、ガーナ等からやってきた難民女性たちと、小麦がどのように育てられ、挽かれ粉となるのか、などを実際に見て学びました。女性の中には英語をほとんど話せない方もいました。幼い子供を持つ彼らにとって英国で職を得ることは難しく、そして何より自分が母国で持っていたスキルが現在の環境では活かせないという状況は耐え難く辛いでしょう。そんな彼女たちが、パンという共通の主食を通し、母国ではこうやって発酵させる、こうやって成形するなどと嬉しそうに語り、また「毎日作っているから」とプロ顔負けの手捌きでパン生地を伸ばしていました。パン作りというスキルを手に入れることも重要ですが、彼らがその過程を通して交流し、居場所を見つけ、そして自信を育むということが、彼女らが英国で職を見つけ生活基盤を築いていく上で最も大切なことであると感じました。
また、彼女のチャリティーが密接な関係にあるRAMA Colchester(Refugee and Migrant Action)という団体を訪れた際には、4年間refugee statusを手に入れることができず、上訴を続けるコンゴ人男性とのミーティングに参加しました。彼はすでにCouncil House(自治体が補助している仮の住居)からの退去命令が出ており、ホームレス状態。難民認定を受けていないため就職もできず、英語も話せない。泊めてくれるような教会にも通っていなければ、友達もいない。まさに人生が行き詰まり絶望する彼を目の当たりにし、難民問題の現実に衝撃を受けました。一方で、難民のためのホテル、住居、月々の支援金を賄うTax Payerである国民たちにとって彼らは、労働力にならない限り邪魔者でしかないのです。なぜ彼は4年間安全な住居を提供されたにもかかわらず友達を作る努力をしなかったのか、なぜコミュニティに馴染もうという努力をしなかったのか、何よりなぜいまだに英語がほとんど話せないのか、など、私の周囲の大人の意見は批判的でした。ただ、そのようなことが彼らにとって極めて困難であることもまた事実です。
5日間という短い期間ではあったものの、難民の方々と交流したり、彼らのほとんどが暮らす貧困エリアを訪れたりと、今までとは180°異なる世界に身を浸し、私立学校とそのコミュニティ以外のほとんどを占める「現実の英国」を直視することができたのではないかと思います。多くの問いを得ることができた、充実した職場体験となりました。
学校生活について言えば、さらに友達や顔見知りが増えたように感じています。寮の友人や同じ授業をとる友人に限らず、つい先日のTen Tors training Walkでは、2泊3日を共にしたチームメイトと仲を深める事ができました。すでに4度の練習が行われたのですが、今まで関わりがなかった人と仲良くなることができ、非常に良い経験であったように思います。
最後になりますが、田崎理事長をはじめとする財団の皆様、そして家族に感謝の念を申し上げます。今後も、自身の置かれている環境にとどまることなく、その外へとつながりや知見、思考を広げていけるよう精進します。