
2025年も残り僅かとなりましたが、一月に財団に願書を提出してから今日まで、これまでの人生の中で最も密度が濃く、最も変化に満ちた一年だったと思います。渡英した八月時点のことを振り返ると、まだ知らないこと・見えていない世界だらけで、まるでとても遠い昔のように思えますが、思い出しつつこの四か月間を振り返ってみたいと思います。
人間の聴力というものは、実に不思議な適応を見せるものだと感じています。渡英当初は先生方のお話がほとんど聞き取れず、理解できるのはせいぜい二割という有様でした。あまりにも分からず、かえって清々しさすら覚えました。しかし今ではどの先生のお話であっても、少なくとも七割方は解せるようになってきました。まだ苦労する場面もありますが、ようやく心に少しゆとりが生まれてきたところです。
寮では二人部屋で過ごしています。ルームメイトとは、夜一緒に勉強したり、朝起こしあったりと助け合っています。独りで静かに部屋にこもると、気が滅入ったり時間感覚を失いがちな私にとって、廊下に出ればすぐに誰かの顔が見えるこの寮暮らしというものが案外自分の性に合っているという発見も、この四ヶ月の大きな収穫だと思います。
A-levelでは、Math、Further Math、Physics、Chemistryの四科目を履修しています。数学の授業を通して日本の数学教育がいかに優れたものであったかを実感しています。一方で、私の当面の課題は、物理や化学において記述問題の処理速度を高めることです。読むことにも書くことにもまだ多くの時間を要するため、今後はより意識的にアウトプットの機会を増やしていく必要があると感じています。そのような中で、地域のInternational students向けのスピーチ大会で優勝できたことは、大きな励みとなりました。
理系科目における女子の少なさには驚きました。物理のクラスでは十六人中、女子が私一人しかおらず、私の日本の高校では男女比がほぼ半々だったので、大きなカルチャーショックを覚えました。日本はジェンダーギャップ指数が先進国の中で低いという印象を持っていただけに、英国においてもこうした傾向がみられることに意外性を感じました。
放課後のアクティビティは、ChoirやMUN(Model United Nations)、F1 in schools に参加しています。F1 in schoolsは、五人前後のチームでF1のミニカーを設計・制作し、競い合う競技です。非常に自由度が高く、大会ではマシンの速さのみならず、環境への配慮やスポンサーシップ契約、広報活動の工夫など、多角的な観点から採点される奥深さがあります。初めての大会を終えてようやく全体像が見えてきましたが、チームメンバーそれぞれの経験値や能力が結果に大きく影響すると感じました。私たちのチームは速さの部門で地域三位に入ることができましたが、それ以外の面ではまだ課題も多かったので、また次の大会に向けて準備を進めていきたいです。Choirでは、クリスマスにBath Abbeyで歌うという貴重な機会に恵まれました。またその様子がYoutube配信されたことで、日本にいる家族もリアルタイムで視聴することができ、とても喜んでくれました。
学校の食事については、野菜が少ないと感じることがありますが、果物をいつでも自由に食べられる点はとても嬉しいです。またMusic schoolが常に解放されており、放課後にピアノを弾きに行くことができる環境もとても有り難いです。11月に行われたCharity ConcertではMさんのバイオリンとデュオで演奏する機会をいただき、非常に楽しい時間を過ごすことができました。
これまでに三つのホストファミリーに滞在しましたが、いずれのご家庭でも大変温かく迎えてくださいました。休暇のたびにバース、マームズベリー、ブライトンと異なる都市を訪れたおかげで、イギリスの様々な地方を見ることができ、とても興味深いです。また、休日にはストーンヘンジやコッツウォルズ、ウェールズの古城などに連れて行ってくださったり、イギリスの伝統料理を教えてくださったりと、多くの貴重な経験をさせていただいています。正直なところ渡英前はイギリス料理に少し不安を抱いていたのですが、どのご家庭でも食事が本当に美味しくて、日々感動しています。「イギリス料理が美味しくないというのは、フランス人が広めたイメージのせいよ」とホストマザーが冗談交じりに仰っていましたが、あながち間違いではないのかもしれないと感じています。また、文化の違いを実感した出来事のひとつとして、感謝の気持ちとして習字を書いてお渡ししたところ、大変喜んでくださり、ホストファザーが「これをタトゥーにしたい」と仰ってくださったときには、そのお気持ちが嬉しかった一方で、思いがけない言葉に責任の重さを感じて慌ててしまいました。
長くなりましたが、こうして日々多くの貴重な経験を積むことができているのも、田崎様をはじめ、財団の皆さまの温かいご支援があってこそだと改めて感謝申し上げます。また、日々支えてくれている家族や友人への感謝の気持ちも忘れずに、来年も気を引き締めて過ごしていきたいです。