舟が寄り添ったときだけ桟橋は橋だから君、今しかないよ
千種創一 歌集『砂丘律 』より。
この短歌に出会ったのは、高校1年生の冬、英国留学に応募するかどうかを検討している時期でした。大好きな学校、信頼できる友人、そして家族を離れて、ひとり見知らぬ土地へ飛び込むことは、とてつもなく大きな挑戦に思えました。言葉の壁、文化の違い、将来への不安…立ち止まる理由はいくつもありました。それでも「今」という時間の重みと、行動の先にしか見えない景色があるということを、この短歌に改めて教えられた気がしました。高校生として英国へ留学する「この機会」が、まさに「今しかない」巡りあわせであり、それは自ら櫂を漕ぎ出すことでしか寄ることのできない岸辺なのだと感じたのです。
私は物理学が好きです。それは世界のすべてに筋道を与え、あたかも私たちの歩みを照らす灯台のように、この世界のありとあらゆる現象を理論と数式で照らし出してくれるからです。 その物理学に人生を捧げたニュートンやペンローズ、ディラック、そしてホーキング。彼らが学び、思索を深めた英国で、自分もまた学べるのだと思うと、胸の奥が熱くなります。人生という限られた時間の中で、できる限り多くのことを学び、私もいつか研究者として科学の世界を押し広げ、貢献できるような研究をしたいです。
まさか自分がこのような貴重な機会を与えていただけるなんて、いまだ信じがたく、毎朝目が覚めては、ああ、夢ではなかった、本当に英国に行けるのだと、喜びが静かに込み上げてきます (実は、一回目のVISA申請に失敗して、渡航直前まで本当に多くの方に助けていただきました。この場をお借りして心より感謝申し上げます)。また、田崎様を初めとしTazaki財団の皆様には感謝してもしきれぬ思いです。この感謝の気持ちを、言葉だけでなく行動で、結果で、そして未来で示していけるように、経験することすべてを糧にし、毎日を大切に歩んでいきたいです。 今、未知の世界の前に立って、その大きさに実感がわいてくるにつれ、不安な気持ちも確かに生じています。しかしだからこそ、未来という岸辺を目指して、この海を渡ってみたいと思います。最後に、これから幾度となく岐路に立つであろう自分に、そして今迷っている誰かに。
舟が寄り添ったときだけ桟橋は橋だから君、今しかないよ。