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Fさん(女生徒) 国立筑波大学附属高等学校出身

 イギリスに来てから4ヶ月が経ちました。もうそんなに経ったのかと思う反面、これまでの経験が全て4ヶ月という短い期間で起きたことだとは到底信じられません。本当にたくさんの「初めて」に出会い、このレポートを書くのが待ち遠しく感じられたほどです。
 何から始めれば良いのか迷うところではあるのですが、やはりイギリスに降り立った日のことから書こうと思います。海外で暮らした事がなく、そもそも海外を訪れることすら久しぶりだった私にとって、イギリスへ行くことはどこか旅行のような高揚感を伴っていました。そんな私の足を地につけたのは、長時間のフライトを乗り越えた先に広がっていた景色でした。目や耳に入ってくる言葉、空港内のポスターの色遣い、ホストファミリーの家へ向かう道中の景色。私がこれまで慣れ親しんできたものとは何もかもが異なっていました。自分はこれからの5年間をここで生きていくんだと、改めて、そしてより明確に、不安と期待と覚悟と、様々な感情を抱きました。あの日感じたことを忘れる日は、きっとこの先来ないだろうと思います。
 その後の数日はホストファミリーと過ごし、いよいよ学校へ向かいました。右も左も分からず、英語で質問することにすら手間取っていた私を、House Captain、House Parent、 International representative、 matron(寮での生活を手助けしてくれるスタッフさん)と、本当にたくさんの人たちが助けてくれました。そして、私の拙い英語にも耳を傾けて、一緒に時間を過ごしてくれる友達にも出会う事ができました。そのおかげもあって、特に問題なく寮生活に馴染んでいく事ができたと思います。まだまだ話に置いていかれそうになることも、自分の気持ちを表現できず、もどかしい思いをすることもありますが、少しずつ成長していきます。次の学期では寮内の最高学年として、支えてもらった分を寮内に還元していく事が目標です。
 スポーツ面では友達を作りたいという一心で、メインスポーツであったホッケーに挑戦しました。全く触れたことのないスポーツに苦戦することも多くありましたが、学期の最後の方にはチームの一員として試合に貢献する事ができるまでに成長できました。これも全て、手取り足取り教えてくれた友人、先生方のおかげです。ホッケーを通じて他学年の友人も作る事ができ、良い選択をしたなと思うばかりです。次の学期でも週に2回ホッケーを続けることにしました。新たな友達作り、そして技術の向上を目指して励んでいきます。
 音楽面ではトロンボーンのレッスンを受けることにしました。地元の小学校のカリキュラムの一環でマーチングバンドとして少し経験があったとはいえ、約5年が経過しており、ほとんど初めてのような感覚で練習を始めました。なんとなく覚えていたスライドのポジションの再確認から、ポジションと音階の結びつけ方、楽譜の読み方など、その他の楽器経験が全くなかった私にとっては複雑なことばかりでした。ただ、音楽好きな友人たちに感化され、Half term(学期の真ん中にある1.2週間の休み)以降は暇さえあればMusic Schoolに行って練習をするというような生活を過ごしていました。その甲斐もあって、11月末にマーチングバンドに加入する事ができました。ここまで早く事が進むとは思ってもいなかったので、バンドに入れると分かった時には、驚きとそして何より喜びが込み上げてきました。学期末にはクリスマスマーチも吹く事ができ、とても楽しい時間を過ごしています。
 この段階でかなり長いレポートになってしまっていることは承知しているのですが、あと2つだけ書いておきたい事があります。1つ目はクリスマスフェアのことです。色々あった後、本番の約1週間前にEast Asian Societyのブースの責任者を担当することになりました。日本で副生徒会長としての経験があった私は、なんとなく上手くいくだろうと思い込んでいた部分もあったのですが、実際には難しいことばかりでした。材料が注文できておらず前日に買い出しに行ったり、当日は上手くリーダーシップをとることができず結局他の人任せになってしまったり、やろうとしていることは同じでも場所が変わればそれがどれほど異なる経験になるのか、そしてどれほど難しくなるのか、改めて痛感しました。ただ、挑戦したからこそ、その気づきを得る事ができました。この4ヶ月間、ただ日常についていくのに必死で自らの目標を忘れそうになる時もありましたが、新たな世界に飛び込み、新たな知見を得るという心構えを思い出させてくれた行事でした。
 2つ目はアクティビティとして参加しているModern Language Film Clubでのことです。私は言語に関心があることから参加しているのですが、このクラブは海外の映画作品を元の言語で鑑賞するというもので、たまたま「もののけ姫」を見る機会に恵まれました。特に私が興味深いと感じたのは、日本語のセリフと英語の字幕の差です。翻訳学という学問まで存在することを踏まえれば当たり前ではあるのですが、やはり言語によってより詳細に富んでいる語彙の内容は異なってきます。例を挙げるとすれば、映画の中で「祟り」が「demon」と訳されていたことです。言葉の不思議に気づくのは子供かノンネイティブだとはよく言いますが、それに似たような経験がイギリスで日本語に触れたことでできたのかなと思います。この経験を学問的な観点から楽しむと同時に、自分が日本語を手段としてではなく、言葉として楽しんでいたのだなということにも気づきました。demon(悪魔)でも意味は通じますが、そこを祟りと言うことで人の営みと自然 とのつながりを暗に感じる事ができます。ただ、おそらく英語で同じようなニュアンスの違いを楽しめと言われても、今の私にはまだ難しい事だと思います。いつか英語を言葉として楽しめるようになりたい、という新しい目標ができた体験でした。
 今はホストファミリーの家で初めての長期休暇を満喫しているところです。本当に暖かく家族の一員として迎えてもらい、休暇のたびに楽しい時間を送っています。まだ12月中旬なのですが、クリスマスに向けてもたくさんの予定を考えてくれていて、今から一緒に過ごす1ヶ月が楽しみです。
 他にも書きたいことはたくさんあるのですが、そろそろ終わりにしたいと思います。書く事が尽きないほど濃密で、貴重な時間を支えてくださっている田崎さん、財団の皆様、本当にありがとうございます。
 今でも時折、自分がイギリスで本当に暮らしているのだということが信じられず、イギリスらしい風景を見つめてはしみじみ感じる事があります。トロンボーンのレッスンを受けて、大雨の中ホッケーをして、雨上がりの虹を見た時ほど、イギリスを感じた日はありません。日本にいたら、この景色を見ることは決してなかったでしょう。日常の「初めて」を大切に、そして一歩を踏み出して得られる「初めて」を大切に、次の学期も過ごしてまいります。