
六月のイギリスは記録的な熱波に見舞われ、例年からは想像できないほどの暑さとなりました。学校では、試験が終わった開放感の中、アイスを食べたり水浴びをしたりして、突然の夏を楽しみました。
夏学期で特に印象に残っている出来事の一つがFamily dayです。Family dayは、生徒の家族が学校を訪れて、一緒に一日を楽しむイベントで、多くの家族が料理を持ち寄り、たくさんの人とシェアしていました。私も、友人の家族が持ってきた、大きなクーラーボックスいっぱいのジョロフライスを沢山いただきました。ジョロフライスは、西アフリカを中心に広く親しまれている、米をトマトや玉ねぎ、香辛料、肉などと一緒に炊き込んだ料理です。実際に食べると家庭によって味付けが異なり、日本でいうお味噌汁のような存在なのかな、と感じました。
ジョロフライスの辛さを味わいながら、生物の授業で感覚受容器について学習した時に調べたことを思い出しました。TRPV1という熱刺激を感知するイオンチャネルはカプサイシノイドであるカプサイシンによっても活性化されるため、辛いものを食べた時に「熱い」、「痛い」という感覚が生じます。しかし、鳥類のTRPV1は、哺乳類のTRPV1に比べてカプサイシンに対する感受性が低いそうです。唐辛子が辛くなった理由として、カプサイシンを多く含む唐辛子は、哺乳類による摂食を避けながら、鳥による種子散布を促すため、繁殖に有利だったから、という進化的な説があるそうです。また、カプサイシノイドが、唐辛子の中でも昆虫によって傷つけられ菌類が侵入する可能性が高い部分に多く含まれるという実験結果から、カプサイシノイドが菌類の繁殖を抑制し、生存に有利に働いたため、唐辛子が辛くなったという説もあるそうです。そう言えば、昔、漬物に入っている唐辛子の抗菌作用についても勉強しました。唐辛子の抗菌作用は、カプサイシンが脂溶性であることから菌の細胞膜に作用することが関係しているとのことです。これは唐辛子が暑い地域の食べ物、ジョロフライスに使われている理由にも繋がるかもしれません。さらに、「脂溶性であるというカプサイシンの性質から、辛味はお酒を飲むことによって和らぐ」という、学校のScience Journalに同級生が寄稿していた記事の内容にも納得がいきました。様々な場所での学びがジョロフライスをきっかけに一つに繋がったような気がしました。
この出来事のみならず、日常のさまざまな経験の中で文化や価値観について多くの気づきを与えてくれ、そして何よりいつも親切に接してくれた友人たちに、感謝しています。そして、この経験をすることができたことも、無事に高校を卒業することができたことも、田崎様、Tazaki財団の皆様に支えていただいたからこそです。本当にありがとうございます。これからも精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。