A .A.ミルンの『プー横丁にたった家』は、クリストファー・ロビンが行き先を知らせず、森の仲間とお別れする場面で幕を閉じます。物語上は「なぜいってしまうのか」「どこへいってしまうのか、それはわからない」とあくまで秘められたままですが、家を出て、パブリックスクールに入学することが暗示されていると言われています。クリストファー・ロビンは「ぼく、もうなにもしないでなんか、いられなくなっちゃったんだ。」といい、プーを残して去っていきます。このことから、パブリックスクールという場所は、心の拠り所であったクマのぬいぐるみを置いて、不安げに、しかし毅然と足を踏み出す自律への道であったことが窺えます。
私は生物に興味を持っており、生涯を通してそれを勉強したいと思っています。かねてより、漠然とながら、世界中から研究者の集まる英国で高い志を持った人々とチームを組み、研究をすることができたらどんなに素晴らしいことかと夢見ていました。その曖昧模糊とした夢は、しかし、3回の面接やBritish Council での意見交換、スピーチなどで、言葉にするたびにより明確になり、今や目下の具体的な行動につながるところまで視野がひらけてきたように感じます。質疑や議論で多くの気づきを与えてくださった皆様に感謝致します。
クリストファー・ロビンとは対極に、公然とパブリックスクールに入学する私ですが、彼と同様に多くのものを置いて家を去ることとなります。それ故、学習面以外でも数多の困難に直面することは想像に難くありません。しかし、私が感銘を受けた英国パブリックスクールの「自由と規律」という理念に従い、自らを律し、山積する困難に果敢に立ち向かって乗り越えることができた暁には、自律した人間への成長が望めるのではないでしょうか。そして、その規律が自由を生み、学に志す者としての成長につながるのだと信じております。
最後になりますが、留学という素晴らしい機会をくださった田崎理事長はじめTazaki財団の皆様、本当にありがとうございます。また、たくさんのことを教えてくださった白鴎高校の先生方、優しくて寛容な友人、そして、家族には感謝の気持ちでいっぱいです。微力ながら、現在・将来において、社会に対しどのような貢献ができるのかを意識しつつ、今胸に抱える希望と初心を忘れず精進して参ります。