お知らせ

Kさん(男生徒) 私立武蔵高等学校

6月末に夏学期が終わり、英国での学校生活も1年が経ちました。最初はいつまで続くのだろうと思っていた高校生活も半分が過ぎ去って、とても感慨深いです。

さて、夏学期の最初にA-levelのInitial Predicted Gradesが出る模試を受験しました。イースター休暇に重点的に勉強していたお陰もあって、今まで他の科目に遅れをとりがちであったChemistryの点数を伸ばすことができました。Maths, Further Mathsは特に問題のない点数を取ることができましたが、あちらこちらで細かなミスがあったため。現在はその修正に努めています。9月にはFinal Predicted Gradesが出る模試、10月には僕の受けるAdmission TestであるTMUAの受験も有るため、これら2つに向けた勉強をしつつPersonal Statement等の出願準備も行なっている状況です。

サマープログラムとしては、米国ボルティモアにあるJohns Hopkins Universityのオンライン授業を夏学期の4週間と夏休みの4週間、合わせて8週間受講しました。Christ’s Hospitalの数学科がJHUの数学科と提携しており、Further Maths受講者の他2人と共にその恩恵にあずかった形となります。僕が受けた授業は “Introduction to Mathematical Cryptography”という授業で、僕が興味を持っているサイバーセキュリティや暗号学の理論を集合論や群論、整数論などと絡めて説明するというものでした。最初はカエサル暗号などの初歩的な暗号から始まり、最終的には現在多くのウェブサイトの暗号化に使われている楕円曲線暗号までカバーされていました。また最終プロジェクトとして、AES/DES 共通鍵暗号の歴史的な背景やメカニズム等について20分程度の動画を作成しました。群論などは普段学習している数学とは少々かけ離れたものであるため苦労するところもありましたが、その苦労のお陰で暗号への知見をより深めることができたように思います。週ごとの課題やプロジェクト、ディスカッションの他にも中間/期末試験があったのですが全て90%以上のスコアを獲得し、無事評価Aと4単位フルに頂くことができました。

夏学期は8週間と短いながらも、何かと音楽で忙しい学期でもありました。トランペットを吹けない為ビッグバンドコンサートでの演奏はできなかったものの、マーチングバンドでチューバを演奏する機会が多くありここ3ヶ月程でチューバでの演奏が安定してきたように思います。学期が始まって2週目にはBrighton Children’s Paradeというパレードに参加し、ブライトンの市街や海沿いで1時間ほどマーチングをしました。Children’s paradeというインフォーマルな行事だったこともあり、ポップスを多く演奏し他の行事には無い楽しさがありました。途中譜面を全て落とすというトラブルもあったものの、非常に達成感のあるイベントでした。

またハーフターム直前にはSpeech Dayと呼ばれる学校行事の為の演奏、そして毎年度の最後の学校行事であるBeating Retreatに参加しました。Beating Retreatは学校の中心であるQuadで1時間程マーチングバンドが演奏する行事であり、軍隊式のマーチングからポップスまで幅広い曲を演奏する機会でもあります。特に印象に残っているのが、Saving Private Ryanという第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を描いたアメリカ映画の主題歌であるHymn to the Fallenです。とても静かな曲ということもあり実際に吹く箇所は少ないのですが、初めて映画を見た時から印象に残っていた曲だったため演奏できてとても満足した曲でした。また、Beating Retreatはマーチングの陣形がほぼ常に変わり続ける、僕が1年間でやった中で最も難しいマーチングバンドのイベントでもありました。

また、学年が終わった後にはBand Tourという数年に一度のマーチングバンドのヨーロッパ公演に参加しました。2025年度の行き先はフランスのストラスブール、ドイツのオッフェンブルク、スイスのシャフハウゼンとライン川上流周辺の国境地帯でした。ツアーは公演だけでなく観光も多く含まれたスケジュールだった為、西ヨーロッパの中でも最も複雑な歴史を持つ地域をじっくりと見ることができました。特にストラスブール含むアルザス地方は度重なる独仏間の戦争により双方の領土になっていた歴史があり、街中の建築やストラスブール大聖堂の刻印などからもその事実が伝わってきました。また、それらの歴史を背景としてストラスブールに設置された欧州議会の本会議場も見ることができました。日本の世界史の授業で扱う近代/現代ヨーロッパ史の出来事が実際にこの周辺で起こったのだと考えるととても興味深い経験でした。

今から考えてみると最初の2ヶ月程は少々長く感じたものの、全体としてはとても早く過ぎ去った1年だったように思います。来年度は出願やA-levelsがあるため、昨年度よりもより一層忙しくなると思いますが引き続き努力しつつ楽しみつつ精進して参りたいと思います。財団の皆様、ここ1年間手厚くサポートしていただき有難い限りです。今年度も宜しくお願い申し上げます。