財団からの合格通知を受け取ったのは1学期の始業式前日だったことを覚えています。その日は昼頃から、鎌倉を散歩しながら10分に1回ほどメールを確認していました。15時過ぎに通知を受け取った時は嬉しいと思った反面、これからの未来に対する恐怖も感じました。何ヶ月も前から自分が選抜され留学に行く可能性は十分あったのにも関わらず、いざそれが決定事項となると今までは感じることのなかった恐怖を覚えたのです。その後の何ヶ月かはすぐに過ぎていき、出発直前になって不安がまた大きくなっている状況です。
僕は小さい頃短期間ではありますがボストンに住んでいたという経緯があり、アメリカへの進学をかれこれ10年以上強く望んでいました。財団の1次選考後にもSATを受け、今年の夏にイェール大学のサマープログラムに参加した程です。そんな僕がイギリスに興味を持ったのは The Toaster Projectという本でした。その本は、Royal College of Artに当時在籍していたトーマス・トウェイツがImperial College Londonの教授のアドバイスを得て、古代の人が得ることのできた天然の原材料のみからポップアップトースターを作るという趣旨の本です。設計条件の他にもトースターを作る原材料を得るための移動手段にも制約が加えられていました。馬車の進化版である鉄道や自動車、ボートの進化版である船は使用していいが飛行機は使用禁止というものでした。このようなアイディアを急に思いつき、しかも大学教授までそのアイディアにのる国はどのようなものであろうかと気になったのが、今思えばイギリス留学のきっかけだったと思います。
今後の僕は、多くの場面で発想力や行動力が今まで以上に必要になると思います。その中で、一見「馬鹿げた」アイディアであったとしてもとりあえず提案し実行に移せるよう努力するのが重要だと思いますし、それが力になると思います。今抱いている恐怖と不安を力に変えていきたいと思います。
笑顔で送り出して下さった武蔵の先生方や友人、そしてこのような機会をくださった財団の皆様に感謝を申し上げます。精一杯努力してまいりますので、宜しくお願いします。