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Sさん(女生徒)国立筑波大学附属高等学校出身

スコットランド行きの便が欠航になるという予期せぬ出来事から始まった英国での留学生活 は、その後も予測不能なことの連続でしたが、二年間のパブリックスクールを無事に修了す ることができました。未知の環境で自らの居場所を模索し、目標に向かって歩み続けた経験 は、私にとって大きな自信となりました。同時に、渡英という選択をしなければ直面しなか ったであろう課題に向き合い、自らの弱さを痛感する時間も幾度となくありました。

渡英当初は英語での会話にうまく入れず、友人と過ごしていても「ここにbelonged してい る」という実感を持てませんでした。大学受験期には、学びたい分野は明確であったもの の、多くの候補者の中でいかに自分を際立たせるかという課題に直面しました。担当教員か ら「競争率の低い学部も検討してみては」と助言を受けた際には、現実の厳しさを突きつけ られた思いがしました。しかし、そのような中で私を支えてくれたのは、やはり周囲の人々 の存在でした。

流暢でない英語にも根気強く耳を傾け、会話を盛り上げてくれた友人。初めは疎外感を抱い ていたにもかかわらず、二年目には互いの個性を理解し合い、勉強の合間に夕食を共にする 時間が何よりの楽しみとなりました。趣味程度に続けていたフルートも、音楽の先生から 「息抜きになるから」と誘っていただき、フルートグループの一員として定期演奏会や卒業 前のカルテット演奏に参加できたことは、貴重な経験でした。ホストファミリーは、休暇中 に部屋にこもりがちな私を気遣い、紅茶や菓子を差し入れてくれたり、食卓でイタリアンジ ョークや手品を披露して家庭の温かさを示してくれたりと、日本の家族と離れていても「帰 りたい」と思える第二の家のような拠り所となりました。また、経済の先生はPersonal Statement や面接準備に至るまで厳しくも温かい指導をしてくださり、数学の先生は受験期 の浮き沈みに寄り添ってくださいました。こうした環境の中で、経済学を本当に学びたいと いう気持ちを再確認し、合否に左右されず、自分が納得できるまで取り組もうと心をリセッ トさせることができました。異国の地で「受け入れられている」という確かな感覚を得られ たことで、次第に自分を素直に表現できるようになり、留学生活そのものを心から楽しむこ とができました。

振り返れば、自分を「outsider」と隔てていたのは環境ではなく、私自身の意識だったのだ と思います。その壁を取り払うきっかけを与えてくれたのは、私を尊重し、支えてくれた周 囲の人々でした。そして同時に、これほど多くのサポートを得られる機会は今後の人生にお いて二度と訪れないだろうとも感じています。だからこそ、これからは支えられるだけでな く、主体的に関わり、コミュニティの一員として責任を果たす存在になりたいと考えていま す。

イギリスでの留学生活はまだ三年間残されており、今はその途中経過にすぎません。私は最 近、経済と法の関係性に興味を持つようになりました。経済学が持つインセンティブの力を 法の枠組みにどのように取り込み、社会により良いシステムを築くことができるのか。そし て、自分はどのように携わることができるのか。これからは、与えられた課題をこなすだけ ではなく、自ら問いを立て、今まで得てきた学びをどのように活かしていくのかを模索して いきたいと思っています。

これまでパブリックスクールで培った経験を糧に、柔軟性と協調性を保ちながら、より一層 勉学に励みたいです。そして、渡英前のレポートで記したように、どのような選択をしても 振り返ったときに誇れるよう、自分のペースで歩み続けていきたいと思います。

最後になりましたが、二年間にわたり何不自由なく多くの挑戦を重ねることができたのは、 田崎理事長をはじめTazaki 財団のご支援のおかげです。いただいた貴重なケンブリッジ大 学からのオファーを最大限に活かし、今後も一層精進してまいります。