お知らせ

Nさん(男生徒)私立駒場東邦高等学校出身

 先日卒業式とそれに関連する一連の行事が終わり、友人との暫しの別れを告げる中、必然的に自身の変化と成長について考える機会が増えてきました。この報告書では直近の2学期だけでなく、Fettes Collegeでの2年間の高校生活を総括したいと思います。

・学習面

 数学及び発展数学は2年間を通して特に苦労することなく乗り越えることができました。A levelにおける数学は数学力を試すものではなく、パターン化された問題の解法を習得することに重きが置かれている印象を受けました。学校が数学オリンピック等の数学力を総動員して解かなくてはならない試験を用意してくれたことは非常に有益でした。

 物理及び化学は概念的に難しいことはありませんでしたが、試験で高得点を取るために模範解答をほぼ暗記しなくてはならない点に疑問が残りました。

 日本語は母国語ということで負担に感じることはありませんでした。作文の採点基準が不明瞭で、予想していなかった箇所で減点されていたように感じましたが、それ以外は非常に易しい試験でした。

・バグパイプ

 初年度の2学期から始めたバグパイプは、毎週の個人授業と週4回のパイプバンドの練習を通じて、体力と技術面の向上を感じています。リコーダーもろくに演奏できない状態から始めた楽器でしたが、音感やリズム等も少しずつ理解できるようになり、楽器を始めたこと自体に非常に大きな意義を感じています。今年度の校内大会では自分の部門で優勝し、寮としても団体優勝することができたことを誇りに思います。低学年から続けているバンドのメンバーと比べると、技術面で向上の余地があるため、自分の演奏を録音する等して、今後もより高みを目指していきたいと思います。

・運動

 水泳、サイクリング、ランニング、インドアローイング等いろいろやってきましたが、いずれも非常に体力がつく競技であり、日本にいた時よりもかなり健康な体になった気がします。ただ、全て個人競技であり、自分との闘いであるため、ホッケーやクリケット等の団体競技を羨ましく感じることもありました。どれも経験がないためチームに入れないと思い諦めていましたが、大学では初心者チーム等で始めてみることも検討しています。

 水泳は学校のチャリティーイベントで5キロ泳ぎ切り、日頃の訓練の成果を出せたことに満足しています。25メートルプールを100往復することはとても楽しい行為とは言えませんが、自分を痛みつけることによって更に達成感が増幅されるのかもしれません。

 サイクリングはエディンバラから東西南北全方位100キロ圏を制覇することができました。右を見ても左を見ても羊と農場しかない中をひたすら漕ぎ続けてやっと辿り着いた目的地は、車で寝て起きたら着いた場所とは違う特別な意味を持ちます。

 ランニングは10キロ以内をいかに早く走りきるかを考えて挑んでいます。ほぼ毎回破滅的な腹痛に見舞われますが、タイムが短くなっていることに成長を感じます。凍りつくような寒さと風を肌に感じながら、半袖短パンでエディンバラの街並みを疾走することは、唯一無二の経験でした。日本の猛暑の中では命の危険があるため、しばし休憩したいと思います。

 インドアローイングとは、ローイングマシーンという漕艇部が訓練する機械をひたすら漕ぎ続ける競技です。水泳とランニングから腕力と脚力には自信がありましたが、腹筋が弱く非常にきつい経験をしました。今はインドアローイングをして腹筋を鍛えようとしています。水泳以上に全身競技なので更なる強化を目指し励んでいます。

・趣味

 渡英前から細々と続けていた写真では、2年連続して校内写真大会で優勝することができました。この2年間を通して学校の助けもあり、カメラの仕組みから編集方法まで広範囲の知識を得ることができました。フィルムカメラという自分では手を出せずにいた分野にも挑戦できました。

 1年程前から少しずつ積み上げてきたロシア語は、ロシア人を喜ばせる程度には上達しました。ロシア語のみによる意思疎通は難しいですが、ロシア人の保護者とコミュニケーションを取れた時には勉強した甲斐があったと感じました。キリル文字を解するようになれたことは、世界を裏側から見ることができる鍵を手にした気分です。いつか旧ソ連圏を旅行できるレベルのロシア語を習得できるように、これからも毎日コツコツ続けていきたいと思います。

 試験期間中にペンを手に紙と対峙しているうちに辿り着いた最近の趣味がカリグラフィーです。文字に情報共有の手段としてだけでなく、芸術的な意義も見出すことができました。ゴシック体を習得したので、次は流れるような筆記体に移ろうと思っています。

・Prefect

 思い切って応募してみたPrefectですが、振り返ってみるとPrefectでなければできない経験がたくさんあったと感じています。学校評議員の方に挨拶したり、下級生のためのイベントを運営する一方で、ゴルフカートを乗り回したり、学校の屋上に登ったりと様々なことをさせていただきました。普段は特に気に留めていなくても、ふとPrefectであったからこそ得られた恩恵に気付かされます。このいかにもイギリスのボーディングスクールらしい世界に頭を突っ込むことができたことは、非常に思い出深い経験となりました。

・対人関係

 寮生活では日本の授業だけで会う友人とは異なる友人関係が構築されます。現にここ数日間友人の家に滞在させていただいていますが、日本にいた頃の自分ではこの様な関係性を築くことはなかったと思います。彼らの家族と過ごすことは非常に興味深い経験でした。6軒の友人宅に滞在させていただいて、やはりどの家族も同じような質問や会話をするため、定型文に磨きがかかりました。今まで会ったことのない人と言葉を交わし、滞在させていただくことにより、初対面の人と接することに抵抗を感じなくなりました。

 休日や休暇中に学校外で友人と会うことで、エディンバラの至る所に彼らとの思い出が散りばめられていきました。何気ない街の一角でもそこで交わされた会話が鮮明に紐づけられ、モノクロだったエディンバラの地図が鮮やかに彩られたことに喜びを感じています。もちろんこれは学校内にも当てはまり、かけがえのない日々を過ごすことができました。

・何でもとにかくやってみろ

 66回生の中学学年目標として駒場東邦中学校の学年集会で何度も聞かされたこの言葉。もはや決まり文句の様に聞こえる言葉であっても、自分の経験を背負った言葉は特別な意味を持つということをひしひしと感じています。図書館にこもって勉強し良い大学に行くことも素晴らしいですが、せっかくイギリスに来たのだから、せっかくスコットランドにいるのだから、せっかく友人がいるのだから、何か特別なことをしてみることも悪くはないのではないでしょうか。例えミスを犯して辛い思いをしても、数年後にはきっと笑い話になっていると信じて、反省はしても後悔はせずに、これからも生きていきたいと思います。


 以上長々と書いてきましたが、これらは全て田崎理事長をはじめとするTazaki財団の皆様なくしては到底成し得ないことでした。本当にありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。