お知らせ

Yさん(女生徒)国立東京学芸大学附属高等学校出身

渡英前にあれほど脅かされていたイギリスの冬も過ぎ去り、花々が芽吹き出す美しい季節となってまいりました。自分の顔ほどもある大きなイースターエッグに囲まれつつ、今回のイースター休暇は休暇後にあるテストのための対策に勤しんでいます。

クリスマス一色だった先学期と比べ、今学期(Lent Term)はさまざまなイベントがごった煮になっていた印象です。試験やバレンタインデーに始まり、steeple chaseというマラソン大会のようなものや、イースターの催しまで、特に一貫した何かがあったわけではないのですが、授業以外に何もないかと思えば何かと忙しかった2ヶ月半でした。

私が所属している寮(Barnes B)では毎年、チャリティー活動の一環としてバレンタインクッキーをつくって販売する伝統があります。これは、各寮長にクッキーを届けたい相手、メッセージ、匿名希望の有無を連絡→各寮長を通じて注文→注文を確認し次第発注 →大量のクッキーにアイシングでデコレーションをしていく→ランチタイムに正しい相手に正しいクッキー届ける…という意外と複雑なシステムで運営されています。バレンタインにクッキー贈りたい相手を不特定多数に知られるの抵抗感ないんだ、という驚きもそこそこに、寮を上げての*バレンタイン商戦が私の2学期(Lent Term)の始まりとなりました。
*Grecians (最高学年の寮)もバレンタインにバラや手紙を届ける、ということをしており小さな対抗意識のようなものがあったとかなかったとか…

バレンタインと並行して、学期初めにはJanuary Assessmentという校内の試験がありました。授業のコマを使って行われ、イースター明けにあるMockへの肩慣らしのような位置付けなのかな、と勝手に思っています。またもや歴史では大苦戦をしましたが、他の3教科、哲学、美術史、数学ではまずまずの成績を取ることができました。科目ごとのエッセイの書き方を理解し始めることができたからかな、と思います。

「エッセイ科目」と一口に言ってもその構造は教科によってかなりまちまちである、というのが実際に全ての科目の試験問題を解いてみた感想です。例えば、哲学のでは過去の哲学者たちの主張を検証しながら、問いに対して自分の論を組み立てていくような形になっており、どれほどその主張やそれに対する反論について知って、それをどれほど上手く使いこなせるかに重点が置かれています。また、出てくる問題もある程度の傾向があり、正直にいうと、暗記だけで稼げる割合がかなり大きいです。美術史も、引用句を差し込むことでポイントが上がったり、そもそも先生が試験前に問題の概要を教えてくれたり、哲学ほど定型的ではないにせよ、自分の論を既にあるものの分析を通じて正当化する、という点では哲学のエッセイと似通っている部分があると感じます。しかし、分析の段階まで既に教科書に載っている哲学とは違い、美術史では、自分で作品を分析することや、複数のソースから情報を引き出して自分のものにすることが必要とされるため、暗記一辺倒では満足のいくエッセイを書くことは難しいと実感しました。歴史はその最たるもので、もちろん年号や出来事の暗記はある程度必要にはなりますが、それよりも一つ一つの出来事がどんな影響を及ぼしたのかなどを自分なりの切り口で分析することが最重要視されます。このように、大まかにエッセイ、と呼ばれる中でも扱う科目や問題によって必要とされる形式が変化することを初めて、身体で、理解した気がします。最初は科目独自のエッセイ構成に慣れるのに時間がかかりましたが、徐々に徐々にその構成の裏側にある論理や理由を理解していったことで、最近はなんとなく、説得力のあるエッセイの書き方が掴めたような気がしています。

今学期はバドミントン、ホッケー、ミュージアムクラブを週3回のアクティブとして選択しました。先学期に続けて選択したホッケーの他に、バドミントンを選んだことで、同学年以外との交友関係を広げることができ嬉しかったです。ミュージアムクラブでは毎週、先生が選んだ記事についてのディスカッションを行いました。回によっては30ページにも及ぶ論文や記事を20分ほどで読み、会話についていくのは大変でしたが、先生に交渉した結果、事前に記事を送ってもらえることになり、なんとか自分の意見をもって毎回のクラブ活動に参加することができました。活動についていくために協力をしてくださった先生、時に難解な文章を理解するのを手伝ってくれた友人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。

先学期に引き続き、オルガンのレッスンを受けています。お世話になった先生が離任されたことで、先生が新しく変わりましたが、どちらの先生も優しく、楽しくレッスンを受けています。「Dominionのオルガン(ランチタイムコンサートで使われるオルガンです)では椅子が高すぎて足鍵盤も使っての演奏が難しい」と相談すると、「それならチャペルで前奏を一曲演奏してみないか」と提案され、全校生徒の前でチャペルのオルガンを演奏する機会をいただけました。緊張で手が震え、ドキドキの気持ちでしたが、先輩方やchoirの方々からの励ましもあり、頑張って、何とか無事に一曲弾き切ることが出来ました。昨年の12月のコンサートよりも一歩ステップアップしたように感じ、ひとまずの達成感ともっとオルガンを弾けるようになりたいという思いでいっぱいです。来学期も続けてオルガンをとるので、また演奏の機会をいただけるよう精進していきたいと思います。

さて、前回の奨学生レポートでは、自分の心の状況の変化についてを取り上げ、当時の心の状況の分析と解決にまで至りました。そのおかげもあってか、Lent Termは心に十分な余裕を持ってのスタートを切ることができました。これのもう一つの理由として考えられるのが、祖母が日本から送ってくれた5年連用の日記帳です。今年の元旦から日記をつけ始め、それ以降毎日、1日のうちに考えたことやあったことを記しています。日記をつけ始める以前は、自分の内側でただひたすら考え続け、それだけに充実感を覚えていました。しかし、その考えていることを日記にアウトプットすることにしたおかげで、思考のアクセルが暴走しているのかどうかを見極められるようになったり、そもそも自分が考えていることをより客観視することができるようになったり、煮詰まることが少なくなりました。何より、祖母からもらった日記帳は5年分(ちょうど留学期間と同じ)で、5年分の「その日に何を考えていた」かが1ページに集約される作りになっており、今から日記帳の完成が楽しみでなりません。1日1日が一歩踏み出さなければ、機会を与えていただけなければ、有り得なかった貴重な日々です。そんな日々を過ごした5年分の記録はきっと私にとっても、そして願わくば誰かのためにも、役に立つとは言わないまでも「何か」になってくれるのではないでしょうか。そんなわけで、私の2023年の目標は「三日坊主にならない!」になりそうです。