お知らせ

Mさん(女生徒)都立三鷹中等教育学校

ヒースロー空港に着陸し、興奮と不安がないまぜになった状態で英国に降り立ってから、もう二年も過ぎたのですか。短く感じるというにはあまりに自分が変化してしまっているのですが、それでも瞬く間だったという感覚が残ります。本当に密な二年間を過ごすことができました。
フェティスに通った二年間を誰かに説明しようとするたびに、どこから始めるかわからず止まってしまいます。文化や人々が違うだけではなく、私自身もそれに合わせて、またはそれに合わせようとして変わってきて、密接に絡まりあった毛糸玉をほどこうとするような気分になります。今回は寄宿学校にいるということと人間関係のテーマに集中します。
まず、寄宿学校にいるという意味です。フェティスのモットーは “A place to live, place to learn, place to grow” です。授業に行くのみならず、寝食を同年代の人々と共にするということは、私にとっては諸刃の剣でした。最初や休暇後は、あまりの人数に圧倒されて孤独感におそわれるという皮肉なことがあったり、プライバシーがなかったり、自由時間を与えられたと思ったら学校側からなにかとやることを指定されてMe time が気づいたらとれていなかったりという面もありました。日々を分割し、勉強時間や ソーシャル(パーティなど)で埋めて生徒がホームシックにならないように忙しくさせるという手法だそうですが、最初のうちは効を奏しすぎて、一週間が飛ぶように過ぎるようでした。日曜日は一人でお出かけする、編み物に集中する、空きコマは復習に使うというように意識的に Me time を作ると、生活の自分らしさが増してきて、友達と話すときも、彼らと違う時間を過ごしたために会話の幅が広まりました。
もちろん、寄宿学校に住んでいるということは、厚いサポートに囲まれているということでもあります。これから渡英する方には、ぜひ、欲しいことがあれば臆せずに発言してほしいです。先生方に授業外でのサポートをお願いすれば喜んでいつでも助けてくださいますし、困ったことがあればマトロンやチューターなどに訴えれば解決に力を注いでくださいます。高等数学のmechanics で苦労していた時、先生に質問していたら夜の9時に寮にいらっしゃって手取り足取り教えていただいたこともあります。私は最初何に対しても遠慮していたのですが、発言しないと何も始まらないということに気づいて、どんどん自分のニーズについてvocalになりました。欲張りになったわけではありませんが、欲を出すのは大切です。
次に人間関係についてです。寄宿生活ならではのFOMOが、学年が終わるにつれて友達とこれって実はとてもリアルだと話すことが多くなりました(FOMO:Fear of Missing Out)。常に友達に囲まれて過ごすため、もし例えば夜に一人で部屋にいると、どこか別の部屋で友達が楽しい時間を過ごしているのではないかと不安になる状態です。意識的に除外されているわけでもなく、たまたまそうなるだけなのですが、不安なことには変わりません。試験勉強で忙しくなったとき、友達と勉強時間に遊ばなければという衝動に駆られたこともあったのですが、優先順位を確立させてFOMOを退治しました。寄宿学校では多くの人がFOMOを抱えていると思います。だから逆に自分の勉強時間などを確立して守っていると、バウンダリーをしっかり持っている人だとポジティブに捉えられます。もしFOMOで苦労していたら、ずっと同じ部屋にいなくても友達は友達で変わらないと覚えていてほしいです。私はFOMOが強くなったときは、友達に “I miss you, I want to spend more time with you” と率直に伝えて、時間を決めて一緒に映画を見たりお散歩したりしました。これも、being vocal のうちに入るのでしょうか。そうやって伝えれば、きっと友達も喜んで一緒に過ごしてくれます。
フェティスで何が一番よかったかと聞かれたら、そこで作った友達だと必ず答えます。勉強時間のはずの2時間をカラオケ大会にした時(試験勉強に追われていないかった時期)、gamesの前に一緒にお昼寝した時、消灯時間に部屋で一人でいるはずなのに5人くらいで見つかって怒られた時など、楽しい思い出は無数にあります。あまりに長く一緒に生活しすぎて、同じことを同じタイミングで言うことが怖いほど増えたり、洗濯物を一緒にしたり、お互いの髪の毛を切ったりと家族のような関係を築くことができたのも、寄宿生活ならではです。一期一会の素敵な出会いに恵まれて幸せ者の私です。
無論、初めからすぐいろいろな人と仲良くなれたわけではありません。新入生には馴染みにくい雰囲気もありました。しかし、pretend everyone likes you and they will というお言葉に従って、自分はこの居場所を勝ち得たんだ、I belong here just as any other person という自信を持っていれば、世界中どこにいても周りの人といい関係を築けると思います。
まだどこの大学に行くのかはわかりませんが、どこに行っても新しい人々に会える機会を大切にし、勉強に励みたいと思います。