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Mさん(女生徒)都立桜修館中等教育学校出身

大きな挑戦への期待を胸に渡英した2年前からあっという間に月日が経ち、無事に大学受験や卒業の行事を終え、Fettesを卒業することができました。Fettesでの2年間は、今までの自分の人生の中で最も充実し、楽しさと幸せで溢れた毎日でした。沢山の素敵な仲間に恵まれ、映画に出てくるような素敵な校舎で大好きなピアノ(Steinway)を毎日弾くことができ、先生も優しく1人1人を尊重してくださる方々で、毎日心から幸せだなと思いながら生活することができました。卒業後は仲の良い友達8人グループでフランスのパリとマルセイユ、イタリアのヴェネツィアとフィレンツェに卒業旅行をし、とても楽しい夢のような2週間を過ごしました。2年間でまさかこんなにも多くの親友と呼べる友達がイギリスでできるとも思ってもいなかった為、本当に嬉しく思います。
今回のレポートは2年間の集大成として、詳しく、2年間を通して思ったこと、受験、大学への抱負、今学期の生活、の4つに分けて記載していきます。

<2年間を通して思ったこと>
 Fettesの2年間をこんなにも楽しむことができたのは、自分のすべてを出し切ってFettesに居場所とやりがいを見つけることができたからだと思います。特に1年目のクリスマス明けからは生活にも慣れ、仲の良い友達グループもでき、学校のこともよくわかってきたため、すごく楽しかったです。しかしやはり、その前は初めての海外生活ということもあり、苦い思いをしたことも少なくありませんでした。初めの3週間程は特に2つの面での大変さがありました。
 1つ目は人間関係とそれに伴う精神状態です。英語についていけなかったり、どんな話をして良いのか分からなかったり、自分をあまり表に出せていなかった為周りにどう思われているか不安になったりすることがあり、小さなどうでも良いようなことに悩んでしまいました。特に渡英後初めの3日間はコロナで隔離され、スコットランドに着いて早々部屋で一人、食欲もない中次から次へと運ばれてくる食事と格闘し、捨てる場所に悩みながら、何もすることがなかったからこそ不安ばかりが多くなっていました。また、隔離明け初の登校日も、制服がまだ購入できておらず授業でみんな制服を着ている中1人私服で、この小さな私服の女の子は誰だ、と思われているようで周りの目も痛く感じ、Fettesデビューは決して良いものではありませんでした。また、各クラスに行く度に、もともとある既存グループに自己紹介をして入っていくその1つ1つが少しずつ精神的負担になっていました。よく覚えていますが、その日に火災訓練で広場に整列した時、周りを見て、自分よりみんな物理的に大きく、物凄い勢いで英語を話していて、校舎も考えられないほど大きく広く、その中1人取り残されたような気持ちになっていました。話していても、日本の友達と話していた様に心から楽しい、と思えないことや、早くここから抜け出したい、と思うことが多々ありました。
 渡英直後の2つ目の大変だった点は自分の強みを活かしきれていなかったことです。自分の好きな音楽を通して友達を見つけたいと思いオーケストラに行ってみましたが、日本の高校の吹奏楽部よりレベルも低く、また音楽に真剣に向き合っている人が少なく、それも初めはつらく悔しかったです。
 そんな中、転機となったのは9月末に開催されたピアノのコンサートでした。Fettesでは週に2回Coffee concertというカジュアルなコンサートがあり、そこで千と千尋の神隠しの「あの夏へ」をオリジナルでアレンジしたものをピアノで弾きました。多くの人が、初めて聞いたけどすごく好きになったと言ってくれたり、もともと知っていた人は他の曲も弾いてほしいとリクエストしてくれたりと、私に興味を持って沢山話しかけてくれました。そういった人とはそれまで感じていた不安や気まずさを全く感じずにありのままの自分で話せていました。何度もCoffee concertで演奏させていただくうちに、オーケストラ以外でのレベルの高い仲間とのアンサンブルをする機会が増え、そこで仲良くなったヴァイオリニストの友達とは2年間を通して、エジンバラ市内にある有名な教会で行われた学期ごとのコンサートや、coffee concertでデュエットやトリオを度々させて頂きました。聖歌隊にもオーディションを受け合格し所属し、日曜日のチャペルで讃美歌を歌ったり、エジンバラの有名な大聖堂St Gile’s cathedralでコンサートをしたりと、イギリスならではの経験ができました。私は絶対音感を持っているので、初めての聖歌隊ながら他のアルトパートの子に頼ってもらえて凄く嬉しかったです。Jazz bandにも所属し日本の吹奏楽部でやっていたサックスも続けることができました。毎朝、1時間目の授業の前に何かしら音楽のリハーサルが入っていて本当に毎日が充実していました。そういった音楽活動や、市内の教会で毎ターム行われた学校の音楽祭での演奏、コンクールでサックスとピアノで優勝したことなどが自分の自信にもつながり、Fettesという場所にやりがいと居場所を見つけることができました。やりたいと思ったことすべてに取り組めたことで、不安などがなくなって色々な人と話すことができるようになり、親友と呼べる友達も沢山でき、街へ毎週末出かけたり、学食で色々な話をしたり、音楽の練習をしたりして、毎日本当に楽しく過ごすことができました。
 音楽以外でも、Fettesでは運動会や10kmチャリティーマラソンなどのスポーツイベントが多くあり、その側面でも生活を楽しむことができました。勉強面では、数学に続いて文系科目でも好成績を取るようになると、クラスの友達と勉強したり、経済や地理について話したりすることが増えてとても嬉しかったです。
 このように、何も知らない場所に行っても自分の力で素敵な仲間を見つけて最高の2年間を過ごせた、ということが自分の中で大きな自信につながりました。それがこの2年間の一番の収穫だと思います。高校からのイギリス留学と聞くと、日本の高校生活の青春を犠牲にしなければならないと思う方もいるかもしれません。ですが、自分の居場所を見つけることや素敵な仲間を見つけること、そして生活を楽しもうとすることを諦めなければ日本とはまた違った素敵な青春を謳歌することができると思いました。この2年間は私にとってすごく楽しく、考え方や人生を大きく変えてくれた大切なものになり、イギリスに行って本当に良かったと心から思っています。
<受験>
 受験については、他の田崎生のレポートでもきっと書かれている内容だと思うので、文系の生徒の受験にフォーカスして記載しています。まず、パーソナルステートメントについてです。私は社会政策と経済を一緒に学ぶことができる学部を志望し、書きました。そこで難しかった事は、こういった2つの違う分野の混合学部の場合、大学によって学部の名前が違ったり、コース内容が微妙に違ったりする為、5つの大学全てに完全にマッチしたパーソナルステートメントを書くのは殆ど不可能だということです。またそれに関連して、ケンブリッジ大学の面接では、自分のやりたいことのうちの半分(教育政策)についてであった為、あまりすべてを出し切ることができなかったと感じました。
 面接時は、英語がイギリス生活を通して上達したとはいえ、質問に対する答えがどこか、本や他の誰かの言葉の引用のようで、“自分の言葉”で説明するという、日本語だと自分の強みであることに大きな難しさと壁を感じました。
 パーソナルステートメントは事前にテストや面接がない大学の場合直接オファーにつながるため、非常に大切です。私の場合大学によって少しずつコースの内容が違うからこそ、合否にあまりメンタルを影響されず、もし不合格だとしてもそこではなく合格を頂いたところに自分が向いているということなのだ、という思考展開をすることができました。そういった面で、ストレスをあまり感じずに受験期を過ごすことができ良かったです。
 私は全ての結果が揃った後、最終的にUCLの社会学部を第1志望としてUCAS(大学受験フォーム)を提出しました。UCLのオファーは本来3科目ですが、日本語で去年A*を取った為、4科目(Math, Further math, Geography, Economics) の中で2つのAという条件でオファーを頂き、リラックスしてAレベルの受験に取り組むことができました。日本と違い結果を知るのに1か月半ほどかかる為、人によってはストレスに感じる場合もあるかもしれません。ですが、その分自分たちの答案を1つ1つ見てくださっているということで、それはイギリスの教育の良い一面だと思います。

<大学への抱負>  このセクションでは、UCLの社会学部を選択した3つの理由と、今後の抱負を記載します。
 志望理由の1つ目は場所です。田崎財団のご支援や個人的な旅行でロンドンに行き、凄く気に入り決めました。特にUCLの周りはBritish Museum やNational gallery をはじめとした歴史的に有名な場所が多く、そんな憧れの場所に住むことをとても楽しみにしています。また、経済や外交の中心地であるため休暇中のインターンにも便利だと思いロンドンの大学に行きたいと思うようになりました。
 2つ目は、UCLのIOE(教育と社会学科)教育学部がQSランキング世界1位で、社会学部の中で自分の興味の1つである教育についてこの学部で学びたいと思ったからです。
 3つ目の理由は、社会学部は自分の興味全てを網羅しているからです。前のレポートでも触れましたが、私はAレベルの地理と経済を学ぶ中で2つの科目に深いつながりを見出しました。イギリスの文系科目では、1つの問題に対して多面的に考えることが必要で、例えば人間地理の移民というトピックを取っても、それを社会、経済、政治、環境など色々な側面から考えることが重要です。そのため、大学でも地理や経済を単独でやるのではなく、その2つの科目を基本として他の科目の視点からも多面的に学習したいと思うようになりました。UCLの社会学部では国際問題を扱う人間地理、そしてその解決策となる教育などの社会政策と経済を中心に取っていく予定です。
 イギリスに行ってから、日本を客観的に見ることができるようになり、日本の素晴らしい部分と、逆に足りない部分も見えてきました。だからこそ、自分の今までのパブリックスクールで得たものや大学の3年間の経験を活かし、日本や世界に貢献していきたいという気持ちがより強くなりました。大学では、どんな、教育をはじめとする社会政策が今の日本や各国で導入されるべきか、また、どのように社会と経済の2つの目標が達成され人々の暮らしを向上させることができるのか、またそのために自分は何ができるのか、という問いに対する明確な答えを出したいです。

<生活の記録>
 Summer term はスコットランドが1年間で最も綺麗な時期で、長い冬が終わって夏が始まる高揚感もあり、私の1番好きな学期です。
 学習面で、今学期はAレベルの試験対策として配られた過去問集をイースター休暇から計画的に取り組んだり、エッセイで点が取りにくい箇所を質問したりしました。IBを選択している友達はハーフタームの前でテストが終わり、またAレベルでも文系生徒が比較的先にテストを終える為(数学や理科系などの科目は6月末まで続きます)、寮からも人が減り、いつもと違い凄く静かに過ごしました。
 5月末にはFettes生活最後のCoffee concertがあり、ピアノソロで、思い入れのある作曲家ドビュッシーの曲と、仲の良いヴァイオリニストとのデュエットでベートーヴェン、ヴァイオリンソナタ春の第1、第2楽章を演奏しました。ソナタ春は併せて15分の大曲ですが、毎晩練習して、息の合った演奏をし、自分たちでも満足のいく出来となり、まさに2年間の音楽の集大成になったと思います。また、私のコンサートの度に来てくれた友達や先生方にも凄く楽しんでいただけたようで本当に嬉しかったですし、自分の音楽がこんなにも多くの人に届いていたのだと実感し、感慨深かったです。
 テストが終わった次の日(6/23)にはEdinburgh のOld town にある教会で開催された卒業コンサートに参加しました。ピアノのソロ、オーボエとヴァイオリンとのピアノトリオではピアノで、加えて聖歌隊と、3つの団体に参加しました。Fettes での最後の音楽のフォーマルなコンサートで、最高の音響と、教会という豪華なステージを全力で楽しむことができました。日本にいた時はまさか自分がこんなにも沢山エジンバラの教会でピアノ演奏ができるなど想像もしていなかったため、自分が経験していることのスケールの大きさと貴重さに胸がいっぱいになりました。
 その次の日からは勉強やコンサートに向けた練習から一気に解放されて仲の良い友達と街に行ったり近くの公園でピクニックをしたりと、残された日々の少なさを惜しみながらゆったりと楽しい時間を過ごしました。
 6/28にはDynamic earthという場所で卒業ダンスパーティーがありました。深夜まで友達と最後のケイリー(スコットランドの伝統的な踊り)を踊ったり、フォーマルディナーを食べたりとすごく楽しかったです。そこで校長先生夫妻や先生方も学生のようにすごく楽しそうに踊っていてイギリスらしくて良いなと思いました。
 6/30は卒業式の前の日に行われるFounder’s eve concertがあり、友達とJazz bandで出演しサックスを吹きました。フォーマルなコンサートではないため1週間前とは違った音楽の良さを楽しみました。その後は去年の寮、College westに戻り、寮母さんの部屋で後輩と話したりスナックを食べたりして過ごしました。
 7/1はついに卒業式の日で、最後の聖歌隊のパフォーマンスを学校のチャペルで終えた後表彰式がありました。Fettesでは各教科とスポーツなどで代表に選ばれると30ポンド分の図書カードを受賞することができ、私は音楽で受賞しました。今までの頑張りが色々な人にも認められたということで、すごく嬉しかったです。卒業式は日本とは正反対で緊張感が全く無く、卒業生は自由に好きなサマードレスやスーツを、在校生は制服を着て参加します。メインビルの中や思い入れのあるMusic departmentを歩く度に、ああ、もうここには当分来られないのだなと凄く悲しい気持ちになりました。ですが、逆にそれほど良い思い出を沢山作ることができたということで、嬉しさと大きな達成感もありました。
 A level試験や卒業前の忙しい一週間を終え、行事もすべて全力で楽しむことができ、有終の美を飾ることができたと思います。卒業式後は仲の良い8人グループでフランスとイタリアに2週間旅行をしました。大好きな美術館を幾つも回り、まるで資料集の中のような、私にとって天国のような場所を多々訪れたり、毎日友達とフラットで料理をしたり、フィレンツェの街並みを丘の上から眺めたりと、卒業旅行を精一杯満喫しました。マルセイユでは命綱の無い崖を、泣いてしまう友達もいた中登ったり歩いたりして、言葉も出ぬほどの絶景の海を見に行き泳いだり、マルセイユからヴェネツィアまで13時間の日中バスに乗ったりと、普通だったら絶対にしないような沢山の新しいことをしました。大好きな仲間と新しい世界を見たあの2週間は私の宝物です。そんな色々な世界を見せてくれた素敵な仲間たちに巡り会うことができて本当に良かったという思いを胸に、7月中旬に無事日本に帰国しました。

<最後に>
 最後になりますが、田崎財団の方々には感謝の気持ちで一杯です。ここまで私の中にもともとあったものが広がり、楽しく幸せに溢れた2年間を大好きな仲間たちとFettesで過ごすことができたことは、田崎財団のご支援無しで叶うことではありませんでした。本当に、田崎財団に応募して、渡英して良かったと心から思っています。そんな風に思わせてくれたのも、私の毎日を楽しくしてくれた尊敬できる素敵なFettesの仲間たちや6期の後輩と、どこまでも自分のやりたいことをサポートしてくださった田崎財団の皆様とFettesの先生方、また困ったときにいつでも話を聞いてくれた家族や5期生のみんなのおかげだと思います。大学でも、人との繋がりや、1日1日の新しい発見と、楽しいと思う気持ちを大切に、Fettes生活よりも更に充実した生活を送ることができるよう、また頑張っていきます。