早いもので、先日、2年間のパブリックスクール生活が無事終了しました。今回の報告書では、最後の2タームのことと、2年間を振り返ったうえでのことをお伝えします。
春ターム(1月から3月)は、ロックダウンだったため全てオンライン授業でしたが、留学生と、保護者がエッセンシャルワーカー(医療従事者など)の生徒たちだけ寮に戻って生活しました。戻ってきた生徒の数はとても少なかったため、寮は静かでしたが、オンラインレッスンの合間にはキャンパス内を散歩するなどして、充実した生活を送れたと思います。
また、大学の、Choral Awardを受けました。これは、もしグレード満たして大学に無事入れた場合に、聖歌隊に入って活動し、歌のレッスンを受けたり海外ツアーにも参加したりできるものです。Zoomでのオーディションで、審査員の方々の大半がカメラをオフにしているため、黒い画面に向かってひたすら歌うという、少し謎な体験でした。結果的に合格できたので、大学でも歌を続けられるのがとても楽しみです。
夏ターム(4月から6月)は対面授業に戻ることができました。今年のAレベルの試験は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったため、今学期は、先生たちが、「この生徒ならば本来の試験ではこれくらいの結果を残していただろう」という予測をする上でのエビデンス集めを目的としたテストが行われました。
Aレベルのカリキュラムは全て春タームのうちに終わっていたため、今学期の授業では、テストに向けての復習がメインでした。私は習ったことをこまめに復習しないと忘れてしまうので、2年間を通してそうするように心がけてきたことが味方して、テスト期間もリラックスして過ごすことができたと思います。このテストと並行して、歌のグレード8の検定試験にも挑戦し、合格することができました。
テストがすべて終わった後の3週間は、Pre-University Coursesという、大学で専攻する予定の科目に関連した授業を少人数形式で受けられるものと、パーティーや遠足など、卒業に向けた様々なイベントが予定されていました。
Pre-University Coursesでは、私は化学を選択し、分子軌道法の入門を学んだり、一時期新型コロナウイルス治療に有効なのではないかと話題になったヒドロキシクロロキンという抗マラリヤ薬についてのディスカッションをしたりして、Aレベルと大学レベルの内容の架け橋となる部分に触れられる良い機会となりました。
最後の3週間は、このように好きな勉強をしつつ卒業に向けてのイベントを楽しむ、というとても充実した期間になるはずでした。
しかし、卒業2週間前に、寮内で新型コロナウイルスの陽性者が発覚し、その後あまりにも速いスピードで寮内感染が拡大していったため、学校が閉鎖となってしまいました。最後の方は、みんな安全のためにそれぞれの部屋で隔離することを余儀なくされ、最終的にお世話になった先生方や同級生たちに挨拶もできないまま、予定より1週間早く帰国することになってしまいました。
卒業式などのイベントは代わりにオンラインで開催されました。これらのイベントをとても楽しみにしていたからこそショックは大きく、正直このような形で終わってしまうとは想像もしていなかったので非常に落ち込みました。しかし、このご時世なので、仕方がなかったと割りきり、せめてオンラインで参加できたことに感謝するべきだと思いました。
2年間を振り返ると、色々なことを思い出します。うち半分以上は、パンデミックの影響を大きく受けてしまいましたが、だからこそ気づけたこともたくさんありました。留学生活を通して感じたことを3つに分けてお話したいと思います。
1つ目は、強い信念を持つということです。実は私は、日本を出発する時点で、第一志望の大学学部が決まっていました。しかし、Fettesに入学して、進路相談などのお話になった際は、特に難しい学部だからという理由で、志望を変えることをたくさんの先生方に勧められました。
この状況に悩まされることもありながら、カリキュラムの魅力に惹かれ続けどうしてもここで学びたいと強く思っていたことと、大好きだった化学の先生が唯一そのまま突き進めと背中を押してくださったことで、最終的に自分の希望を貫き通しました。そして、前回の報告書で書いた通り、面接はうまくいきませんでしたが、オファーを頂くことができました。
私は小さいころから呆れるくらい頑固で、それが良いこととは限りませんが、今回に関しては味方してくれたかなと思います。
2つ目は、困ったときには助けを求めていいということです。もちろん、なんでもかんでも人に頼って良いという意味ではなく、どうしても必要なときには自分の中にため込まないことが大切だと感じました。
高校の途中で、急に新しい環境に身を置くというのは、ワクワクすることも多い反面、壁にぶつかることも少なくありません。その状況をわかってくださる方は周りにいるはずですし、現に私もたくさんの方々に相談にのっていただきました。自分の精神の健康を保つうえで、悩みをマネージしていくことは非常に大事だと改めて実感しました。
3つ目は、このパンデミックの中でたくさん耳にするフレーズですが、なるべく物事のポジティブな面を見るようにして、当たり前のことに感謝するということです。感染症拡大の影響で、学校に行って授業を受けたり、友達と外食したり、今までは当たり前だと思っていたことができなくなってしまう時期がありました。
また、今回卒業前に学校が閉鎖になったことも、夏タームに学校に戻れ普通の生活に戻っていた頃のことだったので、恥ずかしいことに、このようなことになる可能性があるということを完全に忘れかけていました。コロナに関わることもそうでないことも、この予測不能な時代にいちいち落ち込んでいたらやっていけないと思います。
最後になりますが、2年間の留学生活を無事終えることができたのは、たくさんの方々の支えがあったからこそです。特に、コロナ禍でたくさん心配をかけただろうに、危ないから帰ってこいなどとは一言も言わず私の決めたことを応援し続けてくれた家族と、このような素晴らしい機会を私に与えてくださった財団の皆様には感謝してもしきれません。
秋からの大学生活も期待と不安が混在していますが、充実したものとなるように努めます。引き続きよろしくお願いいたします。