渡英してから半年以上が経ちました。クリスマスからの四か月は、自分が純粋に楽しいと思える瞬間に恵まれた期間でした。その一つ一つの瞬間を通して、今の私が必要とするのは何なのか、少しばかり気付けたように思います。
今学期は毎週木曜日にセミナーがあり、私は物理と数学の講座を受けました。物理の講座では、ビッグバンや相対性理論を簡略的に学んだり、大学のインタビューで聞かれるような物理の質問をクラスで考えたりしました。数学の講座では、ベンフォードの法則や様々なパラドックスを扱いました。そのセミナーは普段の授業と違い、少人数で、本当にその分野に興味がある人達で構成されていました。先生も(私が感じた所)通常よりも熱のこもった様子で指導して下さり、私もその熱を受けて、夢中になって発言をしていました。
日本にいた時、学ぶこと自体を楽しむという事が、少し大げさであるかもしれませんが、私が私であることの自由の根幹にあったような気がします。渡英当初は、沢山のハンデの中、授業に追いつく事に精一杯で、その事を忘れていました。最近になってようやく、セミナーや日々の授業の中で、学ぶこと自体に喜びを覚えています。
もう一つの私の喜びは、音楽から得るものです。三月に声楽の大会に参加しました。九月から声楽を習い始めて、今までは狭い世界で歌っていましたが、その大会では私より遥かに熟達した人たちの演奏を聴くことができ、より広い歌の世界を目の当たりにしました。彼らの歌声による刺激は、歌の練習中だけでなく、私の日々をも奮い立たせるもののように感じています。
また、同時期に外部の合唱団を紹介してもらえました。その合唱団は様々な年齢層で構成されていて、プロのカウンターテナー歌手の方が指揮者・指導者として団をまとめています。普段の練習から団員の熱気に溢れており、4月の大聖堂での演奏は素晴らしいものでした。その合唱団では、良質な音楽に触れられるだけではなく、団員の人達との交友も深められます。毎日寮生として生活していると、どうしても行動範囲や関わる人が限られてしまいます。加えて、周りの生徒も幼い頃から環境を共有しているせいか、特定の社会に対する帰属意識が比較的強いように感じます。学校外の交友で得ること、それは学校の中の社会だけでは学べない事だと思います。これから外側からの刺激を受けながら、個人として声楽の技術を磨いていくだけでなく、合唱団で本格的に活動できるのがとても楽しみです。
このように、今学期は私が心から楽しいと思える物事に囲まれ、自ら自己を形成するのに必要な事を認識することができました。そのような瞬間に恵まれたことに感謝して、これからも精進していきたいと思います。