渡英から一年が経ちました。6月に大学入試に直接関わる大切な試験があったので、今回は勉強面に焦点を絞って報告したいと思います。
Aレベルの様々な特徴の中でも特に大きいのはその科目数と、本番の試験を見据えた授業内容だと思います。 現在私は、Mathematics、Further Mathematics、Chemistry、Physics(数学、上級数学、化学、物理)の4科目を履修しています。日本の高校で勉強していた時と比較すると科目数は圧倒的に少ないですが、その分それぞれの専門性は高くなっています。その上、平日5日間の時間割を4科目で埋めるのでほぼ毎日全科目の授業があり、早い進度と丁寧な復習を両立させながら密度の濃い勉強ができます。また、Aレベルの試験は国の規制の下で複数の民間企業に委託されており、それぞれの企業によって試験範囲に少しずつ違いがあります。加えて、それぞれの企業はSpecificationと呼ばれる、試験で問われる知識を細かく一覧にしたものを公開しており、授業はそれに沿って進められます。そのため、日本では学習指導要領を逸脱しないように試験問題が作成されるのに対して、イギリスでは試験が先行しているという印象があります。授業中に生徒から挙がる質問に「この内容はSpecificationに載っているのか」や「この言葉の定義を試験で記述させられることはあるのか」といった内容のものが多いところに、それが顕著に現れていると思います。
6月の試験に向けて勉強しながらホストファミリーと過ごした時間をきっかけに「ワークライフバランス」についての理解を深めることもできました。Kingswoodでは、入試の際に大学に提出する成績に加味される、とても重要な校内の試験が6月に実施されました。Kingswoodには日本のような定期考査がないため、渡英してからの9ヶ月間の勉強の成果を試す貴重な機会でもありました。その試験が2日後に迫り、ホストファミリー宅で勉強をしていたとき、ホストファミリーにドライブに誘われ、戸惑いながらも数時間外に出かけました。そして、車に揺られながらも「後悔はしないか。ドライブに行く数時間分、代わりに勉強をするべきではないのか。」という思いが脳裏を駆け巡っていました。しかし、実際には、外の空気を吸って良いリフレッシュになり、質の高い勉強につながったと感じられました。この経験について ホストファミリーと話していたら、「Aレベルの本番の試験は2時間弱の試験が約10個、1ヶ月半の長期間に分散されている。そのときのためにも、ひたすら勉強を疲弊しながら続けるのではなく、自分にあった休憩の取り方などのワークライフバランスを模索していくのが大切」という印象的な話がありました。たしかに普段から試験のことばかりを考えており、Sixth Formに在籍している2年間はずっと受験勉強をしているような気分なので、それを乗り切るためにも必要なスキルなのだと思いました。このときに深く議論を交わしたことがきっかけで、新たな文化・考え方に触れることができ、確かな国際感覚を身につけるという目標に一歩近づけたと思います。
このように、一年間イギリスで勉強を続けた中で日本とイギリスの差を感じたことは、数え切れないほど何度もありました。ただ、その差というのは、初めはぼんやりとした違和感であることが多く、いかにその違和感に敏感になって文化の違いについて自分なりに考えられるかが重要であるとも思います 。このような環境で学べることに感謝し、今後も精一杯勉学に励みたいと思います。