渡英してから半年以上が経ちました。ようやく新しい環境に慣れ、 想定の範囲内で物事が起こって行く心地よさのようなものを感じられるようになり、周りを見渡す心の余裕も生まれました。そして、そこに至るまでに経験した多くのカルチャーショックのなかでも、特に大きかった「国際政治に関する議論」について今回は報告します。
この3ヶ月間は、イギリス人や他の留学生とともに国際政治について討論する機会に恵まれました。そのなかでも強く印象に残っている二つについて書こうと思います。
一つ目は、私が初めて積極的で活発な議論を目の当たりにして価値観を大きく揺さぶられた 、政治・歴史の先生による「国際関係論 入門講座」です。この講座は、先生方が用意したおよそ15の講座から興味のあるものを1つ選び、4週間にわたってその講座を受けるという課外活動の一つとして実施されました。
「国際関係論とは何か、からはじまって色々な説明が聞けるだろう」と思って足を運んだら、待ち受けていたのは、 幅広い知識を要求される問いと、双方的で深くまで及ぶ活発な議論でした。「〇〇政府のトップはリアリストかイデアリストか」「過去に国際連盟がある国に科した制裁『〇〇』は成功と言えるか失敗と言えるか」などの問いに対し、それぞれが主張を繰り広げて、様々な例を引き合いに出して反論し、意見をぶつけ合っていく同級生たちの姿を目の当たりにした私は衝撃を受けました。
それまでは政治に関心があるかどうか に重きを置いていた私にとって、難題に挑んで白黒つけるような議論をするという経験は、まるで全く違う次元に飛び込んだようでした。受け身でいる時間がほとんどになってしまいましたが、同級生たちは皆Aレベルの科目として政治か歴史を取っているため 問いの解釈が上手く、どのような面からアプローチすれば意見が構築できるかを見て学ぶ良い機会になったと思います。
二つ目は、 同級生たちと議論を交わした経験を活かしながら、事前準備をして臨んだギリシャでの模擬国連会議です。2月中旬、3日間に渡って開催されたこの会議には、ギリシャはもちろん、アメリカ、トルコなどからも同年代の生徒が集まり、様々な 国際的な課題について、いくつかの委員会に分かれて英語で議論を交わしました。Kingswoodからは、模擬国連アクティビティをしている約10人が参加し 、この会議までの3ヶ月間は 、それぞれが割り当てられた国の資料集めや、ディベート練習などの準備を共に行いました。
私はサウジアラビア大使の役として、「反乱勢力との交渉」「対テロ戦争におけるジュネーブ諸条約第一追加議定書の適用性の見直し」の二つの議題について話し合いました 。事前準備の段階では、イスラム系の教えの影響が強いサウジアラビアの政策を調べ、最近までドバイに住んでいた友達の助けを借りながら、議題に対するサウジアラビアの方針を文字に起こすのにもっとも時間をかけました。
また、担当の国の外交方針に加え、議題を深く理解したうえで立場・意見を明確にして会議に臨んだため、多面的なアプローチができ、積極的に議論に参加できた実感がありました。たしかに英語で議論する難しさはありましたが、第一言語が英語ではない人がほとんどで、話の進むスピードが速くなかったこともあり、受け身になることなく参加できたのだと思います。
このように、初めて国際政治について議論をして受けた衝撃は大きかったですが、自信を持って自分の意見を主張できるように幅広い知識や考え方を身につけていきたいと強く思うきっかけとなりました。このような環境で学べることに感謝し、今後も精一杯勉学に励みたいと思います。