お知らせ

Yさん(Imperial College London, Biochemistry / Christ's Hospital出身)

英国の大学での生活が二年経ち、夏休みがやって来ました。今年は、去年とは比べものにならないほど忙しく、学業や課外活動に没頭していたため気づいたら暑い夏休みを迎えていました。自分でも驚く程充実した大学生活を送った今年度でしたが、忙しかった分得たものも多く、自身の成長を非常に強く感じる一年でした。この報告書では、学習面と課外活動(ダンスソサエティ)の成果を学期ごとに分けて紹介したいと思います。

まず一学期の学習面についてですが、二年生になると自主学習の割合が格段と増えます。とはいっても、講義の数は去年とさほど変わりませんが、去年よりも専門的で理解が難しい内容について学びます。これだと、自主学習の割合が大きいようには聞こえないと思います。ですが、二年生になると試験で良い成績を取るためには教科書や参考書の内容だけでなく、数年以内に発表された新しい論文を読み、そこで得た知識を交えて試験の答案を書かなければなりません。もちろん論文の内容を答案に含めないで良い得点を取ることも不可能ではありませんが、二年生になると今実際に世界でどのような研究が行われているのか熟知していることが求められているように感じました。心なしか教授と話をする時に、「学生」としてではなく一人の「研究者」として見られているような気がする事がありました。自習の割合が増えたのにはもう一つの理由があります。それは、課題で求められている質が高くなった事です。課題の数自体は去年とあまり変化が無かったのですが、課題一つ一つのレベルが非常に高くなりました。実際の論文と同じような構成(Abstract, Introduction, Method, Results, Discussion, Conclusionなど)で書く事が求められ、その上ほとんどの課題で遺伝子を解析するサイトや分子を3D化するソフトウェアの使用が必須となりました。
また、一年生の時と違い二年生になるとグループワークの課題があります。グループのメンバーと協力して一つの課題を仕上げる経験が一年生の時にはなかったので、満足のいく課題を作り上げることに苦労しました。ですが、グループワークと通して他人とのコミュニケーション能力が向上しました。今学期は、実験レポートや論文の分析課題に加えて、個人プレゼンテーションがありました。僕は、プレゼンテーションをした事もPowerPointでスライドを作った事も全く無かったので、プレゼンテーションがうまく出来るのか不安が募っていきました。しかし、プレゼンテーション経験のある友人の助けによって無事プレゼンテーションを終える事が出来ました。社会人になった時にPowerPointを使って分かりやすいスライドを作る能力とプレゼン力は必須なスキルだと思うので、社会に出た時に向けての良い練習となりました。通常の講義と課題に加え、Bioinformatics(情報科学や統計学のアルゴリズムを用いたソフトウェアを使う事で生物学のデータを分析する学問)や韓国語(僕の大学では二年生になると、I-exploreと呼ばれている学部の内容とは異なる単位を一つ取らなければいけません。)の授業もあり、常に忙しい日々を送りました。

次に1学期の課外活動(ダンスソサエティ)についてですが、今年はソサエティのVice President、ダンスチームのリーダー、そして振り付けをしていました。そのため、ダンス面でも非常に忙しかったです。十月に大学が始まる前からWelcome Fair(新入生を勧誘するイベント)とオーディションの準備で忙しかったのですが、大学が始まるとTaster Session(お試しレッスン)の準備とオーディションの振り付けに取り組む事が追加され、更に忙しさが増しました。これらの仕事が終わり一件落着したと思ったら、五十人を超えるオーディション参加者の採点を即座に行いチームのメンバーを決めなければならなりませんでした。メンバーの選出後は、十二月のUCLでの大会用の振り付けを考え、チームのメンバーに教えました。チームの活動と同時並行で、Vice Presidentとしての仕事(Weekly Classesの準備、Dance Battleに向けたチームの統制など)をする必要があったので、マルチタスクが得意になりました。今学期のダンスソサエティでの活動は正直大変でしたが、特に大きな問題もなく、なによりUCLの大会で優勝する事が出来たので、個人的には大満足の一学期でした。

二学期は、僕の人生で最も忙しい二か月でした。まず学習面では、ほとんどの課題が学期の後半に集まっていたため、後半に行くにつれてどんどん忙しくなりました。今学期の講義は、実際のリサーチで使用されている技術について学ぶモジュールと免疫学や幹細胞といった暗記量が多いモジュールを同時並行で受講していたので、復習に時間を確保するのが難しい状況でした。課題は四つあり、どれも異なる形式のものでした。一つ目は実験レポートです。この実験では、あるタンパク質のアミノ酸配列をMass Spectrometry(質量分析法)を使って特定し、それをアミノ酸配列の分析ソフトウェアを使ってそのタンパク質の名前や構造、体内での役割についての分析をするという内容のレポートでした。今まで行った実験の中で一番実践的なものだったので、実験自体もレポートを書くことも非常に楽しかったです。二つ目の課題は、四人グループに一つ論文が与えられ、それについてグループ内で分析してレポートを提出するといったものでした。この課題では、Viva(筆記ではなく口頭で行う試験のようなもの)があったため、論文を複数回読んだ後チームのメンバーと何度もその論文について議論しました。Vivaは今後やる機会が増えていくので、Vivaがどういうものなのか知る貴重な機会でした。三つ目の課題は、幹細胞の培養と分化についての実験とそれに関する記述式のクイズでした。実際に点数として評価されるのはクイズの点数ですが、この実験の一番のポイントは実験のプランニングを生徒主体で行うという事でした。どの細胞を使用するか、どの試薬を使うのか、実験を何日間で終わらせるか、などあらゆる事をグループ内で決定して実験しました。様々な論文を読んで、どの試薬や環境が幹細胞の培養と分化に適しているかを見極めなければならず、少し苦労しました。四つ目の課題は、ソフトウェアを使って分子の構造のパターンを推測して、癌を引き起こす原因となるタンパク質の働きを制御するためにどんな物質を薬として使う事が出来るのかポスターにまとめるというものでした。実験レポートは何度も書いたことがあったのですが、ポスター作成の経験は一度もありませんでした。そのため、どのようなレイアウトにするべきか、文章(IntroductionやDiscussion)はどれほど簡潔にまとめるべきかなど、分からない点が多く苦労しました。どの課題も非常にレベルが高くて苦労しましたが、実践的な内容だったのでやりがいがありました。学部の勉強以外では、R(統計解析やグラフィック用のプログラミング言語)やPythonの授業がありました。また、一学期同様韓国語の授業があり、課題(リスニング、スピーキング、ライティング)が二つありました。一学期よりも格段と忙しくなりましたが、とても充実していました。

勉強だけでなく、ダンスソサエティの方でもとても充実した学期となりました。今学期は、Vice Presidentとしての仕事よりもダンスチーム内での仕事や練習に費やす時間が長かったです。学期が始まってすぐ三月の大会に向けての練習が始まりました。今回も振り付けを担当する事になったので、一月中は振り付けとフォーメーションを考えるのに必死でした。一月には学部の試験もあったので、試験勉強と振り付けを両立させるのに苦労しました。二月に入ったら本格的に練習が始まり、追加の練習も始まりました。普段の練習時間は週に二回計八時間前後なのですが、大会が近づくにつれて週に三回、四回、五回と増えていき、学業とのバランスを取るのに苦労しました。また、二学期は卒論やプロジェクトで忙しくなる人が増えるので、全員が練習に参加できる時間を見つけ練習場所を探すのにも苦労しました。二月中に、衣装決めと衣装の注文もしなければならなかったのですが、それも問題なく終える事が出来ました。大会の本番は三月中旬にあったのですが、その大会はイギリス全土にある大学のダンスソサエティが集まる大きな大会だったので正直あまり自信が無かったのですが、無事優勝する事ができ感無量でした。その次の週には、校内のダンス系のソサエティが集まる校内ショーケースがありました。ショーケースを主催したのは僕が所属するソサエティではなかったのですが、リハーサルや音響チェックなどで招集される事が数日続いていたので、大会後も依然せわしない日々を過ごしていました。そのショーケースでは、チームでのパフォーマンスに加えフリースタイルのダンスを披露する貴重な機会を頂きました。大会とショーケース、二つの大きなイベントを成功裏に終え、春休みを迎える事が出来たので満足でした。

三学期はダンスの大きなイベントは無かったので、学業だけにフォーカスして紹介したいと思います。今学期は、今までとは違い四つのモジュールの中から一つを選ぶ選択制の授業でした。Challenges in Cell Biology, Applied Molecular Biology, Topics in Biotechnology, Computational Omicsの中から僕はApplied Molecular Biologyを選択しました。このモジュールでは、講義が四回ありましたが、メインの内容は二回の実験と個人プレゼンテーションでした。今学期のモジュールは一か月の間に全ての講義と課題提出があったため、時間内に課題を仕上げることに一番苦労しました。実験レポートのうち一つは個人レポートで、もう片方のレポートはグループで一つのレポートを提出するというものでした。プレゼンテーションでは、事前に与えられたタイトルについてのリサーチを自分で行い、計二回の教授とのミーティングを通してプレゼンテーション内容を詳細に決め、その後PowerPointのスライドと当日用の手元資料の作成をしました。今までのプレゼンテーションは全てオンラインだったのですが、今回は初めて対面でのプレゼンテーションだったのでとても緊張しました。今学期は、このモジュールに加え、Tutored Dissertation(論文のようなもの)の執筆もしました。
僕は、CRISPR-Cas9という遺伝子改変技術の発展と問題点に関する論文を書きました。様々な論文を読み漁り何について書くか自分で決める過程は時間を要するものでしたが、自分の興味のある分野についてのリサーチだったので非常に楽しかったです。文章を書く事に加え、Excelや分子を3D表示するソフトウェアを使ってグラフや図表を作成しました。書き始めてから提出までが一か月弱だったため、完成した論文を添削するのに充分な時間を使う事が出来なかったのが心残りですが、いい出来の論文が出来たと思います。授業重視ではなく課題重視だった今学期は、自分主体で学びを深める事の出来る良い機会でした。来年は、今年以上に主体性がカギになってくると思うので、今学期の経験は自分の大きな糧になりました。

最後に、この報告書の長さから分かると思いますが、今年度は密度が高くて忙しい一年になりました。あまりの忙しさに頭を抱える事もありましたが、振り返ってみると全てが自身の成長につながっていたと思います。来年は、今年よりも忙しくなると思いますが、今年の経験を活かして頑張りたいと思います。