お知らせ

Tさん(Durham University, Law / Fettes College出身)

高校2年生の夏、日本を出発して、この夏で4年が経ちました。これまであっという間だったと感じると同時に、まだ4年しか経っていないのかという複雑な感覚があり、これまでの4年間がいかに充実していたかを物語っていると感じています。中でも、コロナ関連の規制が完全になくなったダラム大学での2年目は今までの時間の中で、一番充実した1年になりました。

ダラム大学では、新入生である1年生の期間は学生寮で過ごし、大学2・3年生になると、大学の学生寮ではなく街の一軒家やフラットを友人とシェアして住むことが多いです。私は学生寮で仲良くなった同級生6人と一緒に大学まで徒歩圏内の一軒家に住み、食事、勉強、登下校や掃除をすべて一緒にして、家族のように絆を深めることができています。6人という大所帯に加え、常に他の友人たちも私たちの家に集まることが多く、時にはパーティーを開いたりして、とても賑やかで楽しい生活が送ることができています。日中は学部も異なり、それぞれ勉強に集中している分、自宅に帰れば友人たちがいることは、大変良い気分転換になっています。また大学の街が、世界遺産でありながら、自然が豊かで牧歌的な風情のある街で、人々が親切でゆったりとしています。このような街で、生活できることに幸せを感じています。

大学2年生では、コロナの規制が完全になくなったため、昨年は中止になったイベントやアクティビティが数多く開催されました。私は、広い視野を持って、様々なことに失敗を恐れずチャレンジするという目標を掲げ、多くのことに挑戦しました。

ピアノでは、10月にロンドンでのマスタークラスを終えた後、2月には大学オーケストラとモーツァルトのピアノコンチェルトを演奏する機会がありました。数回のリハーサルのみでテンポやフレーズの解釈を合わせるのは大変でしたが、本番はゴシック建築でステンドグラスが美しい教会で、たくさんの観客がいる中、とても気持ちよく演奏できました。

大学のバドミントン部に所属していますが、毎週末の他大学とのリーグ戦に向け、トレーニングを重ね、チームメイトとの絆も深められました。また時には、カレッジのバトミントン部の試合に出場することもあり、そこでもまた多くの友人に恵まれています。

学業面では、大学が開催するゲストレクチャーや研究発表会に積極的に参加するようにしました。特に刑法の模擬裁判は刑法の授業で学んだことを実際にどのように法をあてはめるのかを考えさせられるとともに、パブリックスピーキングの練習にもなり、大変有意義な時間でした。そのほかに、The HALO Projectというジェンダー問題に焦点を当てた女性の権利を保護するNGOグループの一員として、コンファレンスや研究発表をしたり、虐待の被害者のサポートのためのトレーニングを受けたりしています。このように大学の授業だけでなく幅広く課外活動ができたのはチャレンジ精神と「自分から動く」ということを大切にした成果だと感じます。高校在学中は、「得た機会を逃さない」というマインドセットで様々な活動ができましたが、大学では自ら動かなければ、何もしないで過ごすことは簡単です。一方で、自分から動けばとてもたくさんの貴重なイベントや機会がたくさん得られます。そのため、冒険心やチャレンジ精神を大切にして、意欲的に機会を自分から作りにいくことが大学を十分に楽しむための秘訣だと思いました。

私のモットーである、冒険心とチャレンジ精神は、今夏のカナダでのインターンシップの機会を得ることにもつながりました。現在、まさにモントリオールでのインターンに参加中ですが、本当に充実した毎日を送っています。

インターンの内容ですが、大学教授の研究のアシスタントとして、国際裁判所内での政治や外交がどのように裁判所の発展・衰退につながっているのかという研究をしています。特に、ロシアや南アフリカの国際刑事裁判所(ICC)からの脱退の背景や、アフリカ諸国の人権およびアフリカ裁判所設置議論について深く調べています。大学の国際法の授業では、法律とその理論・定義に焦点が当てられます。しかし、国際法の運用、どのような場合が違反事由になるのか、違反した場合の制裁などについては、実際には政治や外交、経済的要素が、深く関わっています。また、NGOのロビー外交や専門活動がどのように国際裁判所に影響を及ぼしているのかを研究するのはとても興味深いです。ロシアや中国などの大国が国際法違反を繰り返している行先の暗い中で、NGOなどの非国家主体が過去の人権裁判所の発展に少なからず影響を与えてきたということは少し希望を与えてくれました。

このインターンシッププログラムには、私は、日本ではなくイギリスからの留学生として参加しています。インターンシップには、ブラジル、メキシコ、コロンビア、インド、中国など様々な国の友人ができて、常時新しい事やそれぞれの価値観に触れ合うことができ、毎日が新鮮で、充実しています。皆が私に日本の事を聞いてくると同時に、イギリスのことも聞いてくるのには少しはっとさせられました。私の1年目のレポートでは、イギリスで生活することで逆に自分は日本人としてのアイデンティティを強く自覚したと書きましたが、留学5年目を迎える今ではイギリスの生活も私のアイデンティティの大切な一部になっていると実感しています。モントリオールはダラムとは異なり都会で、文化多様で国際ジャズ・フェスティバルや アート・音楽のイベントが頻繁に行われているので、友人たちとイベントに参加したり、観光に出かけたりしてカナダでの生活を満喫しています。

9月末には、イギリスに帰国し、いよいよ集大成となる5年目を迎えます。5年目も、これまで通り、広い視野を持ち、失敗を恐れないチャレンジ精神を大切にして、さらに意欲的に活動し、一日一日を大切に過ごしていくつもりです。4年前に、高い志を持ち、イギリスに渡った時の初心の気持ちを忘れずに、自ら動きあらゆる機会を逃さずに、将来につながるように全力を尽くします。最後になりますが、いつも私を支援してくださる田崎理事長をはじめ、財団の皆様方、先生方、友人や家族、そして私を応援してくださるすべての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございます。