お知らせ

Aさん(University College London, Politics Sociology and East European Studies BA/都立小石川中等教育学校出身)

私は2021年6月にUniversity College London(UCL)の大学進学準備コースを修了し、9月より同大学のPolitics, Sociology and East European Studies BA に進学します。政治・国際関係論・社会学・歴史学などから授業を履修し、国際関係論・国際政治・社会学における原則を学ぶと同時に、高校在学時より興味のあった、歴史問題に起因する外交対立について理解を深めたいと考えています。
進学にあたり、Tazaki財団より暖かいご支援をいただき、心より感謝しております。

振り返れば、高校1年生でTazaki財団の留学奨学金に応募した際に選考に適わなかったことが、進学する上で大切にしたいこと・挑戦したいことを考え直すきっかけとなりました。様々な選択肢を検討した上で、教育制度や政治・国際関係論についての知識に惹かれ、英国への進学を決意しました。
2020年9月から2021年6月までは、UCLの大学進学準備コースで、主にヨーロッパ史・政治学や人文地理学など、社会科学関係の授業を通し、学部コースでの学びの基礎を培いました。特に語学奨学生として参加させていただいたTOPS研修での、教授との距離の近い授業やOxfordの学生によるTutorialなどで苦手であると感じた、自分の意見・疑問点をまとめ、伝え、議論に持ち込む力が、準備コースでのSeminarやTutorialに積極的に参加することを通して、少しずつできるようになっているように感じます。
また、高校課程で自分が興味を持った内容が、準備コースでの学びを通じて理解につながったり、今後追求したいと考える疑問に繋がったりする経験をすることができたことも、1年学んでよかったと思う点です。一方で、留学生のために存在する進学準備コースと学部では、カリキュラムや周囲の環境が大きく異なることが予想されるため、気持ちを新たにし、来年への用意を固めていく所存です。

学習面以外では、寮生活での困難や、パンデミックの下英国で生活するという経験を通し、一口に表現してしまう「多様性」の意味について、疑問を感じるようになりました。日本人として、グローバルな環境の一員としてUCLで学ぶということは非常に稀有な経験であり、Cambridge大学の総長が田崎理事長に仰ったという「日本人としてのバックグラウンドを持つあなたがCambridgeで学ぶことが大切なのだ」というお言葉の意味をより理解できるようになったと思います。
一方で、一口にクラスルーム、ひいては社会での多様性というものも、国籍・政治的イデオロギーや社会的立ち位置、各々の今までの経験が複合的に作り出すものであり、何が「日本人らしいこと」であり、「何が自分らしいこと」なのか、また議論の中で生じる対立の何が「挑戦し解決を目指すべきこと」であり「異文化として受け入れるべきこと」であるのか、納得できる解を見つけることは非常に困難であると感じました。多様性の尊重や自分らしい生き方の追求が叫ばれる現代において、3年間の学びや学外での活動を通して、どのように解決する可能性があるのかを考えていきたい課題です。

よく言われることではありますが、英国への進学には、情報・金銭的な面を含む、さまざまなハードルが存在します。一方で、進路の選択肢は確実に広がっており、今後も広がり続けるのだろうとも感じます。進路が多様化すればするほど選択肢は増え、そしてそれぞれが魅力的に思え、自分の進路に悩むことも、正解なのかを考えることもありますが、その場その場で自分にとって正しいと信じられることを一生懸命にやることが、短期的な達成感だけではなく、いつの日か意外なところで成果に繋げることもあることを信じ、弛まぬ努力を続けていきたいと思います。
特に進学準備コース・学部への進学については、さまざまな方から御援助・御助言をいただき、また見守っていただきながら、進めてきました。今度は「私が受け取ったもの」を、これからの世代に少しでもお返しできるように学んで行きたいと思います。