お知らせ

都立日比谷高等学校 Iさん(女生徒)

二年間の高校生活を終え、改めて振り返るとまあいろんなことがあったなあと思います。
今回はいわゆる大学受験の流れ、およびそこで私が感じたことを書いていこうと思います。

イギリスでは一般的に5つの大学を受験できます。私の志望は工学部で宇宙開発に関わる勉強をすることなので、その分野に強い大学を下調べし、Year13になる前の夏にそのうちの3校のオープンデーなどに参加しました。その3校、Cambridge, Imperial, Southampton で体感したことを以下、順に述べます。

1, University of Cambridge
一番特徴的といえるのは、入学時にはコースが細分化されておらず、まずGeneral engineeringを広く学べることと思います。昨夏のEngineering in Actionというトークイベントでケンブリッジ大学の教授による講演を聞きました。講演では、ピンポン玉が天板の裏に当たって跳ね返ってくる理由を説明したり、ブーメランをかっ飛ばしたりしていました。
昼休み中にその教授に宇宙開発に携わるなら、Aerospace engineering か Electronic engineeringどちらがいいのか質問をしに行くと、「数学得意?」と聞かれ、「結構得意です」と答えると、「それならハイスタンダード(=おそらくケンブリッジ)に行って勉強した方がいい」と言われました。また、「色んな経歴の人で宇宙工学に関わっている人を自分は知っているから」とも言われ、要は何を専攻しても、宇宙開発につながる可能性はあると感じました。
Collegeによって雰囲気は様々でした。私が見学に行ったのは、Pembroke, Peterhouse, Magdalene, Churchillの四つで、いずれも宇宙工学の先生が在籍しているCollegeです。
Pembroke, Peterhouse, Magdaleneの三つは街の中心近くにあり、よく言えば歴史と重厚感があり、悪く言えば、古くて階段がきしむなあという印象でした。それに対し、街のはずれにあるChurchillは、敷地が広大、モダン、建物が比較的新しいという印象でした。Scientific collegeであったことも私にとっては好印象でした。
沢山のcollegeがあるなかで、選ぶ時は在籍している先生たちのHPをよく読むことも一つの手段になりました。自分がやりたいことと近いことを専門としている人を探す過程はわくわくするものです。また、競争率なども目に入らなくはなかったですが、結局は自分の行きたいcollegeを受験したので、インタビューの時に本意ではないことを言わなくて済みましたし、後悔もありませんでした。
また、Pre-interview assessment, ENGAAという工学部独自の数学と物理の試験がありました。10月のhalf termにはこれに備えて過去問をたっぷりやりました。

2, Imperial College London 私が希望するAeronautical engineeringのコースがありました。ザ・理系大学です。
留学生の比率が高く、オープンデーに訪れた時は特に中華系の言語が多く聞こえました。数年前にAeronautical engineering departmentの建物が新しくなり、設備面でも抜群の印象でした。古いほうの建物にも、英国一の大きさのwind tunnelがありました。
インタビューで聞かれる質問のうち、難関と感じたのはpersonal statementにあるトピックの技術的な所を深く掘り下げた質問です。私は、惑星小型探査機はやぶさのイオンエンジンの構造や原理について詳しく聞かれました。こういった質問が大変だったというのは、同グループでそれぞれ違う先生からインタビューを受けた4,5人がみな口々にそう言っていました。
そのほか、数学分野の質問もいくつかあり、「直感的にeのπ乗とπのe乗ではどちらが大きいか」といったのは面白かったです。10秒で答えろと言われ、「待って待って」と思わず言うと「待たない!」と言われました。結局間違って答えたので、そのままではいけないと思い、すぐになぜそう思ったかを説明しました。全体的に、押されながらも踏ん張った感じで、インタビューが終わった時にはくたくたでした。
また、インタビュー同日に数学のテストもありました。過去問が出回ってないので対策はしにくかったですが、Cambridge対策のENGAAをしっかりやっていたこともあり、余裕をもって臨めました。

3, University of Southampton
ここにもAerospace engineering があります。
駅の周りは寂しいものの大学界隈は賑わっていて典型的なcampus basedの環境だと感じました。オープンデーでは先生方が多く出席されていたので、展示会で時間を長くとって質問に応じてもらうことができました。非常にフレンドリーな印象でした。
また、BAE Systemsでのwork experienceでもこの大学を訪れ、巨大水槽を使わせてもらいました。3チーム対抗戦で作った全ての舟がその水槽に沈没するのを見届けました…。

その後3月に、条件付き合格をいただいた5校から2校にしぼりました。ケンブリッジ大学の条件は、AレベルでA*A*A*A (Further maths, Physics, ChemistryでA*, MathsでA)、インペリアルの条件は、A*A*A (Maths, PhysicsでA*, Further mathsでA)でした。工学部では化学は条件に含まれないと思っていたため驚きましたが、試験で全力を出し切れば不可能ではないものだと思いました。しかしその後、コロナウイルスの影響で今年はAレベルの試験を受けられなくなり、私にとって実力を発揮する場がなくなったのは悔しかったです。

8月中旬の結果発表の日、ケンブリッジ大学からメールが届き、化学がAなので入学条件に達していないことから今年は入学できない、ただ10月に今回の特別措置としてAレベルを受験することができるので、その結果が出るまでは今回の条件付き合格を有効とする、つまり私の場合は化学A*を取れば来年度の入学を許可するとのことでした。そんなわけで、私はすぐに化学の試験勉強に精を出し始めました。
しかしさらに数日後、受験していたカレッジから意外なメールが届きました。読むと、別のカレッジが今年度のケンブリッジ大学工学部への入学を許可するとのことでした。

I’d like to thank you for the patience and fortitude you’ve shown in recent days.

これは受験していたカレッジからその時送られてきたメールの一文です。自分の二年間の決して楽しいだけではない、されど苦しいだけではない日々が報われた気がしました。自分は留学に向いてないと思うこともありました。歩み方は決してスマートではなく、どちらかというと泥臭い自分ですが、支えてくださる方々への感謝を忘れず、これからも目の前の一歩を積み重ねていきたいと思います。