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【Kingswood School】 Wさん(女生徒・国立東京学芸大学附属高等学校出身)
 

渡英から1年3か月が経ち、イギリスでの2回目のクリスマスを迎えました。クリスマスが近づいてくると、街の至る所でクリスマスキャロルを歌って募金への協力を呼びかける人の姿が見られます。このような募金活動をはじめとしたイギリスでのチャリティー活動について、今回は報告をしたいと思います。

イギリスのチャリティー活動には、人々が協力する動機作りに重きを置いているものが多く見られます。私の通っているKingswood Schoolでも常に何かしらのチャリティー活動が行われていますが、そのほとんどが「何かを得る為にお金を寄付する」という双方的な交換が発生するようなチャリティー活動です。例えば、生徒主催のチャリティーコンサートでは入場料として寄付を募ったり、また別の日には生徒手作りのケーキやクッキーを販売した際の売り上げが寄付に回されたりしました。

そのほかにも、毎学期の終わりになると、通称Mufi/Mufty Day(マフティ・デー)という「制服ではなく私服を着て登校する交換条件として寄付をする日」が学校規模であります。また、私は先日、週末の夕方に近所のスーパーマーケットに行って、レジの近くに立ち、普通ならお客様が自分でやるところを代わりに袋詰めをすることで寄付をしてもらう、というチャリティー活動に参加しました。このときに寄付をして行った人はたくさんいましたが、そのお金が何に使われるかに興味を示した人は3人のみで、それでもそのチャリティーが成立してしまうことに初めは違和感を抱きました。このような双方的な交換が発生するチャリティー活動は、個人が寄付をする動機の大部分が「何かを得る為」に占められてしまうことが多いため、チャリティーの本来の目的は薄れてしまうように思います。

とはいえ、双方的な交換ではない一方的な協力をするチャリティー活動もないわけではありません。11月末には「ホームレスの人々にもクリスマスを」と掲げたチャリティー活動が全校で呼びかけられ、生徒や先生によって家からマフラー、コート、手袋といった防寒具やドッグフード(イギリスのホームレスの多くは犬と共に路上生活をしています)などが持ち寄られ、クリスマスプレゼントのように箱に詰められてからそのチャリティーを主催する団体に送られました。また、年中を通して、学校やスーパーマーケットには、ホームレスや食事に困っている人々に配るための食料(缶詰のビーンズ、チョコレート、ビスケットなど)を募るFoodbankという活動のためのかごが置かれています。ホームレス問題はイギリスの大きな社会問題であり、バース中心部にある世界遺産のローマ浴場のすぐそばにもいつも物乞いをするホームレスの姿があります。

そして、前者の方が多い理由を考えたとき、チャリティー活動を行う手段を選ぶ際には、より多くのお金を集めるという目的を達成する為に効果的かどうかが重視されるというイギリスの人々の感覚があるのではないかと思いました。一方で、私が中学生の時に募金活動をした際、「1円でも多く、ではなく、1人でも多くの協力を」という呼びかけをしていたように、必ずしも多くのお金を集めることにはならない手段を取ってもチャリティー本来の目的には近付くことができるという感覚が私にはあり、この感覚の差が違和感を生んでいたのだと気付きました。

そして、イギリスのチャリティー活動は宗教との結びつきが強いという印象を様々な場面で受けます。イギリスでは、海外への支援をするチャリティー活動の主な窓口のひとつに、教会があります。私のホストファザーは、いつも通っている教会のチャリティー活動担当として、アフリカにある修道院と連絡を取り合ったり、集まった義援金・寄付金を小切手としてアフリカの国に送ったりしているそうです。そんなホストファザーに教会とアフリカの関係性について尋ねたところ、「昔から、教会からアフリカに渡った宣教師やその周辺の人を通じて、生活のレベルを向上させるためのお金を集めるためにイギリスでチャリティー活動をしてほしいという要望が入ってくる」のだと教えてもらえました。この繋がりは、キリスト教の教えを用いる学校の多くで、どのチャリティー活動に学校として取り組むかの許可を出す権限がChaplain (チャプレン、学校所属の牧師)にあるというところにも現れています。

このように、何気ない日常生活の一部であるチャリティー活動に焦点を当てることで、「他人を思って何かをする」ことに対するイギリスの人々の感覚についても考えを深めることができました。このような環境で学べることに感謝し、今後も精一杯勉学に励みたいと思います。