お知らせ

Uさん(男生徒)国立東京学芸大学附属高等学校出身

スコットランドでは最高気温が氷点下の日が続き、何日も芝生が凍ったまま緑に戻らないような寒さが続いています。

12月になり、学校のAutumn termが終わり渡英して3ヶ月が経ちました。きてからの3ヶ月をまずここに書き起こしたいと思います。

入学してからしばらくはまず生活慣れるのに大変でした。寮でなるベルは点呼の時と何かの時間の始まりを知らせる2種類があるのですが、点呼だったらどうしようかと不安になり必要ないのに毎回点呼場所までわざわざチェックに行ってしまうような親譲りの心配性の露呈、自分の英語力の低さによる積極性の低下、渡航後の謎の食欲に翻弄されてばかりでした。しかし自分は環境の変化にそこまで強くない方もののなんとか少しずつ慣れていき、2ヶ月すると堂々と学校内で生活が送れるようになりました。

勉強面では満足いくほどのものではないものの、成績もそう悪くはありませんでした。僕は数学、物理、歴史、アートをとっています。日本で数学が苦手であったのですが、既習事項であることもあり数学では苦労はしていません。高度数学のクラスではないのも相まって授業はとても簡単です。物理も比較的楽な方です。日本の物理と違って覚える教科というような感じであるがために計算問題等は特に簡単です。しかしチャプターごとのテストでは実験計画や定義などを聞かれることもあり、そこは根本理解などが必要なため注意して勉強しないと落としてしまうような感じです。自分的には数学、物理は歴史、アートに比べてハードルが低いので友達とかに教えたりして理解を深めたり英語で説明する力に集中しています。

僕は日本の高校で芸術教科は書道を選択しており、中学以来ろくに芸術らしき芸術にはあまり触れていませんでした。そのためアートを取るとは決めたもののよくできるかは心配でした。あとから聞くと先生も寮父も相当心配していたそうです。しかしここでの教科としてのアートはよりアーティストを育てるような形で、自分の芸術観に極力沿って自由に芸術創作ができるものです。そのため僕自身も今のところ自由に手を広げながら芸術制作に取り組めています。AttainmentはまだAですが、極力A*に近づけるように精進していこうと思います。

今1番壁にぶつかっているのが歴史です。日本にいる頃から歴史は大好きで世界史への興味はとてもあったものの、特に世界史の教育を受けていなかったこともあり知識面でも苦労しています。イギリス史(1930-1997)とロシア史(1894-1941)を今取っているのですが、イギリス史では前述の通り予備知識が皆無だったためにGCSEで既習事項の周りの生徒に大きく遅れをとっている状態です。ロシア史では皆が初めてなのでクラスでも上位にかろうじて入れています。教科としての歴史は日本と正反対で、全てエッセイなため言語の壁がありまず時間内にエッセイを書き上げることに苦労しています。資料の読み取りさえも単語がとても難しいために困難です。初めの頃は歴史の授業後は毎回絶望で放心状態で、何からしていいか分からず暗室に囚われて自分の手すら見えないような状態でしたが、毎週のAcc Pri と言われる質問時間に先生に通い詰め助言をいただき少しずつ自分の手が見えてきたように思えます。

アクティビティはRitangleと言われる数学のクラブ、Physics Extension Clubに入っています。Ritangleは数学の授業に不満足だったため始めたのですが刺激的で楽しく数学を楽しめています。Physics Extension Clubも物理のクラスで先生に招待されて入ったのですが、授業より発展的な問題ができてとても楽しめています。Math Challengeと言われる数学オリンピックの前座のようなものに参加して当財団5期の先輩に次いで学校2位を取ることができたため、British Math Olympiad Round 1に先生に勧められて参加させていただきました。これは文系であった僕には歯が立たないような難しい問題6問に3時間半かけて取り組むもので、とてもいい結果を残せたようなわけではないですがとてもいい経験ができたと思います。 スポーツは幼い頃から続けていたバスケットボールを選択しました。学校のチームはとてもレベルが高いとは言えず毎回歯痒い感情を抱きますが、学校外のチームに参加しようと検討しているところです。一度学校外のチームに体験に行った時はレベルの高さにとても感動してとても楽しい経験ができました。たった一回でしたが学校外の人とも関わることで感じたこともとても多く、学校以外でも手を広げるとよりイギリス社会を知れるなと痛感しました。しかしまだまだ英語がついてこず、何をするにも挑戦で勇気がいる状態です。

生活面ではまだまだ苦労が続いています。友達がだんだんでき、街に遊びに行ったり家に招待されたりとするくらいまで行けたのですが、やはりここでも英語で世間話をするということにもがき苦しんでいます。2?4人での会話はだんだん慣れてきたのですが、それ以上になる状況、食事の時やクラスなどになるとどうしても話せないという負い目を感じてしまい四苦八苦しています。しかし積極性を忘れず自分を奮い立て、寮のAcademic Prefectになったり、House Rugbyに参加したり、ボランティアで日本語クラスを開いたりしました。


自分の生活の話はここで区切り、こちらにきて感じた「ボランティア精神」について書こうと思います。

チャリティー、ボランティアという単語は日本よりも生活に綿密に結びついている気がします。テレビ番組を見ていても賞金をチャリティーに寄付したり、ホストファミリーもことあるごとに物やお金を寄付したりとチャリティー・ボランティア精神には驚かされました。先日隣町までホストファミリーといらなくなったものの寄付に出かけると、寄付受付の店が数え切れないくらい見つかりました。そのような店は物を人から受け取ってそれをその店内で売り出し、利益を100%寄付するというような物です。日本では反対にセカンドハンドショップというように要らなくなったものは売ることが一般だと思います。

学校でも、これはボーディングスクールだからという要因も少なからず存在しますが、チャリティーの連絡は週に2-3回は入ってきます。例えば私服デーに私服を着る代わりに1ポンド寄付する、だったりスナックを売って利益を寄付したりとチャリティーをイベントと結びつけて生徒にチャリティーを催促することもあります。さらに多くのチャリティーは生徒企画だったり、個人でチャリティー活動をしてる人が多かったりします。学校単位でもService Fridayと謳ってさまざまなボランティア活動をしに出かけたりと多様なチャリティー・ボランティアが存在しています。

日本にいた時はボランティアというものは程遠い存在でどうやって活動すればいいのかもわからず、寄付してもUNICEFに、というほどでしたがこちらにきてから自分の中のボランティア精神も変わったような気がします。

こちらのボランティア精神はいわゆるボランティアだけでなく、先生の用事を積極的に手伝ったり、新入生案内などを自ら引き受けたりと小さなことからも垣間見れます。僕はこのようなボランティア精神の根本は自己責任論にあると考察します。よく言われるように自己責任論が蔓延る日本では自分のことは自分で済ませるという基本軸が存在していて、これは他人に迷惑をかけないという気遣いから生まれているものでもあります。しかしイギリスでは自己責任論が日本より薄いという印象を受けます。そのため他人に迷惑をかけないという感情に人を助けるという逆方向の感情が優っていると感じられます。そこから派生した精神によりチャリティー、ボランティアが生まれてくるのではないでしょうか。積極的共助の精神であるボランティア精神は思いやりという基本的社会行為に密接していて、だからこそ僕も積極的に自分を動かしていかなければと気付かされました。