お知らせ

Sさん(女生徒)私立青山学院高等部

 渡英から早くも八ヶ月が過ぎようとしています。いまだに日々の目まぐるしい変化について行くことに精一杯ですが、前回の奨学生レポートで目標に挙げた「存在感を放つ」ことは、学習面と生活面の両方で達成できたのではないかと思います。

 今回のタームのハイライトの一つは3月にkingswoodで開催された Bath International Schools’ Model United Nations conferenceです。このイベントは、先生曰く、イギリスで二番目に大きい模擬国連で、イギリス各地から300人以上の生徒が集まりました。私はpolitical committeeのchair(議長)として参加しました。金曜日の夜に開会式があり、土日二日間に渡って各国の代表となった生徒(delegates)のディベートが円滑に進むための議事進行を担当しました。ディベートのトピックは南シナ海問題、宇宙規制をめぐってのものやコソヴォ問題を取り上げました。事前にたくさん予習してきていたつもりでしたが、ディベートに出てくる証拠やデータは初めてお目にかかるものが多く、自分の勉強不足を痛感したと同時に、さらに自分が興味のある分野、国際関係論への知識を深めていきたいと感じました。イベントの際に、私の英語力不足で参加者に「何を言っているのかわからない」とはっきり言われたことがありました。正直、心が折れそうになったのですが、同じpolitical committeeの議長メンバーがたくさん助け舟を出してくれたおかげで乗り切ることができました。議長としての役割を担うにあたって、例えば “Can the floor please come to order”や “The delegates has opened themselves to points of information”など、普段の生活では中々お目にかからない特徴的なフレーズを叩き込んだことも貴重な経験でした。私以外、全員ネイティブの環境の中に身を放り込むのは勇気が入りましたが、私も参加者のように堂々と発表したいと、モチベーションがあがり、とても良い刺激をうけたので後悔していません。現時点での自分と周りとの差が明確になったのでここから這い上がれるようにやるべきことにコツコツ取り組んでいきたいです。

 Kingswoodではenrichment course という各教科の先生が用意してくださった数々の講座の中から興味のあるものに参加できるプログラムがあります。週に一度、放課後の時間を使って全4回に渡って行われる授業です。私は国際関係論入門講座に参加しました。クラスは五人のみの小さなクラスでしたが、生徒は全員世界の諸問題に関心がある熱心な人たちばかりでした。講座では基本的な国際関係論のセオリーを学び、例えば現在のロシアのウクライナ侵攻はどのセオリーが当てはまるか議論したり、現在の国際連合の安全保障理事会の問題点について話し合うものなど普段の政治の授業とは全く違ったもので刺激的でした。前学期では発言することが億劫になっていましたが、興味のある分野で日頃から自主的に勉強していたこともあり、自信を持って何度も意見を述べることができました。自身の英語力の乏しさから、先生方はなるべく易しい質問や問題を投げかけてくださることが多かったのですが、この講座で人が変わったように喋り出したことから、私の意見へ反論してくださったり、「じゃあ、こんなシチュエーションの時はどうなるの?」と私の意見がより一層深まるような問いもくださるようになりました。自分の意見を整理してから発言することが癖付いていたため、瞬時に反応することに面食らいましたが必死に喰らいつくことができ、自身の成長を実感しました。全4回での講座の中で、自身の発言回数をメモしていたのですが、最初は2回だったのが最後には7回となり、誇らしかったです。しかし、クラスのメンバーが普段の政治の授業のメンバーばかりであったり、先生も私の政治を担当してくださってる先生だったからこそ安心して一歩踏み出せたと思っています。この経験を糧に、さらに自身の興味がある分野への知識を深め、また、コンフォートゾーンから抜け出していけるよう積極性を磨いていきたいです。

 普段の授業に関しては、経済のエッセイテストで9割以上の点数が取れるようになったり、政治の先生から日に日によくなっているからこの調子で頑張って欲しいとお褒めの言葉をいただいたり、自分の努力の成果が目に見えるようになり安心しました。しかし、経済ではいまだに問題文の理解が浅くなって点数を落としてしまったり、政治では知識やエッセイであげる例は十分だけれども、分析が足りないとのご指摘をいただきました。これは明らかに自身の演習不足が原因だと思うので、六月の試験で納得いく結果が残せるよう改善に努めたいです。

 このタームの中で一番嬉しかったのは寮の中で “most unique person”として表彰されたことです。渡英した直後はメンタル的に安定しているとは言えず、親切にしてくださっているチューターの先生に対して反抗的な態度をとってしまったり、特定の人たちとしか話さず、渡英前とはある意味別人のようでした。そんな自分が嫌で嫌で仕方なく自暴自棄になってしまう節もありました。このままではいけないと、寮の同学年の子の部屋に突撃し、素直に仲良くしたいと直情のままを吐露したところ、快く受け入れてくれました。その出来事がきっかけでなにかが吹っ切れ、本来の自分らしさを取り戻したと思います。今では、5時間ぶっ通しで他愛もない話をしたり、週末には仲良しメンバーで料理をしたり、男女関係なく枕投げ大会を開催したり、雪が降った日には2時間雪合戦をしたり、寮生活をしているからこそ味わえる楽しい経験をたくさん積んでいます。寮生ではない友達とも気兼ねなく冗談を言い合える関係になり、本当に嬉しかったです。このように徐々に、自分らしさを取り戻したことで、先生方とも気軽に会話を交わすことができるようになりました。高等部の先生方もフレンドリーな先生が多く、生徒と教師の距離が近いと感じていましたが、今の学校の方が生徒の人数が少ないこともあり(1学年120人ほど)、必然的に先生方との交流は多くなります。今までは話しかけていただくたびに身構えてしまっていたのですが、最近では先生にちょっとしたことでからかわれるぐらい距離が縮まりました。このように事態が好転している中、寮長の先生から「9月のあなたはなんだったの!やっと本性を表したね」と冗談まじりに褒めていただきながら、most unique personとしてターム終わりに表彰していただいた時は、涙が込み上げるほど嬉しかったです。私らしさを受け入れてくださった先生方、友人たちには頭が上がりません。日本にいた時と同じように毎日なにかしらで大笑いできる日々は当たり前ではなく、人に恵まれているからこそだと思います。いただいたご縁を大切に、感謝の気持ちを忘れずにこれからも全力でkingswoodでの生活を楽しんでいきます。

 このタームは「清水の舞台から飛び降りる」ような心構えで望む場面の連続でした。しかし、思い切ったからこそ目標であった「存在感を放つ」ことは達成できたと思います。また私がイギリスで勉学に打ち込むことができるのは当たり前じゃないこと、一瞬一瞬を噛み締めることが多かったタームでもありました。次のタームからは大学受験への準備が一気に加速していきます。やらなければいけない事が多くなると逆にやる気がなくなるか適当になってしまったり、気が緩むと一気に仕事量が減ってしまう性格なので、「モチベーションを保ち続ける」ことを念頭に置いて生活していきたいです。初心を忘れず、私を支えてくださる全ての方への感謝も忘れず、今後とも精進してまいります。よろしくお願いいたします。