お知らせ

Sさん(女生徒)私立青山学院高等部

 先日のカタールサッカーワールドカップにて、日本人選手が使用したロッカールームをきれいに整理整頓して帰ったこと、日本人サポーターが試合後のスタジアムでゴミ拾いをしたことが、学校の集会で紹介されました。私は日本人としてとても鼻が高かったのですが、友人に「なんでかりんは日本人なのに寮の部屋が散らかっているの?」と揶揄われ、耳が痛かったと同時に、日本人がとても少ない状況だからこそ、私の一挙手一投足が日本人としてのイメージ形成に繋がるのだと、当たり前だけれども、実際にマイノリティとしての立場を経験しなければ実感できない体験をしました。渡英からまもなく4ヶ月が経ちます。毎日が電光石火の如く過ぎており、先輩方の偉大さを肌で感じる日々です。いかに自分が日本で甘やかされてきたかを痛感しつつも、イギリスでの生活は刺激的でワクワクしています。
 渡英してから学校が始まる二週間弱はホストファミリーの家で過ごしました。ホストファミリーはとても快活で優しくしてくださり、今では帰ってきたら安心できる場所になりました。しかし、最初はとても緊張しており、失礼のないように喋ることを考えてから口に出したり、あちらはとてもフレンドリーに接してくださっているのに、こちらから壁を作ってしまっていました。そんなある日のこと、私の部屋のドアの鍵が壊れてしまい、朝起きたら部屋から出られなくなってしまいました。焦りに焦り、一生このまま部屋から出れないのではないかと真剣に考えました。しかし、ホストファミリーはまだ寝ている様子で、たとえ叫んだとしても部屋からの脱出は難しい状況でした。私の部屋は一階にあり、大きな窓がついています。そこで何を思ったのか、私は窓から脱出し、正面玄関から家に入る計画を試みました。計画は見事成功したのですが、犬に不審者と間違われ吠えられる始末。怪訝に思ったホストファミリーが降りてきて私を見て、私から状況を聞いた途端、大爆笑しながらもハグをし、「困ったことがあったらなんでも言っていいんだよ」と優しく声をかけてくださりました。初日にも言われた言葉ですが、この瞬間、誰かに頼ってもいいんだと肩の荷が降りたような気持ちになり、一気にホストファミリーの存在を近く感じるようになりました。常に明るい言葉を投げかけてくださり、時にはアドバイスもしてくださるホストファミリーと過ごす初めてのクリスマスはどんなに楽しいだろうと期待で胸が膨らみます。
 私はA levelで政治、経済、数学を選択しています。前回のレポートであんなに長々と歴史オタクであることを書き連ねてきたのになぜ歴史を選択しなかったのか。理由は二つあります。一つ目はkingswoodで学ぶ歴史のトピックが私が興味を持っている時代ではなかったこと、二つ目はGCSEで歴史をとっていた友達からいかに歴史が大変で骨が折れる教科なのか力説され、自分の中でAlevelは通過点であり、大学で思う存分好きな学問を追求できるような選択をしようと決意しました。とは言っても、政治もエッセイベースの教科であり、イギリス政治に精通していないため毎日必死に食らいついていってます。クラスメイトの知識の豊富さに圧倒されたり、ディベートで思っていることをうまく伝えられず、熱くなっているクラスメイトに「論点がずれているからもうあなたの話は終わり」と言われたこともありました。 何度も明日からイギリスの公用語が日本語になることを祈りながら眠りにつきました。しかし、だんだんと持ち前の負けず嫌いな性格に拍車がかかり、エッセイを何度も書き直したり、先生に授業後わからなかった箇所をわかるまでしつこく聞いたり、悔しさをバネに自分なりの努力の仕方をこの四ヶ月で研究できました。政治の学問自体にはとても興味があり、日本政治との違いを見つけると、クラスメイトは誰も知らない秘密を発見したような気持ちが溢れ、楽しみながら勉強できています。現在の課題はエッセイを制限時間内で書き切れるように、なおかつ、クオリティの高いものを作ることです。一朝一夕で身につく技術ではないと思うので、この調子で努力し続けたいと思います。
経済は、マクロ経済とミクロ経済の二つに分かれており、二つの視点から経済を学んでいるような感覚です。経済についての知識が、需要と供給程度しかなかった私は、最初の数週間は英語も全く聞き取れず、四苦八苦していましたが、先生に紹介してもらった、経済のyoutubeチャンネルを頼りになんとかついていけてると思います。経済の授業では、グループワークやプレゼンテーションが多く、英語力も総合的に鍛えられています。課題に周りの2倍以上の時間がかかったり、事前に話すことを原稿にしてからでないと、発表ができなかったり、もどかしい思いをすることが多いですが、先生方が分け隔てなく話しかけてくださったり、他の生徒が聞き取れなかった箇所のノートをそっと見せてくれたり、周りの方々のおかげで形になっています。最初は不器用な自分がいやでいやで仕方なかったのですが、小テストの勉強を周りより一週間早く初めて、そこそこ良い点数を取れたり、宿題のエッセイを死ぬ気で書き上げたことを褒めてもらえたり、人よりスタート地点は劣っていても、一歩一歩、確実に前に進めていることを実感できて嬉しかったです。しかし、今の状況に甘んじず、地道に積み重ねていきたいと思います。数学では、電卓を使いこなせなかったり、英語の数学用語がわからず、文章題に苦労することもありますが、3教科の中で一番余裕がある教科です。それと同時に、友人に問題の解説を頼まれて、うまく解法を説明できず、悔しい思いもしました。しかし、日本の高校に通っていた時より、数学の重さは圧倒的に軽くなり、日本の高校で習わなかった微分積分のトピックも深く理解できたと思います。元来、調子に乗りやすい性格なので、自分は数学ができるのだと、思い上がって、努力を怠ることはないように気を引き締め、取り組んでいきたいです。Alevelの勉強をはじめてみて、私の勉強スタイルは根本的に変化しました。今までは、いかに勉強時間を減らせるかに重きを置いており、好きな教科以外のテスト対策は一夜漬けだったり、自分でピックアップした重要事項だけ復習したり、良い成績を残すためだけの作業にすぎませんでした。しかし、現在はいかに勉強時間を増やせるかを常に考えており、サボることしか考えてなかったことが嘘のようです。自分の好きな教科に絞って勉強に打ち込めるA levelのシステムが本当に自分にあっているのだと思います。「好きこそ物の上手なれ」などと言いますが、楽しみながら勉学に励んでいきたいです。

 新しい出会い、特に寮での生活は驚きと発見の連続でした。ルームメイトの中国人の女の子と第二次世界大戦において本当の悪とはなんだったのか、深夜1時ごろまでディスカッションしたり、互いの国の政治について教え合ったり、私たちがそれぞれの国のトップになったらどういう方針で国を運営したいかなど、とても深く、留学したからこそできる体験をしました。以前は、このようなトピックを話し合える友人が居らず、父と二人でもちろん日本語で議論していましたが、イギリスで英語でそのような話ができるルームメイトに出会えた私はとても幸運で恵まれていると思います。夜に勉強する際は、ルームメイトの睡眠を妨害しないよう、廊下か共有スペースにでて勉強したり、毎週土曜日に強制参加のfamilly timeという時間があったり、好きなように自由時間を使えないことに最初は歯痒さを感じていましたが、段々とうまく時間をやりくりできるようになったり、夜廊下か共有スペースで一人で勉強する際に日本から持ち込んだ緑茶を飲むルーティーンを作り、一人で落ち着ける時間にしたり、自分なりにうまく折り合いをつけることが出来ました。日本で好き勝手していたので、初めて自分で料理したり、生きていける程度に部屋を整頓したり、慣れないこと連続でしたが、そんな苦労も親元を離れているからこそできる経験だと自分を奮い立たせ、なんとか楽しめるぐらいまでの余裕がこの四ヶ月で生まれました。ルームメイトはスイスで11歳から親元を離れ、寮生活をしていたので、料理を作ってくれたり、困ったことがあったら、なんでも教えてくれるとても頼れる存在です。また、寮で出会った13年生の先輩方や年下の子も気さくに話しかけてくれ、本当に人に恵まれたと感謝でいっぱいです。イギリスのパブリックスクールでの寮生活という、貴重な経験を全力で楽しんでいきたいです。  この四ヶ月、目まぐるしい変化についていくのが精一杯で、消極的になってしまったり、自分らしさを見失いそうになっていました。自分の強みは、面接の際に財団の方が褒めてくださったように、「馬力がある」ところだと思います。この強みを伸ばすための留学であるのに、失われてしまったら、元も子もありません。生活に慣れていない、英語力がたりない、などの言い訳が通じるのはこのタームまでです。さらに高みを目指していけるよう、来学期は「存在感を放つ」ことを目標に頑張っていこうと思います。このような貴重な機会を与え、支えてくださる、全ての方々への感謝を忘れずに今後とも精進して参ります。よろしくお願いいたします。