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Sさん(女生徒)都立日比谷高等学校出身

まだ高校2年生だった渡英前の私を思い出すと、あれから想像もしなかったほどたくさんのことを経験し、大きく成長することができたと感じます。まずは、この2年間で最も大切なイベントであった大学受験の流れについて、簡単に書きます。

9月終わりまでにprediction gradesが確定、personal statementを完成させ、10月初めにUCASを提出。1週間ほどすると最初のオファーがBirminghamから来ました。

11月の頭にはCambridgeのエッセイ、またconservatoireのオーディション動画の提出締め切りがありました。中旬頃DurhamとKing’s College Londonからオファーをもらいました。この頃になると、例年Oxbridgeから面接に呼ばれるか否かの連絡が来始めます。
11月末に連絡が来るまでは、気になってメールの受信欄を更新しまくる毎日。同じ学年でも面接に通った人や残念ながら不合格だった人様々で、なんとなく落ち着かない雰囲気だったのを覚えています。この頃、他校と共同開催の模擬面接や普段の授業の中でのディスカッションを重ね、対策をしました。

12月上旬は、CambridgeとManchester、加えてconservatoire 4校分の面接・オンライン試験を受けました。1日に2校なんて日もありましたが、あのくらい沢山のことに追われていた方が、変に緊張する暇もなくかえって良かったのかもしれません。中旬には10月に受けたJapanese A levelの結果発表があり、ひとまずA*を取りました。

1月。新学期が始まるまでにはManchesterと全conservatoireからのオファーが出揃い、残すはCambridgeの結果のみとなりました。連絡が来たのは、忘れもしません、ピアノのレッスン中。なぜか私よりもそわそわしている先生とメールを確認すると、希望したClare Collegeからのオファーが届いていました。すぐに試験や面接の準備を支えてくださったtutorの先生に報告しに行き、感謝を伝えると共に、合格条件であるD2 (A*), A, Aを逃さないようにと気持ちを新たにしました。

4月下旬からは本来一斉に実施される予定だった試験に代わり、学校毎の試験が毎週ありました。試験日程が全体的に早まり準備期間は少なくなりましたが、普段の教室で実施されたため緊張せず取り組め、どの教科でも満足する結果を残すことができました。

そして遂に、先日A levelとPre-Uの結果発表があり、無事にCambridgeの条件を満たしました。特に、 Pre-UであるMusicでは、A levelでいうA*の一段階上であるD1を取ることができ、初めは苦労したエッセイ対策が報われた気がしました。
長い長い大学受験が終わり安堵すると共に、10月から始まる大学生活への期待が高まりました。早速、8月末から同じ学部の希望者対象の予習オンライン授業が始まります。現地で良いスタートが切れるように、気を抜かず準備したいです。

留学生選考前の最終面接で、「幸運なことに、私は今まで大した苦労をすることなく進んできた。多分この先もこのままだろう。けれど、もし今回留学をすることができるのなら、大いに苦しみたい。本当の苦労をしたい。」と訴えた私。パブリックスクールでの2年間を終えて、その苦しさは私が想像していたものとは少し異なるものであったことに気づきました。
渡英前は、やはり英語ができないから大変だろう、それによって勉強面でも今までのように上手くはいかないかもしれない、といったことが悩みの種でした。しかし、そういった単純な苦しさは時が解決しました。最後まで残ったのは、周りと比べることにより生まれる苦労ではなく、自分の価値観で受け入れられないことに対する葛藤でした。
下らない例ですが、試験勉強をしていた時、階下から大音量の音楽と走り回る音が聞こえてきたことが多々ありました。その時は、集中できない、なぜ皆試験を控えているはずなのに遅くまで騒いでいるのか、遂にはなぜ私はこの学校に来てしまったのかなどという思いも頭をよぎりました。
しかし、彼女たちにとって友達と一緒に時を過ごすことと勉強の優先順位が違うのかもしれない、そもそも受験生という概念がないのかもしれない、というように少し考えを広げてみると、周りは変わらずとも楽になりました。価値観の違いに優劣はありません。日本という他国に比べると未だ閉鎖的で排他的な社会で16年間生きてきた私にとって、イギリス留学という機会は、新たな価値観に触れることによる驚き、葛藤、そしてそこから生まれる成長のための重要な経験だと改めて考えさせられました。
これからの大学生活で待っている、更に多様なバックグラウンドを持つ人たちとの出会いに、とてもワクワクしています。

帰国前日の夜、私が特にお世話になった音楽の先生4人とハウスペアレントを招いて、小さなリサイタルを行いました。パンデミックが起こらなければ沢山のお客さんで満たされていたであろうBig Schoolの空っぽな観客席に座る先生方からの拍手は、今までに受けたどんな拍手より大きく、温かく私の耳に響きました。
先が見えない。苦しい。けれど、同時に人の温かさに触れ、助けられる2年間でもありました。
財団の皆様のおかげで恵まれた環境で学べることに感謝しながら、大学でも精進します。